“ニューノーマル”な生活様式に合わせ、消臭や除湿など空気に関係する商品を販売し売り上げを伸ばしてきたエステーが、新ブランド「エステーペット」を立ち上げ、ペット用品市場への参入を発表した。第1弾は猫のトイレ関連商品で、2022年2月22日の「猫の日」に発売した。

エステーの新ブランドである「エステーペット」から、第1弾商品として発売された猫用システムトイレ「エステーペット実感消臭本体セット」、「エステーペット 実感消臭チップ」(2アイテム)、「エステーペット 実感消臭シート」(3アイテム)が発売された
エステーの新ブランドである「エステーペット」から、第1弾商品として発売された猫用システムトイレ「エステーペット実感消臭本体セット」、「エステーペット 実感消臭チップ」(2アイテム)、「エステーペット 実感消臭シート」(3アイテム)が発売された

コロナ禍下、ペット用品市場に参入

 生活日用品メーカーのエステーが新ブランド「エステーペット」を立ち上げ、ペット用品市場に参入する。

 同社は消臭芳香剤「消臭力」、衣料用防虫剤「ムシューダ」、脱臭剤「脱臭炭」、除湿剤「ドライペット」、米びつ用防虫剤「米唐番」、花粉対策商品「MoriLabo(モリラボ)」など、独自性の強いブランドを展開。「空気」を軸に、一般家庭向けのBtoCだけでなく、オフィスやホテル、空港、病院、介護施設などのBtoB領域でも国内外で事業を拡大している。

 同社が2022年1月27日に発表した22年3月期 第3四半期(21年4~12月期)の連結決算によれば、純利益は前年同期比13.6%減の21億9500万円。実質の減収減益となっているが、これは新型コロナウイルス禍による巣ごもり需要が落ち着いたことや、販売費および一般管理費が増加したこと、マーケティング費用などを戦略的に投下したことなどが影響しているという。一方でニューノーマルな生活様式に合わせ、「快適な生活のサポート」「社会課題への対応」の2軸の下に展開した商品は好調で、売上高では高付加価値品が堅調に推移。いまだ続くコロナ禍での「おうち時間」増加に伴う商品需要は高いと考えられる。

 エステーペットもおうち時間増加に目を付けた商品だ。22年2月22日に発売となった第1弾は、猫用システムトイレ「エステーペット実感消臭本体セット」、「エステーペット 実感消臭チップ」(2アイテム)、「エステーペット 実感消臭シート」(3アイテム)で、いずれもおうち時間需要の1つである、ペットのいる家庭の悩みに注目した。初年度販売目標は、本体セットが2万1000個、消臭チップが36万7000個、消臭シートが35万9000個を掲げる。

左から発表会に登壇したエステー事業統括部門クリアフォレスト事業部ペットケア事業担当の藤平諭志氏、エステー 鈴木貴子社長、エステー事業統括部門クリアフォレスト事業部の奥平壮臨事業部長
左から発表会に登壇したエステー事業統括部門クリアフォレスト事業部ペットケア事業担当の藤平諭志氏、エステー 鈴木貴子社長、エステー事業統括部門クリアフォレスト事業部の奥平壮臨事業部長

飼育継続のポイントはトイレのにおい

 調査会社の富士経済によれば、国内のペット関連市場は16年の4245億円から20年には5034億円へと直近5年間で119%に伸長。このうちトイレ用シーツ、猫砂、消臭剤、脱臭剤などの排せつに関連するペットケア用品は、745億円から825億円へと成長しているという。この傾向はコロナ禍により拍車がかかり、23年にはペット関連市場全体で5433億円に、ペットケア用品で871億円にまで成長すると富士経済では予測している。

 ただ市場拡大の一方で、飼育放棄などが社会問題化している。発表会に登壇した鈴木貴子社長は、「コロナ禍においてペット飼育の実態について分からないまま飼い始めたビギナーを中心に、思ったように懐かない、あるいはにおいがきついといった理由から、飼育を諦めてしまう事例も増えていると聞く」と説明。中でもにおいの問題は大きい。エステーが猫飼育者480人を対象に行った調査によれば、「飼育していて困ったこと」の1位に「トイレや排せつ物のにおいが臭い」が挙がっているという。

