ウォルト・ディズニー・ジャパンは2021年12月5日、東京・新宿に国内最大規模のディズニーストアをオープンした。「想像の、その先へ」をコンセプトに、デジタルコンテンツを駆使して、ディズニーの世界観に没入できるような店舗体験を実現した。しかし、来店客(ディズニーでは「ゲスト」と呼ぶ)を惹きつける魅力は、華やかな内観だけではないと同社は言う。

新宿に日本最大規模のディズニーストア「ディズニーフラッグシップ東京」がオープン
新宿に日本最大規模のディズニーストア「ディズニーフラッグシップ東京」がオープン(以下、写真はオープン時に撮影したもの)
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 JR新宿駅から徒歩3分、東京メトロ「新宿三丁目」駅から直結する好立地に、ディズニーストアの新たな旗艦店「ディズニーフラッグシップ東京」がオープンした。地下1階から地上2階にわたる約1710平方メートルの総面積、限定品をはじめとした約2200点のアイテム数(オープン時)は、どちらも日本最大だ。3フロアにわたる店内には、ディズニーはもちろん、ピクサーやスター・ウォーズにマーベルなど、バラエティー豊かなキャラクターの商品群があふれる。また原材料にオーガニックコットンを使用したファッションアイテム、石灰石からできた素材を使ったマスクケースなど、サステナブルなアイテムもそろえる。

地下1階のフロアには、スター・ウォーズやマーベルのグッズが置かれている
地下1階のフロアには、スター・ウォーズやマーベルのグッズが置かれている
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ディズニーフラッグシップ東京だけの限定品もあり、アイテム数は日本最大規模を誇る(品切れの場合もあり。商品のデザイン、価格、発売日、販売店舗、仕様は変更になる場合あり)
ディズニーフラッグシップ東京だけの限定品もあり、アイテム数は日本最大規模を誇る(品切れの場合もあり。商品のデザイン、価格、発売日、販売店舗、仕様は変更になる場合あり)
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 また、ミッキーのオブジェが目立つ撮影スポットや、様々な作品映像が流れるデジタルサイネージ、ディズニーやピクサー、スター・ウォーズ、マーベルを組み合わせて描いた壁面アートなど、内観も華やかだ。実際に店舗を訪れた際は、確認程度に一通り商品を見て、店内の仕掛けを体験するだけでも、30~40分ほど時間を要した。

パークでの思い出を追体験できる演出

 このように店舗づくり、商品数ともに大掛かりなディズニーフラッグシップ東京は、ウォルト・ディズニーの生誕120周年に合わせてオープンした。新型コロナウイルス禍の前から計画していたもので、コンシューマ・プロダクツ バイスプレジデント&ゼネラルマネージャーの井原多美氏は「節目のタイミングに、ウォルト・ディズニー・ジャパンの直営ビジネスであるディズニーストアの旗艦店を立ち上げた。今までにない店舗を展開していく」と意気込む。

コンシューマ・プロダクツ バイスプレジデント&ゼネラルマネージャーの井原多美氏。バックにはウォルト・ディズニーが映る(撮影場所はウォルト・ディズニー・ジャパン本社、撮影日は2022年1月18日)
コンシューマ・プロダクツ バイスプレジデント&ゼネラルマネージャーの井原多美氏。バックにはウォルト・ディズニーが映る(撮影場所はウォルト・ディズニー・ジャパン本社、撮影日は2022年1月18日)
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 井原氏が口にする「今までにない店舗」とは、どのようなものなのか。

 「店舗自体のスペックはもちろん、内観にもこだわった。店舗入り口には440インチ以上あるLEDビジョンが設置され、ウエルカムメッセージが流れる。入り口すぐの位置には、LEDライトのミッキーがゲストを迎え入れる。メインストリートの街並みの風景から、ディズニーの世界に招待するような非日常感を演出した」(井原氏)

ディズニーフラッグシップ東京の外観。ミッキーが映っているのが「ウエルカムビジョン」と呼ばれる大型LEDビジョン
ディズニーフラッグシップ東京の外観。ミッキーが映っているのが「ウエルカムビジョン」と呼ばれる大型LEDビジョン
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店内の入り口上入ると、LEDライトのミッキーが上空から迎えてくれる
入店するとLEDライトのミッキーが上空から迎えてくれる
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 井原氏が語る「非日常感」とは、東京ディズニーリゾートのようなテーマパーク(ディズニーでは「パーク&リゾート」と呼ぶ)での体験を中心に、ゲストがディズニーのコンテンツに触れて気持ちが高ぶる感覚を表す。例えば東京ディズニーリゾート内にあるショップでは、キャラクターの耳がついたカチューシャや、その場で着られるキャラクター柄のTシャツ、お土産としてのお菓子やぬいぐるみなどを販売している。パーク内を楽しむためのグッズや、思い出として余韻を感じられる商品が多い。

