公益社団法人日本サインデザイン協会(東京・千代田)は2021年12月、「第55回日本サインデザイン賞(55th SDA Award)」の贈賞式を開催。大賞/経済産業大臣賞に輝いたのは、博展がデザイン設計・施工を手がけ、神奈川県横須賀市の平和中央公園に設置されたモニュメント「平和の軸(THE AXIS OF PEACE)」だ。モニュメントのリニューアルプロジェクトにはパノラマティクス(旧ライゾマティクス・アーキテクチャー)も参加した。
日本サインデザイン賞は、優れたサインデザインを社会にアピールし、サインデザインの普及や啓発を図ることを目的として1966年に創設された。サインデザインとして標識や案内板などのほか、インテリア、建築、景観デザイン、街づくり、都市計画といった幅広い分野を対象にしている。55th SDA Awardは2020年度に引き続き新型コロナウイルス禍での開催だったが、応募総数は343点と前年度(315点)を上回った。地区ごとに行ったウェブによる1次審査を経て、入賞候補51点を対象に2次審査を行い、その中から大賞1点、金賞4点、銀賞15点、銅賞31点および招待審査員賞を選んだ。
大賞を獲得した平和の軸は、日が暮れると、内部のライトが高さ1000メートルを超える光の柱を空に向けて放つ。平和中央公園は東京湾や房総半島を望み、太平洋戦争中に旧日本軍の「砲台」として使用された歴史を持つ。平和の軸は、いわば「光台」で、横須賀の夜に光の柱を加えることで、平和への思いを日常風景として表現したという。
モニュメントの上部にある金属板には無数の「円」の穴が開いている。円には古くから「無限、永遠」という意味があり、永続的な平和への願いを込めて、市民がフリーハンドで描いたいびつな円を1つひとつコンピューターで読み取り、金属板に穴を開けた。日中は降り注ぐ日光が穴から漏れ、床やベンチに無数の円となって現れ、平和を感じられる場になるという。夜は光の柱を発光する中央の軸の下部に刻まれた、無数の円と世界各国の言語で書かれた「平和」を意味する言葉が、軸から漏れる明かりで床やベンチに投影される。
災害時に周辺が停電しても内蔵の発電機で点灯でき、広域避難地域に指定されている公園に市民を誘導する仕組みも兼ね備える。一般社団法人日本商環境デザイン協会(東京・品川)と一般社団法人日本空間デザイン協会(東京・港)の「日本空間デザイン賞 2021」のエンターテイメント&クリエイティブ・アート空間で「金賞」のほか「サステナブル空間賞」も受賞した。
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