アサヒ飲料の「ウィルキンソン」ブランドから、新商品「ウィルキンソン タンサン #sober スパイシーレモンジンジャ」が誕生する。ターゲット層は、これまで炭酸水になじみの薄かった20~30代だ。あえてお酒を飲まない若年層に着目し、缶チューハイや有糖飲料の代替として訴求する。

新商品の「ウィルキンソン タンサン #sober スパイシーレモンジンジャ」は2022年3月15日から全国で販売
新商品の「ウィルキンソン タンサン #sober スパイシーレモンジンジャ」は2022年3月15日から全国で販売
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20代の購入者数は全体の9%

 「新商品の『ウィルキンソン タンサン #sober(タグソバー) スパイシーレモンジンジャ』(以下、#sober スパイシーレモンジンジャ)は、従来のウィルキンソンとは全く別のシリーズとして売り込んでいく。お酒と飲料の境界線がなくなりつつある、新世代の高い需要をくみ取っていく」

 新商品のブランディングについて、アサヒ飲料 マーケティング本部 マーケティング一部 無糖炭酸・果汁グループリーダーの内田晴久氏はこう語った。2022年3月15日から全国で発売される#sober スパイシーレモンジンジャは、同ブランドの既存商品とは一線を画している。味わいや飲みごたえをしっかり持たせ、パッケージのデザインもスタイリッシュな路線に舵(かじ)を切った。

 アサヒ飲料は、ターゲット層を20~30代を中心としたZ世代に合わせ、#sober スパイシーレモンジンジャを売り込む。20年にウィルキンソンを購入したユーザー数を世代別で比較すると、20代が9%、30代が17%、40代が29%、50代が27%(調査会社インテージによる調査結果)。ウィルキンソンが浸透していない若年層に向け、親しみを感じてもらえるよう商品を設計した。

 味わいは、原材料にスパイスを使うことで、無糖ながら辛口のジンジャーを想起させるフレーバーを実現。香りづけは、炭酸水に合う王道のレモンを採用した。飲んでみると、刺激あふれる強炭酸に、スパイスとフレーバーがもたらす爽快感が癖になる印象だ。

アサヒ飲料による「飲みたいフレーバーの組み合わせランキング」と題したアンケート調査では、「レモン&ジンジャ」が83%と最も高い結果に。世間の声を参考に、人気の組み合わせを採用した
アサヒ飲料による「飲みたいフレーバーの組み合わせランキング」と題したアンケート調査では、「レモン&ジンジャ」が83%と最も高い結果に。世間の声を参考に、人気の組み合わせを採用した
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 パッケージデザインは、スタイリッシュなかっこよさを意識した。「ウィルキンソンとは距離を取った、あえてチャレンジングな見た目を採用することで、ウィルキンソンシリーズに触れてもらうきっかけの商品として機能させていく」と内田氏。発売に先駆けた事前調査では、87%の人が「購入したい」と回答した。

「あえてお酒を飲まない」文化のけん引狙う

 また、アサヒ飲料によるユーザーアンケートでは、炭酸水に触手が伸びない若年層から「有糖の炭酸飲料のように、無糖でも味わいや飲みごたえが強いものが欲しい」「ノンアルコールでも、飲みの場の雰囲気に溶け込めるような、缶チューハイらしいデザインのものが欲しい」といった意見が多く寄せられたという。これらの声を味やデザインに反映させることで、カロリーが気になる有糖の炭酸飲料からのシフトチェンジや、酔いたくない気分のときに缶チューハイの代替商品として、#sober スパイシーレモンジンジャをアピールしていく。

 アサヒ飲料がRTD(レディー・トゥ・ドリンク)の代替として炭酸水を訴求する背景には、海外の若者の間でアルコールを敬遠する習慣があった。欧米ではあえてお酒を飲まないことを「ソバーキュリアス」と呼び、健康的な生活を送る価値観が定着している。ソバーキュリアスとは、「シラフ」を意味する「ソバー」と、「好奇心」を表す「キュリアス」の2つを合体させた造語だ。言葉の由来には「断酒による心身のポジティブな変化を楽しむ」という意味が込められている。

 内田氏によれば、日本の若年層でも「お酒が飲めるけど、あえて飲まない選択をする」ユーザーは多いそうだ。「睡眠の質が上がる」「翌日の仕事の生産性が向上する」「自宅でのオフ時間を有意義に過ごせる」などを理由に、お酒を飲まずに、毎日を健康的かつ合理的に過ごす若者が増えている。

