東京都は2022年1月28日、「Tokyo Contents Business Award(トウキョウ・コンテンツ・ビジネス・アワード)2021」を開催、都内中小企業が持つ優れたAR・VR・AI技術を表彰した。大賞には電駆ビジョン(東京・渋谷)の3Dコンテンツ生成技術「Points3D」が選ばれた。

「Tokyo Contents Business Award2021」は、社会課題を解決するVR・AR・AI等の先など端技術を表彰するビジネスアワード
「Tokyo Contents Business Award2021」は、社会課題を解決するVR・AR・AI等の先など端技術を表彰するビジネスアワード

 外出自粛やテレワークの普及に伴い、AR・VR・AI技術が注目されている。そんななか東京都が開催したのが、社会課題の解決に向けたAR・VR・AI技術を開発している都内中小企業を表彰する「Tokyo Contents Business Award2021」だ。第1回の今回は応募56社から大賞1社、優秀賞2社、奨励賞6社が選ばれた(募集期間2021年7月16日~8月31日)。

 「先端技術で社会を変えるアイデアを」と題されたこのアワードの大賞に選ばれたのは、電駆ビジョンの「Points3D(ポインツスリーディー)」。これは、フォトグラメトリー(被写体をさまざまな角度から撮影し、そのデジタル画像を解析、統合して立体的な3DCGモデルを作成する手法)の簡易版ともいえる3Dコンテンツ生成技術。Webサイトの画像を上下左右にスライドさせて、さまざまな角度から立体展示物を鑑賞できるようにするためのものだ。

Points3Dで作成した3Dコンテンツ
Points3Dで作成した3Dコンテンツ

 Points3Dはフォトグラメトリーとは違い、一般的なデジタルカメラやスマートフォンで撮影した写真(デジタル画像)が数枚あれば、数分で3Dコンテンツを作成できるという。

 電駆ビジョンの坂本竜基CEO(最高経営責任者)は 「もちろん写真の枚数は多い方が正確な3DCGモデルになるが、本技術を使えば、少ない枚数でも違和感ないコンテンツを生成することができる。フォトグラメトリーの3DCGモデルと比べてデータ容量が小さくて済み、スマホでも軽快に動く」と話す。

 Points3Dは、3Dリモート博物館見学用コンテンツ(筑波大学・久留米大学)、解剖学のリモート授業教材(麻布大学獣医学部獣医学科)などで実証実験が進められている。Points3Dの大賞授賞理由は「さまざまなコンテンツの3D化により、感染症対策、観光・産業振興などに寄与する」というものだった。

 「スミソニアン博物館などでは展示物をCG化して3D的な鑑賞サービスを提供しているが、個人では難しい。Points3Dは、今後の成長が見込まれている個人のD2Cなどで活用される可能性がある」(坂本CEO)

 審査員代表を務めたMoguraVR編集長・XRコンソーシアム事務局長の久保田瞬氏は「Points3Dは、平面だったものが空間になっていく流れのなかで、いろいろな産業で使われていく技術だ。3Dモデルとしては完全とはいえないものの、フォトグラメトリーで3DCGモデルを作る際にかかる膨大な労力・費用・時間が必要なくなるのは大きい」と評した。

 大賞に次ぐ優秀賞を受賞したのはAnchorZ(アンカーズ、東京・台東)の「DZ Security(ディーゼットセキュリティー)」とイマクリエイト(東京・品川)の「NUP(ナップ)動きのシェアを可能にするVRプラットフォーム」。

 DZ Securityは金融アプリの安全性を向上させる技術で、「バックグラウンド認証」では、顔や声、振る舞いなどの情報から本人であることを自動認証することが可能になっている。これを導入すればパスワード入力や指紋認証は不要になり、“なりすまし”なども防げるという。優秀賞の授賞理由は「加速するデジタル社会の防犯に寄与する」だった。