 一方で、街中に存在するこれまでのディズニーストアは、どちらかというと生活用品が多かった。実用的ではあるが、パーク&リゾートに来園したときのような高揚感は感じづらい。

 そこでディズニーフラッグシップ東京では、パーク&リゾートでの思い出を追体験できるような店舗づくりでディズニーストアへの再来店を促す。ディズニーストアとしては初となる、世界のパーク&リゾートの商品を多数そろえ、ゲストに楽しんでもらえる店舗づくりを目指した。

 また、都内でも有数の商圏規模を持つ新宿という地の利も生かし、新規層の流入も狙う。人気アーティストとの共同企画商品や季節限定品、その時々に上映される映画のキャラクターアイテム、オンラインストアより早い新商品のお披露目などで、話題づくりにも取り組む。

画家であり絵本作家のヒグチユウコ氏との共同企画商品の売り場
画家であり絵本作家のヒグチユウコ氏との共同企画商品の売り場
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 「新宿には映画館や商業施設も多く、新宿を訪れた人が、ついでにディズニーストアに足を運ぶケースも多い。数多い商業施設から徒歩圏内で行けるのは、お客さんの利便性としても重要だ。ディズニーのファン以外の映画好きや、共同企画をしたアーティストが好きなユーザーにも、来店動機を生み出していく」と井原氏。

 2021年12月のオープン後は、若い20代の男女に加えて、地方から来た観光客も散見された。SNS映えする店内や豊富な品ぞろえで、東京の観光地の一つとしても訴求していく。話題性も含めて「究極のショッピング体験をしてほしい」と、井原氏は自信をのぞかせる。

ユーザーには「ディズニー愛」で再来店を促す

 店舗づくりに加え、ディズニーフラッグシップ東京が強く意識するのが「店舗のスタッフ(キャスト)による接客」だ。内観やアイテムの幅広さなど、表面的に見て取れるポイントだけにとどまらない、店舗だからこそ実現できる、ユーザーとのつながりを深める工夫を重視する。

 工夫の一つが、ディズニーストアとして初の試みとなる、「スペシャリティキャスト」制度の導入だ。同制度は、ディズニーの4つのブランド「ディズニー」「ピクサー」「マーベル」「スター・ウォーズ」それぞれに特化した知識を持つキャストを採用し、ゲストからもわかるように、制服のバッジで示すものだ。

スペシャリティキャストのバッジ、それぞれのブランド知識に特化したキャストを区分している
スペシャリティキャストのバッジ、それぞれのブランド知識に特化したキャストを区分している
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 スペシャリティキャスト制度により、グッズ選びをスムーズに案内できたり、キャスト自身のレコメンド商品を伝えやすくなる。こうした取り組みは、ゲストの満足度を自然に高める狙いがあると井原氏は言う。

 「好きなキャラクターや作品に対する愛着を、キャストに語って、共感を求めるゲストは多い。ディズニーフラッグシップ東京には、単純に商品を買うだけでなく、キャストと話すために来店するという特別な価値がある。ディズニーのコンテンツの魅力を最大限生かすため、ホスピタリティーにも注力する」(井原氏)

 ディズニーのコンテンツを好む人は、幸福感を求めていたり、人を喜ばせるのが好きだったりと、同じような価値観を持つ人が集まりやすい。ディズニーフラッグシップ東京を通じて、顧客と店舗スタッフが強固につながり、リピートしやすくなるきっかけをつくる。

 こうした考えには、井原氏のキャスト経験も生きている。舞浜のディズニーストアで2日間ほどではあるが、キャストを務めた際、「パイレーツ・オブ・カリビアンのジャック・スパロウが好き」など、ゲストから声を掛けられることが多く、自分が答えられる話題で応対するととても会話が盛り上がった経験をしたそうだ。ディズニーという共通の話題を通して、ゲストとの信頼関係を自然に築ける強みに気付いたと振り返る。

 こうした実体験を基に、井原氏は「あくまでも売り物は商品だが、主役はキャスト」と重要性を説く。ディズニーストアのNPS(ネット・プロモーター・スコア、顧客顧客ロイヤルティーを測る数値)は、小売店の中でも最高クラスというデータもある。NPS調査に参加した顧客からのコメントにも、わざわざ店舗のスタッフ名を挙げて称賛するものがあったそうだ。

 「キャストもディズニー好きが多いので、ホスピタリティーがにじみ出ている。商品の開発秘話や自分なりの使い方など、自分の体験をプラスアルファで伝えてくれる方も多く、自分がどうやってゲストに共感できるかを考えてくれている」(井原氏)

 ディズニーフラッグシップ東京は一見、大規模なスペックと豪華な内装に目を奪われがちだ。しかし、注力したのはスタッフによる“もてなし”。新規層の流入とリピーターの獲得の両面から、新しいディズニーストアの可能性を広げていく。

(写真提供/ウォルト・ディズニー・ジャパン)

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