企業の人材採用でVISITS Technologies(東京・千代田)の「デザイン思考テスト」が注目を集めている。パナソニックのようにデザイン部門の採用試験の一環として利用する例も出てきた。NTT西日本や住友商事などは新規事業の創造や新たな取り組みに向けて多様な人材を確保する狙いがある。
デザイン思考テストとは、VISITS Technologiesが「CI技術(コンセンサスインテリジェンス技術)」と呼ぶ技術を駆使し、ウェブ上で実行するテスト。与えた課題の回答結果から、クリエイティビティーを数値化できるようにした。ビジネスの現場で新たな発想が求められているため、人材採用時の評価尺度の1つとして活用する企業が相次いでいる。
「ユーザーの課題を発見し解決することで新しい価値やビジネスの創出を支援するといった、いわば社内の“デザインコンサルタント”のような役割がクリエイティブ人材に求められている」と話すのは、パナソニック オペレーショナルエクセレンス社リクルート&キャリアクリエイトセンター主務の石黒正大氏だ。パナソニックは2021年11月、デザイン部門や広告・宣伝関連、デジタルマーケティング部門などクリエイティブ業務におけるインターン人材の選択に、初めてデザイン思考テストを活用した。美大や芸大の学生のみならず、一般大学の文理融合学部、デザインやクリエイティブの領域に興味のある学生が応募する分野で、エントリーシートやポートフォリオとして自分を表現する作品、さらにデザイン思考テストの結果を加味し、22年1月末からのインターンシップに進めるかどうかを決めた。
「こうした能力の有無はポートフォリオではつかめないため今回、デザイン思考テストを採り入れた」と同リクルート&キャリアクリエイトセンター(新卒事務系・クリエイティブ系採用担当)の太田美帆氏は言う。
パナソニックは18年からデザイン思考テストを基にした学生と社員によるワークショップを試験的に実施。結果、デザイン思考テストで高い評価を得る学生には、発想のユニークさ、着眼点の良さ、広い視野があることが分かった。気づきを得るだけでなく、自ら発信し、伝えることにも高い能力を備えていた。経営戦略などコーポレート部門の人材採用で、19年からデザイン思考テストを実施している。デザイン経営を推進している同社は、いわゆるBTC(ビジネス、テクノロジー、クリエイティブ)人材の育成を強化中。今後、デザイン思考テストをどこまで人材採用に生かすかは未定だが、ビジネスやテクノロジーを理解してクリエイティブにも強い人材を求めるならば、デザイン思考テストは1つの指標になりそうだ。
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