DZ Securityの「バックグラウンド認証」
DZ Securityの「バックグラウンド認証」

 またNUPは人に伝えることが難しい“体の動き”を3Dデータとして立体的に共有できるようにするVRシステム。例えばゴルフなら、インストラクターの動きを共有することで正しい軌道を見ながらスイングできる上、クラブや弾道の残像を確認することも可能になる。つまり、効率良く正しいスイングを身に付けることができるわけだ。「非対面・非接触での技術伝承が可能となるため、感染症対策、高齢化、教育などに寄与する」がNUPの授賞理由だった。

体を動かす感覚を共有できるNUP
体を動かす感覚を共有できるNUP

 上記以外では6社が奨励賞を受賞したので駆け足で紹介しておこう。

 アルファコード(東京・文京)の超体感XR配信プラットフォーム「Blinky」は、オンラインのライブ会場を提供する配信プラットフォーム。単にライブを配信するだけでなく、グッズ販売などトータルでライブビジネスをサポートする。

オンラインライブ配信をトータルでサポートするBlinky
オンラインライブ配信をトータルでサポートするBlinky

 プラグ(東京・千代田)の「パッケージデザインAI」では、約920万人の消費者調査の結果をAIが学習し、消費者に好まれるデザインを作ることが可能。1時間で1000種類のデザインを提案できるという。

“消費者に好まれるデザイン”をAIが自動生成するパッケージデザインAI
“消費者に好まれるデザイン”をAIが自動生成するパッケージデザインAI

 ジョリーグッド(東京・中央)の「ECMO(エクモ)トレーニングVR」は、人工肺ECMO機器を使った施術手法の体験学習を可能にするVR教材。ECMO治療のスペシャリストが全面監修しており、指導医によるばらつきのない教育を提供する。

人工肺ECMO機器を使った施術手法の体験学習ができるECMO(エクモ)トレーニングVR
人工肺ECMO機器を使った施術手法の体験学習ができるECMO(エクモ)トレーニングVR

 エイシング(東京・港)の「極軽量/超省電力 AIアルゴリズムMST」は、端末にAIを搭載することで、リアルタイムな学習や予測を実現するAIアルゴリズム。製品の経年劣化や現場での動きの変化を瞬時に学習することができるため、産業分野などを中心に生産性の向上が図れるという。

リアルタイムな学習や予測を実現するAIアルゴリズムMST
リアルタイムな学習や予測を実現するAIアルゴリズムMST

 Holoeyes(ホロアイズ、東京・港)の「Holoeyes Edu(ホロアイズ エデュ)」は、解剖学を3D空間で学べる医療VR教育アプリ。講師の動きや視線、音声などをスマホで再生しながら勉強できる。

解剖学を3D空間で学べるHoloeyes Edu
解剖学を3D空間で学べるHoloeyes Edu

 Spacial(スパシアル、東京・中央)の空中立体結像装置「Spacial」は、3DCGコンテンツを画面より手前の空中に浮いたように見せる装置。バーチャルヒューマンと組み合わせれば、立体像と会話するという現実に近いコミュニケーションが実現する。

3DCGコンテンツを立体映像で見せるSpacial
3DCGコンテンツを立体映像で見せるSpacial

 なお審査員は久保田氏のほか、STORIA(ストーリア)法律事務所 弁護士・弁理士の柿沼太一氏、IoTNEWS(アイオーティーニュース)代表・アールジーン代表取締役の小泉耕二氏、サイバートラスト副社長・OSS・IoT事業部長・組込みシステム技術協会副会長・九州工業大学客員教授の佐野勝大氏、日本アイ・ビー・エム 戦略コンサルティング&デザインパートナーの古長由里子氏、スクウェア・エニックス リードAIリサーチャーの三宅陽一郎氏、ブレイクポイント代表取締役・慶応義塾大学大学院経営管理研究科 非常勤講師・グロービス経営大学院 講師・XRコンソーシアム理事の若山泰親氏、および東京都内部審査員3人が務めた。

(写真提供/東京都)

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