タイガー魔法瓶(大阪府門真市)が「炭酸解禁」をうたう真空断熱炭酸ボトルを2022年1月21日に発売した。同社によれば国内メーカーでは現在唯一の炭酸対応の真空断熱ボトル商品になる(22年1月21日時点)といい、市場開拓にもつながりそうだ。

タイガー魔法瓶(大阪府門真市)の「真空断熱炭酸ボトル」。サイズは500ミリリットル(オープン価格、同社の市場想定価格は税込み6000円)、800ミリリットル(同6500円)、1.2リットル(同7000円)、1.5リットル(同7500円)。カラーは左からカッパー、スチール、エメラルドの3色で展開
タイガー魔法瓶(大阪府門真市)の「真空断熱炭酸ボトル」。サイズは500ミリリットル(オープン価格、同社の市場想定価格は税込み6000円)、800ミリリットル(同6500円)、1.2リットル(同7000円)、1.5リットル(同7500円)。カラーは左からカッパー、スチール、エメラルドの3色で展開
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炭酸飲料市場拡大でボトル

 タイガー魔法瓶(大阪府門真市)が炭酸飲料に対応する、保冷専用の真空断熱炭酸ボトルを2022年1月21日に発売した。炭酸を含んだ清涼飲料水のほか、ビールやスパークリングワイン、ハイボールなどのアルコールにも対応しており、炭酸飲料を冷たいまま約6時間保持できるとうたう。炭酸飲料に対応する真空断熱ボトルは、米レボマックスの「REVOMAX」など海外製が日本でも入手可能だが、同社によれば国内メーカー製品としては、1月21日時点で現在唯一の商品となるという(22年1月21日時点)。

 同社ソリューショングループ 商品企画第1チーム副主事の高田愛子氏は「開発の背景には炭酸飲料市場の拡大がある」と話す。

 総務省の家計調査では、20年における炭酸飲料全体の1世帯当たりの消費支出額(購入額)は5567円で、10年の同支出額の3154円から1.7倍に増加。また調査会社の富士経済によれば、無糖炭酸飲料市場も拡大している。10年以降にじか飲みが定着し、20年は消費者の健康志向の高まりに加えて、新型コロナウイルス禍における在宅時間増加で割り材としての需要も伸長。市場規模は908億円と、19年比で110.1%に拡大しており、22年には1000億円を突破するとみられる。

 また「アウトドア市場の規模拡大も炭酸飲料市場拡大に影響している」と高田氏。「キャンプやゴルフなど、(密にならない)アウトドアレジャーの合間に炭酸飲料の飲用機会が増えている」(高田氏)

 今回の商品はアルコール入り炭酸飲料にも対応しており、RTD(レディー・トゥ・ドリンク、開栓してそのまま飲める飲料)のアルコール飲料市場拡大も視野に入れているようだ。高田氏によれば「コロナ禍で増加した、クラフトビールの持ち帰り用ボトル需要」(高田氏)にも応えられる商品だという。

 つまり、テレワーク時のリフレッシュ飲料としてデスクに置いておける便利さはもちろんのこと、外出先に、あるいは外出先からフレッシュな炭酸飲料を冷たいまま持ち運び、最後までおいしく楽しめるようにすることも開発意図として大きい。

テレワーク時のリフレッシュ飲料として炭酸飲料の需要が増えているが、長時間デスクに置いているとぬるくなり炭酸が抜けてしまうことが課題。タイガー魔法瓶の「真空断熱炭酸ボトル」はこれを解消するという(写真提供/タイガー魔法瓶)
テレワーク時のリフレッシュ飲料として炭酸飲料の需要が増えているが、長時間デスクに置いているとぬるくなり炭酸が抜けてしまうことが課題。タイガー魔法瓶の「真空断熱炭酸ボトル」はこれを解消するという(写真提供/タイガー魔法瓶)
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最大の課題は飛ばない栓の開発

