米アップルは2022年3月8日(米国時間)、普及価格帯の5G対応スマートフォン「iPhone SE」、新SoC「M1 Ultra」とそれを搭載したハイエンドデスクトップパソコン「Mac Studio」、タブレット「iPad Air」などの新製品を発表した。いずれも従来モデルより処理性能を大幅に向上させたのが特徴だ。

カラーバリエーションはミッドナイト、スターライト、(PRODUCT)REDの3色
カラーバリエーションはミッドナイト、スターライト、(PRODUCT)REDの3色

最新スペックで安い第3世代「iPhone SE」

 新製品で最も注目なのが、第3世代となる「iPhone SE」だ。プロセッサーに21年発売の上位モデル「iPhone 13」「iPhone 13 mini」と同じ、アップルが開発したA15 Bionicチップを搭載し、処理性能が大幅に向上した。通信機能は5Gに対応する。ディスプレーは4.7型で、IP67準拠の防じん・防滴に対応。指紋センサーのTouch IDを兼ねたホームボタンを備えている。22年3月18日発売で直販価格は5万7800円(税込み、以下同)から。

従来モデルから変わらず、物理ボタンでホームボタンを備えている
従来モデルから変わらず、物理ボタンでホームボタンを備えている

 A15 Bionicチップは6コアのCPUと4コアのGPUに、カメラ機能などの機械学習に利用する16コアのニューラルエンジンを統合したチップ。これを搭載することで、iPhone 13とほぼ同じ快適さでゲームを楽しんだり、写真やビデオを編集したりできる。

 iPhone 13シリーズと大きく異なるのはディスプレー、カメラ、操作性、そして価格だ。iPhone 13シリーズは5.4型または6.1型の有機ELディスプレー搭載だが、iPhone SEは4.7型の液晶ディスプレーを搭載。従来モデル同様に小型軽量で持ちやすいことから、コンパクトなiPhoneを求める人に好まれそうだ。また、iPhone 13シリーズは背面に広角カメラと超広角カメラを搭載するが、新型iPhone SEは広角カメラのみとなっている。

 iPhoneシリーズ唯一となる物理ホームボタンを従来モデルから引き続き備える点も、操作性に影響を与えるだろう。従来モデルから乗り換えるユーザーに配慮するとともに、操作の分かりやすさで、iPhoneに不慣れな新規ユーザーの取り込みにつながりそうだ。iPhone 13シリーズの価格が8万6800円からとなっていることを考えれば、こなれた操作性を担保した新型iPhone SEは大幅に安く、購入しやすいのが魅力だ。

 処理性能を引き上げ、5Gに対応することでゲームやストリーミング、ビデオ通話といった最新ニーズに応えつつ、コンパクトさを好む従来モデルのユーザーにアピールし、価格を抑えて新規ユーザーの獲得も狙う――。新型iPhone SEはまさに「戦略的なモデル」と言えそうだ。

CPU2個分搭載のハイエンドマシン「Mac Studio」

 もうひとつの注目は、アップルの最新SoCとなる「M1 Ultra」と、ハイエンドデスクトップパソコン「Mac Studio」だ。

Mac miniの背を高くしたようなデザインの「Mac Studio」。コンパクトで高い処理性能を持つ、小型ワークステーションと言える製品だ
Mac miniの背を高くしたようなデザインの「Mac Studio」。コンパクトで高い処理性能を持つ、小型ワークステーションと言える製品だ

 「M1 Ultra」は、MacBook Proの16型モデルなどに搭載されている「M1 Max」のダイ(半導体チップ)を内部で2つ連結したもの。M1 Maxの2倍となる20コアのCPU、最大64コアのGPU、32コアのニューラルエンジンを備える。アップルでは、例えばCPU性能は16コアのデスクトップPC向けCPUと比べて同じ電力量では90%高く、そのピーク時の性能を100ワット少ない電力で達成できるとしている。

アップル製SoCの最上位製品となる「M1 Ultra」は、「M1 Max」のダイを内部で2つ連結している
アップル製SoCの最上位製品となる「M1 Ultra」は、「M1 Max」のダイを内部で2つ連結している

 「Mac Studio」は、「Mac mini」と同じフットプリントのコンパクトなボディーに、SoCとしてM1 UltraまたはM1 Maxを搭載するデスクトップパソコンだ。前述の通り高い処理性能を備えると同時に、背面に4つのThunderbolt 4、2つのUSB-Aなど、ユーザーがアクセスしやすい前面に2つのUSB-Cとメモリーカードスロットを備えるなど、使い勝手に配慮した高い拡張性も備える。

 22年3月18日発売で、直販価格はM1 Ultra搭載モデルが49万9800円から、M1 Max搭載モデルが24万9800円からとなっている。小型ワークステーションとでも言うべき製品で、グラフィックスや動画の制作、音楽制作などを行うクリエーター向きだ。

背面に4つのThunderbolt 4、前面に写真の取り込みに使うメモリーカードスロットを備えるなど拡張性が高い
背面に4つのThunderbolt 4、前面に写真の取り込みに使うメモリーカードスロットを備えるなど拡張性が高い

 Mac Studioと同時に発表発表されたのが、27型ディスプレー「Studio Display」だ。解像度は5K(5120×2880ピクセル)で輝度は600ニト。パソコンや外部機器との接続用に、Thunderbolt 3(USB-C)、3つのUSB-Cを備える。ビデオ通話に利用する超広角カメラとマイク、2つのツイーターを含む6スピーカーシステムを搭載する。22年3月18日発売で、直販価格は19万9800円から。

5K対応の27型ディスプレー「Studio Display」とMac Studio。iPad Proなどと同じ、ビデオ通話時のセンターフレーム機能に対応している
5K対応の27型ディスプレー「Studio Display」とMac Studio。iPad Proなどと同じ、ビデオ通話時のセンターフレーム機能に対応している

 ユニークなのは、iPadなどに使われているものと同じA13 Bionicチップを搭載していること。ビデオ通話やドルビーアトモス対応空間オーディオの処理などに利用する。例えばビデオ通話では、iPadやiPad Proと同じ、撮影範囲に入ってきた人の動きをまるでカメラの向きを変えたりズーム倍率を変えたりするかのように追従して、フレームの中央に捉え続ける「センターフレーム」機能が利用できる。

M1搭載でコスパが高い「iPad Air」

 10.9型タブレット「iPad Air」は、SoCに上位モデル「iPad Pro」と同じM1チップを搭載。M1チップ搭載により従来モデルより処理性能は60%向上、グラフィックス性能は約2倍に向上し、写真や動画の編集、ゲームに強くなったとしている。前面のカメラは超広角カメラで、センターフレーム機能が利用できる。背面カメラはシングルの広角カメラだ。

10.9型タブレット「iPad Air」
10.9型タブレット「iPad Air」

 オプションのキーボード付きカバー「Magic Keyboard」、「Smart Keyboard Folio」が利用可能で、ノートパソコンのような使い方ができる。iPad Pro並みの処理性能を持ちつつも価格は安い、コストパフォーマンスに優れた製品と言える。

 Wi-Fiモデルと、Wi-Fiと携帯電話回線に対応したWi-Fi+セルラーモデルがあり、セルラーモデルは5Gに対応する。カラーバリエーションは5色。22年3月18日発売で、直販価格は7万4800円から。

Magic Keyboardはフローティングデザインが特徴。トラックパッドがついていて、iPad Airを取り付けてノートパソコンのような感覚で操作できる
Magic Keyboardはフローティングデザインが特徴。トラックパッドがついていて、iPad Airを取り付けてノートパソコンのような感覚で操作できる

(写真提供/アップル)

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