レジャー業界にもサブスクが登場する。ORIGRESS PARKS(東京・品川)が立ち上げる「レジャパス!」だ(当初2022年1月12日開始予定だったが、コロナ禍の影響などで延期中)。水族館、遊園地、美術館など、ジャンルが異なるさまざまなレジャー施設を月額1980円(税別)から利用できる。

「レジャパス!」を運営するORIGRESS PARKS社長の吉武優氏
「レジャパス!」を運営するORIGRESS PARKS社長の吉武優氏
[画像のクリックで拡大表示]

 「レジャパス!」は、電通出身の吉武優氏が2021年4月に設立したベンチャー企業、ORIGRESS PARKSが手掛けるサービスだ。電通時代にテーマパークのマーケティングやカスタマイズを手がけ、テーマパークを内側からも見て実情を知っていた吉武氏が、コロナ禍で経営に苦しむレジャー施設を後方支援するサービスができないかと考え、着想した。

「レジャパス!」はアプリで提供されるサブスクサービス。月額利用料を支払うと、その金額に応じてレジャー施設が使い放題になる
「レジャパス!」はアプリで提供されるサブスクサービス。月額利用料を支払うと、その金額に応じてレジャー施設が使い放題になる
[画像のクリックで拡大表示]

 レジャパス!は、毎月あるいは1年ごとに一定額を支払うと、テーマパークや水族館、動物園、美術館、温泉・サウナ、キャンプ場、スキー場といった全国の提携施設を利用できるというサービス。同社によると、「レジャーのサブスクリプション型サービスとしては日本初」となる。

■ レジャパス!プラン表
■ レジャパス!プラン表
[画像のクリックで拡大表示]

 料金プランは、利用する施設の種類や曜日によって3つを用意している。いずれも「月額固定で払ってもユーザーが負担に感じない金額」を吉武氏が設定した。確かに一番安いライトプランは「週末や祝日は混むので嫌」というユーザーにとって手頃な価格といえるだろう。家族で契約する場合を想定して、家族会員の料金も設けている。また、一度も利用できなかった月は、翌月に「レジャコイン」を発行。レジャコインはアンケートへの回答やイベントへの参加、購入によっても貯められるポイントのようなもので、同一施設を規定回数を超えて利用する場合や、家族や友人など自分以外の人を招待する場合に利用できる。

サンシャイン水族館や東京タワーが加盟

 加盟施設は、東京にあるサンシャイン水族館や東京タワー、横浜にある三渓園やランドマークタワー、千葉県の大江戸温泉やカンドゥーなど、全国80以上。22年3月までには100施設以上を目指す。21年12月8日に本サービスを発表した直後から、ユーザーだけでなく、施設からの新規加盟の問い合わせも相次いでおり、「返事が追いつかないほど」だという。

 会社の設立からわずか8カ月で立ち上げた企画に対し、どうやってこれだけの賛同を得たのか。吉武氏は、「関東圏のレジャー施設の一般問い合わせフォームからメールしたり、代表番号に電話したりして説明の機会をもらう営業から入った」と言う。当初は全くアポが取れない中、唯一、連絡をくれたのが、千葉県成田市にある成田山書道美術館だった。

 「美術館を訪ねてみると、館長が、2000年前に中国で書かれた貴重な書から、現在の漢字が作られるプロセスを解説してくれるなど、とても面白かった。この魅力がしっかりアピールできていないのはもったいないと感じ、レジャパス!でアピールしたいと伝えた。加盟施設の第1号に決まった時はとてもうれしくて、恩を必ず返したいと思った」と吉武氏。

 その後、賛同する施設も増える中、転機となったのがサンシャイン水族館の加盟だ。同水族館は東京・池袋という都心にあって、土日はもちろん、平日も学生や会社帰りの社会人などで賑わう。だが、コロナ禍の外出自粛要請などで経営はダメージを受けた。

 水族館や動物園は、生物の飼育や温度管理、浄水、掃除など、来場者がいなくても、メンテナンスを続けなくてはならない。施設を閉じたところで、かかる費用は大きく、「コロナ禍では非常につらい日々のはず」と吉武氏は推察する。

 レジャパス!にとっても、「同水族館が加盟してくれたことはサービスを進める上でとても大きかった」と吉武氏。全国的な知名度が高い同水族館が加盟したことは、他のレジャー施設にもインパクトがあったようで、加盟施設開拓が加速したという。

行動様式の変化で施設は共闘が必要に

 日本政府が、21年11月19日に飲食やイベントに関連する行動制限の緩和を決定し、全国で順次適用されて以来、人々の生活は少しずつ日常を取り戻した。しかし、インバウンド客はいまだ見込めず、人々の外出に対する感覚も平時に戻っていない。新たな変異株の登場に予断を許さない状況も続く。加えて、そもそも消費者の価値観や行動様式が大きく変わったと吉武氏は指摘する。