 炭酸飲料の多くはペットボトル製品だが、持ち運ぶには課題があった。「1つは、特に暑い季節にすぐにぬるくなり、炭酸も抜けやすく、おいしさが損なわれてしまうこと。もう1つは、ペットボトルの表面が結露するとかばんの中の他の荷物がぬれてしまうので持ち運びにくいこと」(高田氏)。また、市販のペットボトルはリサイクル率が20年度で88.5%とされているが、ペットボトルからペットボトルを作る「ボトルtoボトル(水平リサイクル)」は、リサイクルの中でのシェア30%(86万3000トン)にとどまっており(※1)、環境配慮の観点からも課題があると指摘する。

※1:PETボトルリサイクル推進協議会「PETボトルリサイクル年次報告書2021」

 だからといって同社の既存商品では対応できなかった。「従来の真空断熱ボトルは炭酸飲料を入れて持ち運ぶことを推奨していなかった。炭酸ガスによりボトル内の圧力が上がると、キャップや蓋などが破裂する恐れがあるという、構造上の安全性の観点からだ」(高田氏)

 そこで真空断熱ボトルに炭酸が入れられるように、新たな栓「Bubble Logic(バブルロジック)」を開発。これは開栓時に炭酸ガスが抜ける炭酸ガス抜き機構と、ボトル内部の圧力が高まったときに自動でガスが抜ける安全弁を備えた炭酸対応栓で、「開発には約2年かかった」(高田氏)という。この構造のおかげでキャップが飛んだり、中身が吹き出たりすることを防ぎ、安全に使えるようにした。

開栓時に炭酸ガスが抜ける炭酸ガス抜き機構と、ボトルの内圧が高まると自動でガスが抜ける安全弁を備えた炭酸対応栓「Bubble Logic(バブルロジック)」を独自に開発(写真提供/タイガー魔法瓶)
開栓時に炭酸ガスが抜ける炭酸ガス抜き機構と、ボトルの内圧が高まると自動でガスが抜ける安全弁を備えた炭酸対応栓「Bubble Logic(バブルロジック)」を独自に開発(写真提供/タイガー魔法瓶)
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 商品化する上では、安全に持ち運べるだけでなく、時間がたっても炭酸をおいしく飲めるよう維持することも重要だ。これに役立ったのが、同社が従来製品でも採用している「スーパークリーンPlus」加工という独自の電解研磨技術。「本来ステンレスの表面には凹凸があり、これに炭酸水がぶつかることで気化が早まる。だが、環境負荷の高いフッ素コートを使わずに同等レベルの防染をし、より滑らかで光沢のある鏡面加工を施すスーパークリーンPlus加工をすると、汚れや臭いがつきにくくなるだけでなく、凹凸がない分、炭酸が気化しにくくなることが分かった。冷たさを維持すること、気化を防ぐことで、長時間にわたり炭酸のおいしさを維持できるようになった」(高田氏)

 また衛生面にも配慮し、飲み口を含む栓とストラップには抗菌加工を施した。飲み口は、抗菌製品技術協議会が制定したSIAAマークの認証を受けているという。なお栓とストラップは分解して洗えるようになっている。

飲み口は抗菌製品技術協議会が制定したSIAAマークの認証も受けており、安心して使える(写真提供/タイガー魔法瓶)
飲み口は抗菌製品技術協議会が制定したSIAAマークの認証も受けており、安心して使える(写真提供/タイガー魔法瓶)
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新たな「炭酸ボトル市場」を開拓へ

 高田氏によれば「炭酸水を入れて栓を開けずに置いておいた場合、保冷が維持できる6時間が経過した時点では冷たく炭酸もキープされている。それ以降は徐々に保冷性能が落ちてくるため炭酸も弱くなっていく」とのこと。

 実際にノンアルコールビールテイスト飲料を入れて2時間置き、料理用のデジタル温度計で測ったところ、1.2度上がっただけで、味わいは変わらなかった。また、甘みのある炭酸飲料を入れて5時間置いても、温度は1.6度上がっただけで、やはり炭酸も抜けを感じず味も変わらなかった。

