イオンが2022年3月17日に「吸水サニタリーショーツ」を発売した。同社は、フェムテックへの取り組みとして21年3月から「骨盤・骨盤底筋サポートショーツ」を、同9月から「水分ケアショーツ」を販売しているが、サニタリー用品は今回が初。イオンがフェムテック分野への取り組みを強化する意図、今後の戦略とは?

2022年3月17日に発売した「吸水サニタリーショーツ」のディスプレーと製品パッケージ。価格は1408円(税込み)で、サイズはM~2XLまで用意されている
2022年3月17日に発売した「吸水サニタリーショーツ」のディスプレーと製品パッケージ。価格は1408円(税込み)で、サイズはM~2XLまで用意されている

急成長を予測しフェムテック市場参入

 月経時に使用する生理用品といえば使い捨てのナプキンやタンポンが一般的だろう。しかし近年は体への負担軽減やサステナビリティーの観点から、月経カップ(月経中に膣内に直接挿入し経血をためられる。4~12時間ごとに経血を捨てる必要があるが、洗って繰り返し使える)や、洗って繰り返し使えるコットン素材のナプキンなど、選択肢が広がっている。吸水サニタリーショーツもその一つで、吸水性と防水性の高い生地を合わせることで、ショーツが直接経血を受け止め、ナプキンの蒸れやかぶれ、取り換えの面倒などの悩みを軽減してくれるアイテムだ。

 今回、イオンのプライベートブランド(PB)「トップバリュ」のインナーシリーズ「トップバリュ ララキレイ」にもサニタリー用品が加わった。新商品「吸水サニタリーショーツ」は、20~30ccの水分を吸収する吸水パッドが付いたショーツ。肌に当たる面は吸水した水分をすぐに乾かす速乾生地、水分を吸収する吸水生地、ショーツの外側に水分が染み出ないようにする防水生地の3層構造になっている。ラインアップは生活シーンに合わせて「レギュラータイプ」「おなかすっぽりタイプ」「スポーティタイプ」の3タイプが用意されており、価格は1408円(税込み)。北海道・本州・四国・九州の「イオン」「イオンスタイル」約370店舗と、イオンの公式オンラインショップで購入可能だ。

 イオンでは、21年3月に「骨盤・骨盤底筋サポートショーツ」を、同9月に「水分ケアショーツ」を発売。今回の吸水サニタリーショーツも加え、フェムテック分野の商品ラインアップを強化している。その理由は何なのか。イオンリテール衣料本部インナー商品部長の仲野滋氏は「フェムテックは急成長が予測されているマーケット。私たちとしてもぜひ参入したいという思いがあった」と話す。

「トップバリュ ララキレイ」シリーズから発売された吸水サニタリーショーツのラインアップは、肌当たりのよい綿混素材を使用した「レギュラータイプ」(最大20cc)、綿混素材でおなかまですっぽり包める「おなかすっぽりタイプ」(最大30cc)、両サイドがメッシュ素材で汗をかく日も過ごしやすい「スポーティタイプ」(最大30cc)の3つ。カラー展開はタイプによって異なり、黒やピンク、ブルー、グレージュ、モカなどがある
「トップバリュ ララキレイ」シリーズから発売された吸水サニタリーショーツのラインアップは、肌当たりのよい綿混素材を使用した「レギュラータイプ」(最大20cc)、綿混素材でおなかまですっぽり包める「おなかすっぽりタイプ」(最大30cc)、両サイドがメッシュ素材で汗をかく日も過ごしやすい「スポーティタイプ」(最大30cc)の3つ。カラー展開はタイプによって異なり、黒やピンク、ブルー、グレージュ、モカなどがある

本当に“自分自身が使いたい”思い

 フェムテックは、Female(女性)とTechnology(テクノロジー)を組み合わせた造語で、生理や妊娠、更年期など女性特有の悩みをテクノロジーで解決する商品やサービスを指す。米調査会社のFrost&Sullivanの18年の調査では、25年までに全世界で5兆円の市場規模になると予測されている。

