ジャガー・ランドローバー・ジャパン(東京・品川)は、2022年1月17日にランドローバーブランドの最上級モデル「レンジローバー」のジャパンプレミアを都内で開催した。第5世代となる新型は、今後の電動化を強く意識したものになっている。

新型「レンジローバー」は2022年1月17日に日本で受注開始。発表会にはジャガー・ランドローバー・ジャパンのマグナス・ハンソン社長とマーケティング・広報部ディレクターを務めるマシュー・スリース氏が登壇した
新型「レンジローバー」は2022年1月17日に日本で受注開始。発表会にはジャガー・ランドローバー・ジャパンのマグナス・ハンソン社長とマーケティング・広報部ディレクターを務めるマシュー・スリース氏が登壇した

24年の初フルEVに向けた第一歩

 2022年1月17日、ジャガー・ランドローバー・ジャパン(東京・品川)が第5世代となる、英ランドローバーの最上級モデル「レンジローバー」を日本で披露し、同日より受注を開始した。同モデルは乗用車ライクな高級クロスカントリー車のパイオニアとして1970年に誕生し「砂漠のロールス・ロイス」と称賛された初代以来、約50年間ラグジュアリーSUV(多目的スポーツ車)として同社をけん引してきた。発表会に登壇したジャガー・ランドローバー・ジャパンのマグナス・ハンソン社長は、この新型車を「サステナビリティー、寿命、洗練性がますます重要視されるようになる中、電動化を見据えた未来に向けてゼロから設計された最初の車」とアピールした。

 プラットフォームは電動化を念頭に開発された、あらゆるパワートレインに対応するランドローバー最新のアーキテクチャー「MLA-Flex(flexible Modular Longitudinal Architecture)」を初めて採用した。パワートレインはマイルド(簡易)ハイブリッド車(MHEV)となる排気量3.0リットル直列6気筒INGENIUMターボ・ディーゼルエンジン、同3.0リットル直列6気筒INGENIUMガソリンエンジンと105kWの電動モーターを組み合わせたプライグインハイブリッド車(PHEV)、同4.4リットルV型8気筒ツインスクロールターボ付きガソリンエンジンという3タイプをラインアップ。価格はMHEVモデルが1638万円(税込み、以下同)から、PHEVモデルが1710万円から、V8のガソリンエンジン車が1830万円からとなっている。

 注目はPHEV仕様車だ。1回の充電での走行距離はWLTPモードで100キロメートルだが、現実的な走行距離は約80キロメートルで、これによりレンジローバー愛用者の移動距離の75%は、電気のみで走れるようになるという。ランドローバーでは今後6台の電気自動車(EV)を投入する計画があり、初のフルバッテリーEVは24年にレンジローバーとして発売するという。今回の新型は本格的な電動化に向けた第一歩というわけだ。

3列目シートの7人乗り仕様も設定

 ボディータイプは、スタンダードホイールベースとロングホイールベースの2種類。スタンダードホイールベース車の寸法は、全長5052×全幅2209(ミラー展開時)/2047(ミラー折りたたみ時)×全高1870ミリメートルで、ホイールベースは2997ミリメートルと大きめ。ロングホイールベース仕様だとホイールベースが200ミリメートル拡大されて3197ミリメートルとなり、全長は5252ミリメートルにもなる。

新型レンジローバーのスタンダードホイールベース車の寸法は、全長5052×全幅2209(ミラー展開時)/2047(ミラー折りたたみ時)×全高1870ミリメートル
新型レンジローバーのスタンダードホイールベース車の寸法は、全長5052×全幅2209(ミラー展開時)/2047(ミラー折りたたみ時)×全高1870ミリメートル

 内外装デザインはモダンラグジュアリーを再定義したものだという。外観はレンジローバーらしい伝統的なフォルムやアイコンを継承しながらも、彫刻のようなシンプルなフォルムを追求した。一方、内装は英国高級車らしい温かみと居心地の良さがありながら、ダッシュボード上に浮かぶように設置されたタッチスクリーンをはじめ、デジタル技術を積極的に採用している。乗車定員は4人乗りと5人乗りが基本だが、ロングホイールベース仕様にはレンジローバー初の3列目シートを備えた7人乗り仕様も設定し、多人数乗車のニーズにも対応した。