ノンアルコールビールテイスト飲料を入れて(左)温度を測り(中央)、暖房の効いた屋内に2時間、開けずに置いてから温度を測ると、1.2度上がっているだけだった(右)
ノンアルコールビールテイスト飲料を入れて(左)温度を測り(中央)、暖房の効いた屋内に2時間、開けずに置いてから温度を測ると、1.2度上がっているだけだった(右)
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ペットボトルで蓋をした状態でも、炭酸飲料を常温で置いておけばぬるくなり炭酸がおいしく味わいづらくなるが、真空断熱炭酸ボトルに入れておくと、栓を開けない状態であれば温度が上がりづらく炭酸も抜けにくく、味をキープできそうだ
ペットボトルで蓋をした状態でも、炭酸飲料を常温で置いておけばぬるくなり炭酸がおいしく味わいづらくなるが、真空断熱炭酸ボトルに入れておくと、栓を開けない状態であれば温度が上がりづらく炭酸も抜けにくく、味をキープできそうだ
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 真空断熱炭酸ボトルのサイズは4種類で、500ミリリットル(オープン価格、同社の市場想定価格は税込み6000円)、800ミリリットル(同6500円)、1.2リットル(同7000円)、1.5リットル(同7500円)。500ミリリットルと800ミリリットルタイプはデスクワークやアウトドアでの個人利用に向いており、1.2リットル、1.5リットルは容量が大きいのでビールやハイボールなどのアルコール類を入れてキャンプやピクニックに持ち出したり、晩酌のときにジャグのように使ったりするのにも便利だ。

 カラーはスタンダードな「スチール(黒色)」、ビールのタンクをイメージしたという「カッパー(銅色)」、炭酸水の容器をイメージしたという「エメラルド(緑色)」の3色展開となる。

1.2リットル、1.5リットルはビールやハイボールなどのアルコール類を入れてキャンプやピクニックに持っていくことも想定している(写真提供/タイガー魔法瓶)
1.2リットル、1.5リットルはビールやハイボールなどのアルコール類を入れてキャンプやピクニックに持っていくことも想定している(写真提供/タイガー魔法瓶)
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 真空断熱炭酸ボトルは炭酸以外の冷たい飲み物を入れて使ってもよい。ただしやけど防止のため、温かい飲み物を入れての使用は推奨していない。

 機構的には、今回開発したバブルロジックだけを従来品に付け替えられるようにもできるのではないかと考えられるが、現在のところそうした予定はないそうだ。

 22年度の販売目標は、500ミリリットルサイズが4万4100本、800ミリリットルが4万1000本、1.2リットルが9500本、1.5リットルが5400本で、いずれも国内のみの想定だ。販路は全国の家電量販店、GMS(総合スーパー)、雑貨専門店、一部スポーツ専門店、そして自社サイトを含む電子商取引(EC)サイトで、自社のECサイトでは本体と同時にパッキンなども販売する。ボトルそのものの耐久年数は明示していないが、パッキンは年に1回はメンテナンス(買い替え)を推奨しており、使用頻度によってパッキンの汚れが気になる人もいるため、同時購入も見込めるだろう。

 同社ソリューショングループ 広報宣伝チームの玉矢賀子氏によれば、23年2月3日に創業100周年を迎える同社は、20年度より「未来を水筒につめて。」をメッセージにサステナブルな製品の製造・販売を行っている。同社の調査によれば、ステンレスボトル市場において、購入への影響で大きいのは品質の良さだが、サステナブルであることは特にZ世代にとって重要な訴求ポイントになるという。ペットボトル商品もさることながら、ビールやハイボールなどのアルミ缶商品はこれまで持ち運んで飲むことがあまり想定されていなかった。今回の商品が新たな「炭酸ボトル市場」を開拓していくことが期待される。

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