フードデリバリーや社食を手がけるノンピ(東京・港)が、MAKUAKEで冷凍弁当を先行販売した。ウリは3つ星フレンチ「Jean-Georges」の元スーシェフ・米澤文雄氏が監修した点だ。味で他社との差別化をはかり、拡大する中食需要を狙う。

ノンピが2022年3月3日から、MAKUAKEで先行販売した冷凍弁当3種類
ノンピが2022年3月3日から、MAKUAKEで先行販売した冷凍弁当3種類
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 ノンピが2022年3月3日から、MAKUAKEで販売するフローズンミール(冷凍弁当)は3種類。すべて、ミシュランガイドで3つ星を獲得したフランスレストラン・Jean-Georgesの元スーシェフ・米澤文雄氏が監修した。これまでノンピは、社食やオンライン飲みを含む社内イベント用フードデリバリーなど法人向けサービスをメインに展開していたが、コンシューマー向けに事業を拡大する。

 各フローズンミールは、主菜1種、副菜3種と計4種類の献立になっている。主菜は「トマトソースで味付けしたハンバーグ」「レッドカレーがかかったグリルチキン」「コーンチャウダーであえた赤魚のグリル」、副菜は、野菜やきのこ、豆類を使用した炒め物やマリネなどをそろえ、組み合わせた。フローズンミールはいずれも1食500キロカロリー以下で、保存料、防腐剤、着色料は不使用。既存商品の枠を超えるおいしさを追求し、1食1200円(税込み)で販売する。

上から、主菜はコーンチャウダーであえた赤魚のグリル、トマトソースで味付けしたハンバーグ、レッドカレーがかかったグリルチキン。3、6、9食セットで販売される
上から、主菜はコーンチャウダーであえた赤魚のグリル、トマトソースで味付けしたハンバーグ、レッドカレーがかかったグリルチキン。3、6、9食セットで販売される
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トップシェフを口説き落とせた理由

 ターゲット層は20代後半~50代前半の働く世代だ。仕事が忙しい一人暮らしの男性や共働き世帯の母親に向け、自炊の時間を削減しつつ、質を求める需要に応えていく。1食のカロリーを抑えつつ、栄養価の高い健康的なメニューで、健康に気を使うユーザーに配慮した。

 日本惣菜協会によると、中食(外食をテークアウトして家で食べること)の市場規模は、10年から19年にかけて27.2%増加。19年では外食市場の26兆円に対して、中食は10.3兆円となった。新型コロナウイルス禍もあり、料理は面倒だが、おいしいものを食べたいというニーズが高まっている。

 ノンピ フードデリバリー事業本部の佐藤あゆみ氏は、「自宅でもトップシェフ監修の料理を食べられるところが何よりの魅力で、他社でもここまでおいしさを追求したものはなかなかないのではないか」と自信を見せる。米澤氏以外にも、22年2月末の段階で高級老舗旅館の加賀屋(石川県七尾市)、日本料理 四四A2(よしあつ、東京・渋谷)、Sola Factory(福岡市)のシェフの参画が決まっている。

3つ星フレンチ・Jean-Georgesの元スーシェフ、米澤文雄氏
3つ星フレンチ・Jean-Georgesの元スーシェフ・米澤文雄氏
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 しかしこれまで、冷凍食品は一流シェフから下に見られがちだったという。冷凍時や、電子レンジで再加熱した際に、「もともとの食材の味が損なわれる」と疑問視されていたそうだ。その懸念を払拭するため、ノンピは食材や料理の味を損なわない工夫をした。急速冷凍でできたてのおいしさを保ち、解凍した後に食材の水分量や食感が残るよう、調理時のゆで時間や、食べる際に電子レンジで加熱する時間を細かく検討して開発を進めた。

 「(急速冷凍によって)一番細胞が壊れやすいマイナス1~5度の間を30分で通過することで、食品の鮮度や風味、うまみ、色味を保ち、再加熱した際も作りたての食感を再現できるようにした」と佐藤氏。ノンピのフローズンミールは、食べる際に電子レンジで加熱するが、その際に料理が乾燥しないよう加える水分量も調整した。

実際に試食会で提供されたメニュー。にんじんや芽キャベツ、きのこは色味や食感も残っている
実際に試食会で提供されたメニュー。にんじんや芽キャベツ、きのこは色味や食感も残っている
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 一例を挙げると、ナッツは調理時に焼いてから冷凍することで食感を残した。魚はレンジを通すとぱさぱさになってしまうので、一滴だけ水を追加して風味を保った。食材の配置にも気を使い、乾燥しやすいものは奥に入れ、パッケージを開封した時に空気が当たりづらいよう調整した。こうした開発時のこだわりもあり、シェフからの認識も変わったという。

 「冷凍なら無添加で完成できるし、長期保存も利く。米澤氏らからも『コロナ禍でレストランだけでは経営が厳しい、何よりおいしいものを多くの人に届けたい』という声があった。シェフと当社のニーズをすり合わせる形で、今回のプロジェクトが実現した」と佐藤氏。もともとノンピで、米澤氏をエグゼクティブシェフとして協働していたことを契機に、冷凍技術の高まりやコロナ禍での状況があり、協業が実現した。

23年からは東南アジアへ展開

 また、冷凍の弁当は、サステナブルな社会の実現に貢献することもシェフの共感を生んだ。冷凍だから賞味期限が長い、作り置きをせずフードロス削減が期待できるところが評価され、米澤氏が交流のあるシェフに声をかけたこともあって、前述の料理店との協業が決まった。

 MAKUAKEで先行販売を行った後は、22年6月から本格的にフローズンミールの定期配送サービスを開始する。メニューを20種類程度に増やし、毎月2、3食ずつメニューを入れ替える方針だ。

 23年以降は、世界に展開していく方針も示した。ノンピによれば、全世界での冷凍食品市場は20~27年にかけて約10兆円も拡大し、27年には40兆円になるという。その中でも、まだ市場の小さい東南アジアをターゲットに据える。「アジアではここ2年間で、日本食の店舗が50%ほど増えている。例えばベトナムでは、収入からしても日本食はかなり高い料理だが多く食べられており、参入余地がある」と佐藤氏。拡大するフローズンミールや中食需要、日本食の市場を読みつつ、米澤氏ら有名シェフの参画を売りに、事業を拡大していく。

(写真提供/ノンピ)