ダッシュボード上に浮かぶように設置されたタッチスクリーンをはじめ、デジタル技術を積極的に採用
ダッシュボード上に浮かぶように設置されたタッチスクリーンをはじめ、デジタル技術を積極的に採用

 新モデルラインとして、ランドローバーの最上級ラグジュアリー仕様やハイパワーモデルの開発製造、さらに個別のカスタムオーダー仕様を受け付ける部門「スペシャル・ビークル・オペレーションズ(SVO)」が手掛けた「レンジローバーSV」も新たに設定した。優雅さを強調した「SV SERENITY」とアグレッシブな雰囲気の「SV INTREPID」の2種類がある。

 ランドローバーSVの設定をきっかけに、日本でもSVOが手掛ける特別なモデルや注文に力を入れるため、22年より全国8カ所にSVスペシャリストセンターを設置する。より本国に近いカスタマイズサービスなどを提供していく方針だ。

新たに「レンジローバーSV」が設定された
新たに「レンジローバーSV」が設定された

21年は日本で過去最高の販売台数

 ハンソン社長は会見で「日本市場においてラグジュアリーSUV需要は伸びている」と説明。21年のランドローバーは日本で過去最高となる販売台数を記録しており、日本自動車輸入組合(JAIA)のデータによれば、21年に登録されたランドローバーは4773台で、前年比21%増となった。

 この好調を支えているのが20年に投入された本格クロスカントリーモデル「ランドローバー ディフェンダー」だ。エントリータイプで現在576万円(税込み)からという手が届く価格帯ということもあって、発売から2年がたった現在も支持を得ているという。また近年のSUVブームを受け、「レンジローバー イヴォーグ」などを中心としたレンジローバーの販売も好調だ。こうした好調の波を新型レンジローバーの販売にも結び付けたいとしている。

「日本市場においてラグジュアリーSUV需要は伸びている。21年のランドローバーは日本で過去最高となる販売台数を記録した」とハンソン社長
「日本市場においてラグジュアリーSUV需要は伸びている。21年のランドローバーは日本で過去最高となる販売台数を記録した」とハンソン社長

 マーケティング・広報部ディレクターのマシュー・スリース氏は、「レンジローバーは高級SUVのパイオニアだが、近年は他ブランドも積極的に高級SUVを投入し、価格だけならレンジローバーよりも高いモデルも増えてきた。現在の日本のSUV市場で、ランドローバーの魅力がしっかりと訴求できておらず、残念に感じている。だからこそレンジローバーの世界をより知ってもらうべく、日本でも特別なオーダーが可能なSVOのモデルに注力するため全国でSVスペシャリストセンターを開設し始めた。これまで日本では難しかったオーダーにも応えられるように、できることを増やしていく」とし、新レンジローバーの販売に力を入れていくことを強調した。

 レンジローバーは車好きには認知度の高いラグジュアリーSUVだが、一般の富裕層にはメルセデス・ベンツ「Gクラス」のほうが知名度や人気は上だろう。ただ武骨さもあるGクラスと異なり、快適性と優雅なスタイルで長年世界のセレブたちを虜(とりこ)にしてきたSUVとしてのプライドがレンジローバーにはある。ディフェンダーのヒットでランドローバー全体の販売が好調な今、新世代となったレンジローバーの存在感を日本市場で示すチャンスと捉えているのだろう。

 ライバルのドイツ系高級車と比べると、販売店数が少ないのが弱点であるが、ランドローバーとしてはディフェンダーのように商品力が評価されれば新たな顧客を呼び込める手応えは得ているようだ。顧客になりうる富裕層にどのようにレンジローバーの魅力を伝え、販売につなげていくか、これからの販売手法が注目される。

(撮影/大音安弘)

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