 においの問題であれば、「消臭のエステー」の出番ともいえる。同社の別の調査(猫飼育者1085人を対象、複数回答可)によれば、「においが気になるタイミング」は猫が排せつした瞬間が60.6%、トイレシート・マットを取り換えるときが34.6%、トイレシート・マットの取り換えが遅れたときが33.8%だったといい、データ上からも「におい問題はいまだ解決できていない未充足ニーズと分かった」と鈴木社長。飼育継続のポイントとしてトイレのにおいに着目し、今回の商品を開発することになった。

猫の飼育の課題に関し「(特に)におい問題はいまだ解決できていない未充足ニーズと分かった」と鈴木社長は説明した
猫の飼育の課題に関し「(特に)におい問題はいまだ解決できていない未充足ニーズと分かった」と鈴木社長は説明した

サーキュラーエコノミーを強調

 商品開発においては同社の「クリアフォレスト」の技術を採用。クリアフォレストは、エステーグループの日本かおり研究所が国立研究開発法人森林研究・整備機構と共同開発したもので、トドマツから抽出した、空気浄化作用に優れる「機能性樹木抽出成分」だ。11年から展開するこの成分を活用した製品の共通ブランド名にも冠されている。

 エステーの事業統括部門クリアフォレスト事業部の奥平壮臨事業部長は、「トドマツから抽出する成分には針葉粉体、樹木精水、樹木精油があり、このうち針葉粉体が猫の排せつ臭に非常に効果が高いことを発見した。トドマツは原料から確保し抽出する必要があるため、北海道・釧路の林業会社とパートナーシップを結び、間伐時に発生する、未利用資源の枝葉を回収できる仕組みを構築し、その枝葉から独自の装置で抽出することとなった」と説明。北海道トドマツの間伐時に発生する未利用資源の枝葉を活用していること、抽出装置を開発し林地の未利用資源から原料を抽出することにより林業に新たな雇用を生み出せること、実感消臭トイレ本体にも針葉粉体を練り込むことでプラスチックの使用量を削減していることなどを挙げ、この事業はサーキュラーエコノミーであると強調した。

 今回発売されたエステーペット実感消臭本体セット、エステーペット 実感消臭チップ、エステーペット 実感消臭シートは、同社の看板商品の1つである「消臭力」とクリアフォレストで共同開発しており、「消臭力」の消臭技術に加えて、すべての商品にトドマツ粉体を配合しているという。

エステー事業統括部門クリアフォレスト事業部の奥平事業部長は、エステーペットを含め、クリアフォレスト事業はサーキュラーエコノミーであることを説明した
エステー事業統括部門クリアフォレスト事業部の奥平事業部長は、エステーペットを含め、クリアフォレスト事業はサーキュラーエコノミーであることを説明した

5年で猫用トイレ市場シェア10%へ

 同社事業統括部門クリアフォレスト事業部ペットケア事業担当の藤平諭志氏は、「飼育開始から3年未満の準初心者に向けて、積極的に取り組みたい。(エステーの調査によれば)システムトイレを使っている人は約264万人。その中でにおいに困っている『におい不満(諦めてしまっている人)』の潜在層は約180万人いる」と説明。

エステーペット 実感消臭 本体セットは「実感消臭トイレ」本体、実感消臭チップ(2.5L)、実感消臭シート(4枚)がセットになっており、目安として1匹の場合で約1カ月使用可能。オープン価格で実勢価格は8778円前後(税込み)。初年度販売目標は2万1000個(写真提供/エステー)
エステーペット 実感消臭 本体セットは「実感消臭トイレ」本体、実感消臭チップ(2.5L)、実感消臭シート(4枚)がセットになっており、目安として1匹の場合で約1カ月使用可能。オープン価格で実勢価格は8778円前後(税込み)。初年度販売目標は2万1000個(写真提供/エステー)

