スペシャルティコーヒーブームの立役者ともいえる長野県軽井沢町の丸山珈琲。近年は異業種ブランドとのコラボや、スペシャルティコーヒーを使ったペットボトル飲料の販売など、気軽にコーヒーを楽しめる商品の開発に積極的に取り組んでいる。顧客の裾野を広げる一方、スペシャルティコーヒーの名店としてのブランドはどう維持するのか。同社の丸山健太郎社長にその戦略を聞いた。

丸山珈琲社長が語る「ブランド維持のためのやせ我慢、やめました」
丸山珈琲の丸山健太郎社長

本格派ゆえに新規顧客が課題に

 丸山珈琲は長野県の軽井沢町にある喫茶店として1991年にスタートを切った。2001年からは創業者で社長の丸山健太郎氏自らが各国のコーヒー豆生産者を直接訪れてパイプを構築。今ではコーヒー豆の輸入元としての顔をも併せ持ち、日本のスペシャルティコーヒーブームをけん引する存在として広く知られるようになっている。

 そんな丸山珈琲が近年力を入れていることの1つが、コーヒーが持つ魅力を生かしたコラボレーション商品の開発だ。

 栗の産地として知られる長野県小布施町を代表する老舗和菓子店の小布施堂や、1736年から続く長野市善光寺門前の七味唐からし屋の八幡屋礒五郎、黒霧島などで知られる焼酎メーカーの霧島酒造(宮崎県都城市)、榮太樓總本鋪(東京・中央)などタッグを組む相手は規模も主力商品もさまざま。

 コラボで生まれた商品も、小布施堂とはコーヒー風味のどら焼きやタルト、八幡屋礒五郎とはコーヒーガラムマサラ、霧島酒造とは看板商品である黒霧島、白霧島、赤霧島を使った焼酎コーヒーゼリー、榮太樓總本鋪とはコーヒーかりんとうと、バラエティーに富んでいる。

霧島酒造とコラボした「霧島酒造 焼酎コーヒーゼリー 3個入り」(税込み3240円)
霧島酒造とコラボした「霧島酒造 焼酎コーヒーゼリー 3個入り」(税込み3240円)
八幡屋礒五郎とコラボしたスパイス「コーヒーガラムマサラ」(税込み864円)
八幡屋礒五郎とコラボしたスパイス「コーヒーガラムマサラ」(税込み864円)
榮太樓總本鋪のカジュアルブランド「にほんばしえいたろう」とコラボレーションした「丸山珈琲かりんとう」(税込み270円)
榮太樓總本鋪のカジュアルブランド「にほんばしえいたろう」とコラボレーションしたコーヒー風味の「丸山珈琲かりんとう」(税込み270円)

 丸山社長は近年の相次ぐコラボ商品発売の狙いとして「顧客層の拡大」を挙げた。時期によって多少のブレはあるものの、丸山珈琲の売り上げの40~55%はコーヒー豆の販売によるもの。東京・西麻布にあるショールームなど、実店舗でも売り上げが伸びているのは豆の販売だ。

 「コーヒー専門店として常連がつき、高い評価もいただいている。一方で、新たな顧客層を開拓できていないという課題も抱えていた。知る人ぞ知るといえば聞こえはいいが、飲食業界という枠でとらえると丸山珈琲を知らない人はまだまだ多い。顧客に対して、さらには飲食業界全体に対して、当社をアピールする営業活動としての一面もあった」(丸山社長)

 その中でも、近年のコラボの流れを決定づけたのは、2019年秋に期間限定で発売した小布施堂とのコラボ商品「小布施堂×丸山珈琲 珈琲栗どら焼き」だ。小布施堂といえば、毎年秋の一時期に数量限定で販売する、取れたての新栗をぜいたくに用いた生菓子「朱雀」が県外にも広く知られる老舗。そんな名店とのコラボで生み出したどら焼きは、一口食べると、柔らかな栗の甘さとコーヒーの香りや苦味が口の中に広がる、意外性がクセになる逸品だ。好評を受け、20年、21年にも秋限定で販売している。

小布施堂とのコラボ商品「小布施堂×丸山珈琲 珈琲栗どら焼き」(単品・税込み396円)
小布施堂とのコラボ商品「小布施堂×丸山珈琲 珈琲栗どら焼き」(単品・税込み396円)

 商品ジャンルの違う企業と組むことで、従来とは異なる顧客層との接点を開拓した手応えを感じたという丸山社長。同時に、「コラボのお相手にはとがったところがある企業が多く、互いに面白いことに挑戦しようという知的興奮を得られた」とも話す。

 丸山珈琲が、こうした異業種とのコラボに取り組めるのは、商品開発を担う人材がいることも大きい。それが、商品企画開発部部長を務める、鈴木樹(みき)氏だ。同氏は日本一のバリスタを決める大会「ジャパン バリスタ チャンピオンシップ」(JBC)で史上初となる3度の優勝を達成。17年には世界的な競技大会「ワールド バリスタ チャンピオンシップ」で準優勝した経歴を持つバリスタだ。丸山珈琲のコラボ商品すべてで、開発を主導する。

 鈴木氏は、「小布施堂と丸山珈琲では扱う商品分野や客層が異なるが、両社が持つ顧客のプロフィルをカテゴライズしていくと、親和性も見られる。それを核に、珈琲栗どら焼きや、珈琲栗タルトといった商品の販売を通じて、互いに送客し合えるいい関係ができた」と語る。

丸山珈琲 商品企画開発部部長の鈴木樹氏
丸山珈琲 商品企画開発部部長の鈴木樹氏

 こうした取り組みが実を結び、最近は定番化するコラボ商品も増えてきた。「発売直後だけ売れればいい、話題になればいいということではなく、普遍的な魅力を持った商品開発を心がけている」と丸山社長。コーヒーが好きな人にはコーヒーの新たな魅力を、コーヒーがあまり好きではない人には意外な出合いを提案する商品として育てていく考えだ。

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