 「日本国内でも市場規模は2兆円近いといわれている。世の中は女性が活躍する時代になっているため、女性の悩みを解消し、サポートしたいと考えた」と仲野氏。

 同社では半年に1度、情報交換や商品開発の入り口となる、「ディスカッションミーティング」を全社で行っている。ディスカッションミーティングでは海外のサンプル品などを手に取りながら情報交換をするのだが、そこでフェムテック商品が議題に上がったとき、「フェムテック商品を取り巻く社員は目を輝かせ、非常に盛り上がっていた。単純なマーケットの可能性だけでなく、女性社員たちが本当に“自分自身が使いたい”という思いで海外製品などのサンプルを見ており、これは本気で取り組んでみようと思った」(仲野氏)。身近で働く女性社員の反応を見て、世の中での必要性を強く実感できたという。

 こうした社員からの提案もあり、同社では20年春ごろからフェムテックへの参入を検討し始めた。しかし、サニタリー分野は社内でもオープンには話しづらく、タブー視されている面があったという。そこで、女性社員が中心となって商品の企画・開発ができるよう、女性専門チームを立ち上げるとともに、マーケットの可能性などを社内に広く伝えていくことで、フェムテックへの参入を果たしたという。

イオンの強みは価格と機能性

 とはいえ、吸水サニタリーショーツ市場には、複数のスタートアップ企業のほか、大手企業ではファーストリテイリング傘下のGU(ジーユー)とユニクロ、ビームス(東京・渋谷)傘下のBEAMS HEARTが参入しており、イオンは後発となる。またイオンと同時期にグンゼも「Tuche」ブランドからハーフトップとセットにできる吸水サニタリーショーツ「cherish moon(チェリッシュムーン)」を発売しており、競合他社とどのように戦っていくのか気になるところだ。

 フェムテック商品の企画・開発を行った中心メンバーの1人でもある、イオンリテール衣料本部インナー商品部の佐藤理沙氏は「強みは価格と機能性」だという。

イオンリテール衣料本部インナー商品部長の仲野滋氏(左)と同社衣料本部インナー商品部佐藤理沙氏(右)
イオンリテール衣料本部インナー商品部長の仲野滋氏(左)と同社衣料本部インナー商品部の佐藤理沙氏(右)

 スタートアップ企業の吸水サニタリーショーツの価格帯は5000~6000円台後半と比較的高価だ。ビームスは4950円、グンゼは4180円、ユニクロで1990円、GUでも1490~1990円となっており、イオンの1408円はかなり安い。

 「当社が扱うインナーショーツの基本の価格帯に寄せ、お客様が手に取りやすくしたかった」と仲野氏。機能は落とせないため、あまり華美な装飾にしないことでコストをできる限りカット。様々なインナーウエアを大量に扱っている上、独自の生地ロットや副資材ロットがあるイオンだからこそ実現できた価格といえる。

 また機能面では、「吸水パッドが厚い商品だと洗濯する際は水などにつけ置いてからもみ洗いをするケースが多い。一方、当社の商品は吸水パッドが薄めなので、もみ洗いだけで済む」と佐藤氏は力説する。薄いとはいえ、同社の通常のショーツと同程度の耐久性はあり、繰り返し使える。つまり一度購入すれば長期間使用可能で、吸水サニタリーショーツとの併用により使い捨てナプキンやタンポンの使用量を削減できる。そのため、資源を無駄にしないSDGs商品としても期待でき、さらに生理用品にかかるコストを抑えることにもつながる。昨今は経済的な理由で生理用品を購入できない女性や女の子がいる「生理の貧困」も増加しているが、その改善の一助にもなりそうだ。

吸水サニタリーショーツの吸水の仕組み。速乾層、吸水層、防水層の3層構造になっている。吸水パッド部分はショーツ本体と分離して縫い付けられており、空気が通りやすく蒸れを軽減する効果がある(画像提供/イオンリテール)
吸水サニタリーショーツの吸水の仕組み。速乾層、吸水層、防水層の3層構造になっている。吸水パッド部分はショーツ本体と分離して縫い付けられており、空気が通りやすく蒸れを軽減する効果がある(画像提供/イオンリテール)