 「若い世代では、お酒を飲みたいときはアルコールをたしなむが、シラフでいたいときは断酒するユーザーも多い。そうした気分のときに、(味わいやデザイン、強炭酸ののどごしにより)飲酒時に近い感覚を味わえる#soberシリーズを、新しい選択肢として提案していく」(内田氏)

 日本では、ソバーキュリアスという言葉自体の認知はまだ低いが、そここそアサヒ飲料が商機を見いだした点でもある。

 同社のアンケートでは、日本におけるソバーキュリアスという単語の認知度は3.6%にとどまっている一方で、ソバーキュリアスの価値観に賛同した人は80.6%にも上った(20~50代までの男女で、飲酒機会が月1回以上の800人と月1回以下の800人、計1600人を対象)。潜在需要はありながら、まだ浸透していないソバーキュリアスの文化を、新商品とともに発信していくことで、炭酸水といえばアサヒ飲料というイメージをユーザーに定着させようと考えているのだ。

アンケートは、20代~50代まで男女1600人(月1回以上飲酒する人が800人、それ以下の人が800人)に実施。認知度、価値観の賛同率ともに、若い世代ほど高い結果となった(画像はアサヒ飲料の資料より)
アンケートは、20代~50代まで男女1600人(月1回以上飲酒する人が800人、それ以下の人が800人)に実施。認知度、価値観の賛同率ともに、若い世代ほど高い結果となった(画像はアサヒ飲料の資料より)
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発売4ヵ月前から多角的な活動を実施

 そのための施策もすでに始めている。まずはサイトでの情報発信だ。同社では21年11月から、ウィルキンソンのブランドサイト内に、ソバーキュリアスの価値観や文化を伝える特設ページを開設。併せて、インスタグラムを中心に「#sober」というハッシュタグを活用して情報を発信。特設ページへの動線を敷く。既存のウィルキンソンブランドの商品には、特設ページへリンクするQRコードを記載したネックリンガー(ペットボトルのキャップ部分にぶら下げる販促ポップ)を取り付け、サイトへの流入を図る。

 また、アマゾン内のストアでも、ソバーキュリアスについて紹介するページを開設した。すると「20代のターゲット層から高い購入意向・好意度を獲得した」と同社。ページの読了率も、他ブランドのページが平均8%なのに対して、ソバーキュリアスのページは68%と、関心が高い結果を得た。

 同社では、#soberシリーズが狙うターゲット層を、「お酒と飲料の境界線がなくなりつつある新世代」と定義。「ソバーキュリアスの価値観は、今後どんどん浸透していくと予測する。11年に炭酸水を直接飲用する文化を広めたウィルキンソンが、次はソバーキュリアスの新しい文化を提案していく」(内田氏)として、強い意欲を示した。

 発売後は、商品と絡めた施策を展開する。「発売前の段階ではソバーキュリアスの普及活動を中心に行い、発売後は新商品の売り上げを拡大する施策も併せて進めていく」(内田氏)

ウィルキンソンのブランドサイト内にあるソバーキュリアスの特設ページ。写真からも若者へ訴求する意向が伝わってくる
ウィルキンソンのブランドサイト内にあるソバーキュリアスの特設ページ。写真からも若者へ訴求する意向が伝わってくる
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 抽選で商品が届くキャンペーンを実施し、当選者には「#sober」というハッシュタグを付けて、「新商品がどんなシーンにふさわしい飲料か」をSNSに投稿してもらう取り組みを行う。新商品サンプリングの引き換えとして、ユーザーに情報発信をお願いすることで、UGC(ユーザー生成コンテンツ)を増やす狙いだ。それらの投稿を拾って特設ページに掲載し、ソバーキュリアスが身近な文化であると受け止めてもらえるよう工夫する。

 加えて、タレントを起用したテレビCM、ウェブやSNSでの広告、その場で抽選結果がわかるキャンペーンなども実施。22年夏頃には、#soberシリーズ第2弾の商品発売も予定するなど、長期的な話題作りをしていく。酒を飲む人も飲まない人も互いに尊重し合える社会の実現を目指す「スマートドリンキング」を掲げ、22年1月には電通と共同で、それを推進する合弁会社・スマドリも立ち上げたアサヒビール。新文化の定着によって、ウィルキンソンシリーズ全体の間口拡大も狙う。

(写真提供/アサヒ飲料)