アサヒビールは2022年1月6日、同社の主力ブランドである「アサヒスーパードライ」の全面リニューアルをはじめとする、22年の事業方針を発表した。2月15日には「アサヒ生ビール黒生」をラインアップに追加するほか、微アル・ノンアル飲料にも注力していくという。

1987年3月の発売の「アサヒスーパードライ」は36年目で初の全面リニューアル
1987年3月の発売の「アサヒスーパードライ」は36年目で初の全面リニューアル

 国内のビール類市場は長期縮小傾向にあるが、インテージの調査(2020年1月~21年11月)によれば、20年10月の酒税法改正によるビール減税をきっかけに、ビールの購入者数は増加に転じている。ビール大手4社(キリン、アサヒ、サントリー、サッポロ)は、発泡酒、新ジャンル(第3のビール)を含めたビール類の税率が一本化される26年に向けてこの傾向が加速するとみて、ビールの販売に力を入れている。

 22年1月6日には、4社がそろって事業戦略発表会を開催。いずれも、コロナ禍で続く“家飲み”需要を見込み、高付加価値商品や健康志向商品など多様なラインアップで商品力を強化する方針を示した。

 そんななか、主力ブランド「アサヒスーパードライ」(以下、スーパードライ)の全面リニューアルをはじめとする思い切った策を打ち出したのがアサヒビールだ。

 アサヒビールの調査では、「気持ちをリフレッシュしたいとき」、および「リラックスしたいとき」に飲むアルコール類としてビールを挙げた人が、それぞれ約69%、約63%と、2位の発泡酒・新ジャンル(約36%、約33%)の2倍近くもいることが分かったという。これを受け、アサヒビールでは主力ブランドの価値向上を図る。これから拡大していくであろうビール需要を追い風にするのが、22年のアサヒビールの事業方針のひとつだ。

ビールの購入者数は、2020年9月と比較すると20年11月時点で約11%増となっている
ビールの購入者数は、2020年9月と比較すると20年11月時点で約11%増となっている

 スーパードライの全面リニューアルは、1987年3月の発売以来初めてのこと。アサヒビールではスーパードライの中身(味)およびパッケージを一新するのに加えて、同社史上最大規模の広告費を投入。店頭などでの飲用機会も積極的に創出し、“新スーパードライ”の話題喚起と飲用喚起を図るという。

 全消費財の販売規模ランキングで1位になるほどのブランド力を持っているスーパードライが、なぜ味を変えるのか。その理由は、スーパードライ最大の訴求ポイントである「辛口」にあった。アサヒビール専務の松山一雄マーケティング本部長は「アサヒビールでは、飲み始めの『飲みごたえ』とその後に来る『キレ』の落差を『辛口』と定義していた。しかし、一般の消費者には『辛口』という言葉が『苦味』と結び付いてしまっていた」と話す。

 そこで“新スーパードライ”では、「飲みごたえ」を向上させ、「キレ」の良さを維持するために、製法だけでなく処方についても変更。「辛口から新・辛口」を目指して、飲み始めのビールらしい香りを付与しつつ、飲んだ瞬間にそれがさっと消えるキレの良さを生むことに成功したという。発売前のリサーチでは「おいしさ」「飲みごたえ」「キレの良さ」で現行のスーパードライよりも高い評価を得たと、松山本部長は胸を張る。

“新スーパードライ”では「おいしさ」「飲みごたえ」「キレの良さ」ですべて現行品より高い評価を得た
“新スーパードライ”では「おいしさ」「飲みごたえ」「キレの良さ」ですべて現行品より高い評価を得た

 また21年4月に発売した「アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶」(以下、生ジョッキ缶)では、缶胴資材の改善により開栓後、泡が表面を覆うまでにかかる時間を約3.0秒から約1.6秒に短縮した。生ジョッキ缶は右肩下がりだったスーパードライの購入者数をV字回復させた立役者で、スーパードライの購入者数を400万人以上も増やしたヒット商品だ。そのため品薄が続き、22年1月現在も数量限定販売となっているが、生産体制を強化することで年間製造可能数量を21年の5倍に当たる約2000万箱(1箱は340ml×24本。大びん633ml×20本で換算すると約1290万箱)まで増やすという。生ジョッキ缶も中身、パッケージをリニューアルした上で22年3月29日に発売する予定だ。

生ジョッキ缶のデザインも「スーパードライ」のフルリニューアルに合わせて変更。裏面には「きれいな泡の楽しみ方」を記載した
生ジョッキ缶のデザインも「スーパードライ」のフルリニューアルに合わせて変更。裏面には「きれいな泡の楽しみ方」を記載した

 一方、21年9月発売の「アサヒ生ビール」については、22年2月15日に「アサヒ生ビール黒生」をラインアップに追加。アサヒ生ビールとの「ハーフ&ハーフ」といった飲み方を提案していく。アサヒビールでは、アサヒ生ビールブランドをスーパードライに次ぐ第2の柱としたい考えだ。

 アサヒビールの塩澤賢一社長は「21年は生ジョッキ缶やアサヒ生ビールを発売したことで、缶ビールの販売数量は前年比111%となり、9年ぶりに前年を超えた」と話す。

 また21年は、微アルコールの「BEERY(ビアリー)」「HIBALLY(ハイボリー)」を発売し、アサヒビールにおけるアルコールテイスト飲料の売上金額は20年比で126%となった。

 「21年は“スマートドリンキング”(アサヒビールが掲げる、酒を飲む人も飲まない人も体質や気分、シーンに合わせて適切なドリンクを選べる環境を推進する運動)の考え方に基づき、微アルコール商品を発売。SNSを活用して情報を発信し、飲み方の多様性を提案してきた」と塩澤社長。アサヒビールでは電通デジタルと共同で合弁会社スマドリを22年1月5日に設立している。新会社では、4000万人ほどいるといわれる「酒を飲まない/飲めない」層に焦点を当て、デジタルを中心としたコミュニケーション活動やデータマーケティングを展開していくという。

(写真提供/アサヒビール)

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