目標は吸水サニタリーショーツの14万枚

 前述のように、同社では、21年3月から「骨盤・骨盤底筋サポートショーツ」を、同9月から「水分ケアショーツ」を販売しており、累計11万枚を突破。通常のサポートショーツと比べて約2倍の売り上げを記録するなど好調だ。これを受け、今回の吸水サニタリーショーツのラインアップも工夫した。

 「骨盤・骨盤底筋サポートショーツは、綿混タイプとアウターに響きにくい(ショーツのラインが出にくい)シームレスタイプの2種類展開にしているが、実はアウターに響きにくいタイプが非常に売れている。これは、シーン別に製品を開発したことが成功の要因だと考えている。この経験を踏まえて吸水サニタリーショーツも、汗をかく日などにお薦めのスポーティタイプ、冷え性でも安心のおなかすっぽりタイプなど、日常で想定されるシーンに合わせて使いやすいようにラインアップを考えた」(佐藤氏)

21年3月に発売した「骨盤・骨盤底筋サポートショーツ」と、同9月に発売した「水分ケアショーツ」。発売後約1年の2製品累計の販売数は11万枚を突破しており、好評だ
21年3月に発売した「骨盤・骨盤底筋サポートショーツ」と、同9月に発売した「水分ケアショーツ」。発売後約1年の2製品累計の販売数は11万枚を突破しており、好評だ

 吸水サニタリーショーツの年間目標売上枚数は14万枚だ。しかし、吸水サニタリーショーツという存在の認知度がまだまだ低いため、通常のサニタリーショーツとの違いや使うタイミング、使い方などが分からない人も多い。そのため、生理をサポートする商品として機能性や効能などをいかに正しく伝えていくかが課題だ。

 佐藤氏は「売り場のカラーをピンクに統一し、立ち寄ったお客様に“このコーナーは何だろう?”と興味を持ってもらえるような雰囲気づくりを心掛けている」と話し、イオンリテール経営企画本部広報部の三浦愛菜氏も、「イオンの約7割を占める女性の従業員は、お客様の理解をサポートすることができると考えている。まずは店舗での接客や販促物などで機能やメリットを訴求していきたい。ただ、吸水サニタリーショーツの展開は今回が初めての試みなので、自分たちもお客様がどのくらい理解してくれるか分からない部分も大きい。そこは、お客様と接しながら様子を見て、必要があればどんどん改善していきたい」と話す。

 イオンは店舗数も多い。店舗で説明を受ける機会が増えれば理解が進み、手に取りやすい価格帯であることもあって、最初の1枚を購入しやすいだろう。佐藤氏も「先日、社内の従業員に向けたオンライン研修を行ったが、吸水サニタリーショーツを着用したことがある人はほとんどいなかった。しかし、その研修で結構興味を持って、はいてみようと思ってくれる人が増えたと実感した。従業員からお客様へとこのまま浸透していけば」と期待を込める。

吸水サニタリーショーツの売り場イメージ。店内の販促物や店頭スタッフの接客などで製品の魅力や効能を伝えていく
吸水サニタリーショーツの売り場イメージ。店内の販促物や店頭スタッフの接客などで製品の魅力や効能を伝えていく

今後は顧客の声も製品開発に生かす

 イオンでは、今後もフェムテック関連商品の開発を進めていくという。22年の秋・冬シーズンには新商品も発売予定だ。「フェムテック商品はまだまだ市場に出始めた段階で、これから様々な商品が広がっていくだろう。今後は、女性のお悩み解決のアイテムとしてもっと他に必要なものはないのかなど、社内でも検討しながら商品を開発していきたい」と佐藤氏。

 仲野氏も「現場で聞かれるお客様の声も商品開発に反映していきたい」と話す。イオンの商品開発においては、以前は販売実績を数字で評価するしかなく、売れなかった理由を掘り下げて分析できるツールが十分ではないという課題があった。だが、1年半ほど前から店舗にiPadを設置(現在は別システムを利用)し、接客スタッフに顧客の声を記入してもらうようにしたことで、その意見が本部に直接吸い上げられるようになった。すでに「月経がまだ不安定な時期のフェムテック商品がないか」という声も届いているそうだ。これを受け、現時点ではM~2XL(3L)で展開している吸水サニタリーショーツに若年層向けのSサイズ追加も検討する。

(撮影/吉成早紀)

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