 「エステーペット実感消臭トイレをリビングに置いても、排せつ時のにおいが気にならず、猫と人が快適に暮らせる空間を提供したい。またにおいに対する機能性だけでなく、手入れがしやすいように開閉式のファブリックタイプのルーフカバーを採用している。ルーフカバーを閉じれば、チップの飛び散りとにおいを防ぐことができる」(藤平氏)と商品の強みをアピールした。

実感消臭トイレ本体には、トドマツの粉体を練り込んだすのこ部分と、においの広がりを抑える開閉可能なファブリックタイプのルーフカバーを採用。ルーフカバーは防汚・防臭抗菌加工が施されている。また本体下部の引き出し式のシートトレーは前後入れ替え可能で、1週間無駄なくシートを使えるという(写真提供/エステー)
実感消臭トイレ本体には、トドマツの粉体を練り込んだすのこ部分と、においの広がりを抑える開閉可能なファブリックタイプのルーフカバーを採用。ルーフカバーは防汚・防臭抗菌加工が施されている。また本体下部の引き出し式のシートトレーは前後入れ替え可能で、1週間無駄なくシートを使えるという(写真提供/エステー)

 なお、実感消臭本体セットに開閉できるファブリックタイプを採用したのは、リビングに置かれることを想定し「インテリアになじむスマートなデザインを意識したから」(藤平氏)という。

 エステーでは、エステーペット 実感消臭シリーズにより、5年後には猫用トイレ市場においてシェア10%獲得を目指す。またペットと人が快適に暮らしていけるよう、エステーらしいペット用品を今後も発売していく予定だという。

実感消臭チップは2.5L(オープン価格、実勢価格は657円前後)、4L(同1053円前後)の2アイテム。初年度販売目標は合わせて36万7000個(写真提供/エステー)
実感消臭チップは2.5L(オープン価格、実勢価格は657円前後)、4L(同1053円前後)の2アイテム。初年度販売目標は合わせて36万7000個(写真提供/エステー)

エステーペットはデジマが重要

 主な販路についてはEC(電子商取引)サイト、ホームセンターのペット用品売り場、ドラッグストアなどとしている。

 奥平事業部長によれば、「ペット用品に関しては、今選んでいるものが良ければ変えようとは思わない人が多いため、(新規参入の)ハードルは高い。一方で、既存メーカーの商品でもにおい対策に関しては満足できていないことが分かっているため、情報が行き渡れば買い替えてもらえるのではないかと考えている」という。

 また、エステーペットについては、デジタルマーケティングが重要という見方も示した。「特に猫は犬と違って散歩に出かけて飼い主同士が出会うということが少ないため、情報交換の機会が少ない。一方で、猫飼育者はSNS使用率が高いとされている。ペット専用サイト『peco(ペコ)』と連動したインフルエンサー施策をはじめ、TwitterやInstagramなどを活用し、広く今回の商品の認知度を上げたいと考えている」(奥平事業部長)

 エステーは「空気を通して暮らしを明るく元気にすること」をミッションとして掲げており、今後は独自の消臭技術を用い、ペットとの暮らしを明るく元気なものにしたいと表明している。中でも世界のペット関連市場は現在13兆円規模ともされる注目市場だ。「今後は海外でも展開していきたい」と鈴木社長は期待を寄せた。

エステーペット 実感消臭シートのシートサイズは約43×約29センチで、表面が白く尿の色での健康状態チェックにも便利。容量は4枚入り(オープン価格、実勢価格は547円前後)、10枚入り(同1078円前後)、20枚入り(1847円前後)の3タイプ。初年度販売目標は合わせて35万9000個(写真提供/エステー)
エステーペット 実感消臭シートのシートサイズは約43×約29センチで、表面が白く尿の色での健康状態チェックにも便利。容量は4枚入り(オープン価格、実勢価格は547円前後)、10枚入り(同1078円前後)、20枚入り(同1847円前後)の3タイプ。初年度販売目標は合わせて35万9000個(写真提供/エステー)
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