建物や空間をCGで立体的に示す3Dデジタルデータの生成を手がける米マーターポートが、新たに設立した日本法人、マーターポート(東京・港)の活動を本格化させ、日本での事業拡大を急ぐ。日本でも不動産、建設、小売り、製造などの業種で3Dデータの活用が加速する可能性がある。
マーターポートが推し進める事業を一言で言えば、あらゆる建物や空間を、360度カメラなどで撮影したパノラマ画像と、AI(人工知能)を活用した独自のソフトウエア「Matterport Cortex AI」を使ってCG(コンピューターグラフィックス)で精密に描画し、3Dデジタルデータとして活用できるようにするというものだ。単なる画像ではなく、後から加工もできるデジタルデータとして表示できるところに特徴がある。リアルに実在するものと同じものを制作し、ネット空間内に展開する「デジタルツイン」の実現を、建物や空間のデジタルデータ化によって後押しする技術とも位置づけられる。
市販の360度パノラマカメラを用いた一般的なVR(仮想現実)では、カメラで撮影したいわゆるパノラマ画像を画面遷移して表示するにとどまる。しかし、マーターポートの技術を使えば、撮影したいわゆるパノラマ画像をソフトウエアで処理し、「見ている人が建物の中に実際にいるような感覚で立って、奥行き感のある空間をスムーズに歩き回ったり(マーターポートでは『ウオークスルー』と呼ぶ)、建物全体を実写の立体像としてあらゆる角度から俯瞰(ふかん)的に見渡したり(同じく『ドールハウス』と呼ぶ)できる」(マーターポート日本法人の蕭[しょう]敬和社長)わけだ。さらに、生成した3Dデジタルデータの中に、テキスト情報や他の画像などを付箋のように埋め込むことも可能だ。
例えば不動産業では、マンションや住宅を建築・販売したり、賃貸したりする際、モデルルームや実際の賃貸住宅を3Dデジタルデータ化。いつでもどこでも顧客に物件の内容を確認してもらえるようにできる。3Dデジタルデータ化することで、ゼネコンや設計会社では、施工の進捗管理をしたり、完成記録として保管して後の改築やリフォーム時に設計図代わりに役立てたり、遠隔地の検査に利用したりできる。製造業や工業プラントでは、工場内の施設管理や緊急対応時の現状把握、従業員の業務教育などに役立てられる。アパレルや小売業では、店舗のデザインやマーチャンダイジングの管理、スタッフの教育などに利用できる。
スマホで3Dデジタルデータを生成できる
ユーザーは高画質・高精度の専用カメラ「Matterport Pro2」や市販の360度カメラを使って、建物や室内のある地点から見た360度パノラマ画像を撮影。1~1.5メートルずつ撮影場所を動かしながら同じことを繰り返す。こうして撮影した画像をクラウド上にあるマーターポートのソフトウエアプラットフォームに送れば、画像を処理して当該の建物や室内をデジタルデータ化して、Webサイト経由で閲覧できるようにしてくれる。
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