ディー・エヌ・エー(以下DeNA)とテレビ神奈川(以下tvk)がtvk開局50周年を記念し、2022年3月10日に神奈川県民へのスポーツの魅力などを発信するための協働を目的とした「メディアパートナーシップ」の締結を発表した。今後はDeNAのグループ会社が運営するプロ野球の横浜DeNAベイスターズ、プロバスケットボールリーグ「B.LEAGUE」に所属する川崎ブレイブサンダース、およびDeNAが経営参画するJリーグ(J3)のSC相模原という、3つの異なるスポーツの公式戦で、tvkが冠スポンサーを務める試合を開催する他、tvkでの公式戦の放映、県民への情報発信などを行っていく。

「メディアパートナーシップ」締結発表会にて、テレビ神奈川(tvk)の熊谷典和社長(左)とディー・エヌ・エー(DeNA)の岡村信悟社長(右)
「メディアパートナーシップ」締結発表会にて、テレビ神奈川(tvk)の熊谷典和社長(左)とディー・エヌ・エー(DeNA)の岡村信悟社長(右)

スポーツでまちづくり事業にも参入

 モバイルを中心としたインターネット事業を手がけてきたディー・エヌ・エー(DeNA)が、横浜ベイスターズを東京放送ホールディングス(TBS)から経営権を獲得したのが2011年。新型コロナウイルス感染拡大前の19年は年間来場者数は約228万人で、オーナーとなった12年の約116万人の2倍近くに増加した。ファンクラブ会員数は9万人を突破(18年)し、14倍以上の増加率となった実績がある。

 22年3月12日に行われたプロバスケットボールリーグ「B.LEAGUE」の「天皇杯ファイナル」で、3年ぶりの優勝を狙う千葉ジェッツと対戦し連覇を果たした川崎ブレイブサンダースは、DeNAがベイスターズでのノウハウを生かし、18年に運営権を東芝から継承したチームだ。SNSやデジタルマーケティングを強化し、ホームゲームの平均来場者数を約1.5倍までに伸ばし、YouTubeのチャンネル登録者数は10万人(22年3月12日現在)で、2番目に登録者数が多い千葉ジェッツの6万人(同)を大きく引き離す人気を得ている。

▼関連記事 プロ野球改革の先頭打者、横浜DeNA 観客動員数1.8倍に プロバスケチームに学ぶデジタル戦略

 21年にはさらにSC相模原の経営参画およびトップスポンサーとなり、DeNAはますますスポーツ事業に力を入れている。同社の岡村信悟社長は「スポーツ事業はエンターテインメント要素だけでなく、まちづくりの要素もあり、社会課題的側面もある」と説明。「スポーツの力で“ひと”と“まち”を元気にする」をミッションとして掲げ、既に横浜市庁舎跡地の再開発事業に参画するなど、スポーツおよびその周辺設備を核としたまちづくり事業にも参入している。

 ビジネススキームは、ベイスターズや川崎ブレイブサンダースの運営を通して確立してきており、「魅力的な強いチームをつくることでファンが拡大し、収益が増加し、チームに投資できるようになるというノウハウを蓄積」してきた。今後はさらに「魅力的なチームと強い事業、この車の両輪がしっかり回り、かつ地域に受け入れられ、神奈川の誇りとなるという、好循環の継続が理想」と岡村社長は話す。

 「ベイスターズで経験を積み、それがバスケットボールの川崎ブレイブサンダースにつながり、今後はSC相模原でもサッカーらしく、かつ相模原という地域らしい取り組みを、ファンや地域の皆様と一緒に行っていきたいと考えている」(岡村社長)

 DeNAはこれまでも、日本電気(NEC)やマルハニチロとスポーツに関してパートナーシップを組んできた。そこに加えて今回、22年4月1日に開局50周年を迎える神奈川県のローカルメディアであるテレビ神奈川(tvk)と、パートナーシップ締結を行う運びとなった。

「スポーツ事業はエンターテインメント要素だけでなく、まちづくりの要素もあり、社会課題的側面もある」というDeNAの岡村社長
「スポーツ事業はエンターテインメント要素だけでなく、まちづくりの要素もあり、社会課題的側面もある」というDeNAの岡村社長

今後はネット配信も検討する

 「幅広い地域の皆様と、スポーツを通じた一体感を共有し、より多くの方にtvkを身近に感じてもらいたい」というtvkの熊谷典和社長は、母体は異なるものの長年応援してきたベイスターズをはじめ、DeNAが運営に関わる3チームに関し「さらに連携を強化する」と明言。「実はこれまでtvkとしての冠試合はしてこなかった。今後は冠試合を開催し、試合中継だけでなく、タッグを組んでいく」(熊谷社長)と言う。

 そのスタートとして、ベイスターズについては22年4月8日に対中日ドラゴンズ戦で、tvk開局50周年「感謝のカタチ」ナイターとして、初の冠試合を開催。また3月25日のプロ野球開幕戦を皮切りに、42試合を生中継する予定だという。

 SC相模原については22年8月20日の対鹿児島ユナイテッドFC(会場は相模原ギオンスタジアム)戦での冠試合を予定。川崎ブレイブサンダースについては22~23年シーズンのホームゲームで調整しているという(22年秋以降を予定)。各冠試合ではイベントやブース出展など、会場を訪れた観客が楽しめる企画を準備する。

「親和性の高いDeNAと組み、スポーツのさらなる発展を目指したい」とtvkの熊谷社長
「親和性の高いDeNAと組み、スポーツのさらなる発展を目指したい」とtvkの熊谷社長

 DeNAとパートナーシップを締結するメリットについて熊谷社長は、「DeNAは、tvkにとって長年の付き合いであるプロ野球チーム、ベイスターズを支えており、さらに神奈川県民にとっては憩いの場でもある横浜スタジアムを持つ。県内のスポーツのさらなる発展において、親和性が高い」と考えている。

 ただし「神奈川はスポーツ県として恵まれており、オリンピックを含めてジャンルも幅広く、様々なスポーツの応援番組を持っている。すべてのチームの皆さんとしっかり付き合い、報道もしながらスポーツの魅力を伝えていく機会を設けなければならない」(熊谷社長)と、DeNAだけと組むわけではない点を強調した。

 一方、DeNAは今後、神奈川のプロスポーツチームとのスポーツ事業で培った経験を生かし、「バーチャルもリアルも、そしてグローバルもローカルも、自在に活動の場にしながら、新しい価値を創造していきたい」(岡村社長)といい、「できるだけ神奈川という地域の人々が、つながりを感じられる、この地域に生まれてよかったと思えるよう、貢献できればと考えている」とした。

 人口900万人にも上る神奈川県での取り組みだけに、地方創生としてとらえることが難しい面はある。だが、スポーツ事業による地域振興については今後、他地域に影響を与える可能性は高い。とはいえDeNAとのパートナーシップだからこそ期待される、SNSの活用などについては現段階では熊谷社長からの言及はなく、「今後はネット配信も含めて検討していく」と話すにとどまった。

会見にはtvkおよび各チームのマスコットも勢ぞろいした
会見にはtvkおよび各チームのマスコットも勢ぞろいした

(写真提供/tvk、DeNA)

1
この記事をいいね!する