 「例えば、かつてはわざわざ最寄りのレンタルビデオショップに行って、見たい映画のDVDを借りていた。だが、今は誰もがNetflixのようなサブスクサービスと契約し、そこに自宅のテレビやスマホでアクセスして、メニューの中から見たいものを選んで見るのが当たり前になった。そうなると、ユーザーにとっては、Netflixにない作品は存在しないのと同じこと。プラットフォーム内の選択肢で十分ニーズを満たせるなら、その中にないものをわざわざレンタルビデオショップに借りに行くことはしなくなる」(吉武氏)

 「レジャー施設も基本は同じ」と吉武氏は言う。「これまではそれぞれの施設がそれぞれの手法で宣伝していたが、選択肢が無数にある状況ではむしろ消費者になかなか選んでもらえない。だからこそ、施設にはレジャパス!というプラットホームに加盟してもらい、消費者にはレジャパス!で完結する環境、レジャパス!の中から行く場所を選択してもらう環境をつくる」(吉武氏)

スキー場やスケートリンクなど季節限定の施設も加盟している
スキー場やスケートリンクなど季節限定の施設も加盟している
[画像のクリックで拡大表示]

 そのため、レジャパス!では、加盟施設の魅力を引き出すようなプロモーションや告知を積極的に展開する。「レジャー施設は、入場料や飲食、物販の収入で、人件費などの施設維持費を捻出する薄利多売モデル。宣伝も専門のスタッフはおらず、運営スタッフが自らSNSを立ち上げて投稿しているのが実態だ。それを各施設が個別にやっているため、コロナ禍で売り上げが落ちると、プロモーション費用が真っ先に切られる。こうした事例をこれまでたくさん見てきたし、それは今も続いている」と吉武氏。自社のノウハウで、各施設の認知向上と魅力の訴求をサポートしたい考えだ。

 また、サブスクモデルだからこそ、施設の来場促進に貢献できると見る。例えば、東京タワーのような、日本人なら誰もが知っている施設の場合、「知ってはいるけど、行ったことがない、いつでも行けるからこそ行く機会がなかったという人は結構いる。そういう場所こそ、レジャパス!には最適」(吉武氏)。目的の施設があって入会した人も、定額制のサブスクだからこそ、別の施設にもこれを機会に行ってみようという気になるからだ。

 あるいは、遊園地や動物園に行く予定の日に雨が降ってしまったら、急きょ加盟している屋内型のレジャー施設に行き先を変更するといったことも可能になる。これも個別に入場料を払わない、サブスクならではの強みだろう。

キャンプ場も平日は集客に苦労

 コロナ禍で苦戦するレジャー施設のほか、キャンプ場やグランピング施設もレジャパス!には加盟している。吉武氏によると、「(サービス企画時、)キャンプ場やグランピング施設は特に加盟施設として想定していなかったが、それら施設の運営企業から対象になるか問い合わせが来た」とのこと。コロナ禍で密を避け、開放感を求める人が増加したことからブームにもなったアウトドア施設は、レジャパス!に加盟しなくても十分集客できるのではないかと思うのだが、どんなニーズがあるのか。

 「人気のキャンプ場でも、平日は来場者が少なく、休んでいるというところもある。これでは固定費だけが出ていき、機会損失だ。それなら、その時間をまとめて法人などに破格値で売ればいいのではと以前、考えたことがある。それがレジャパス!の発想にも生かされている。来場客が来ない日でも固定費が変わらないなら、少しでも集客して、来場客には施設内で飲食やおみやげにお金を使ってもらいたい」(吉武氏)

 今後は、新型コロナウイルスの感染状況なども考慮しつつ、学生などの若年層を中心に、レジャパス!の利用を促していく。「若者層は消費意欲が社会人よりも高く、例えばコンサートなどでもグッズの購入にお金をかける。レジャーに関する消費も同様で、“ハレ”を求める感覚が強い」(吉武氏)

 若者層であれば、友達とスケジュールを調整し合って、平日にレジャー施設を利用することも可能だ。行動力があり、消費意欲も高い若者はレジャー施設の救世主となり得ると期待する。特に、月額2980円(税別)で平日も土日祝日も利用できるスタンダードプランを主力商品としていきたいそうだ。

 さらに、加盟するレジャー施設の拡大にも注力する。現在は関東圏のレジャー施設が目立つが、「関西圏のレジャー施設とも話を進めている。その後は名古屋、沖縄、北海道、福岡を中心に全国に加盟施設を増やしたい。その先として、韓国や台湾、グアムのレジャー施設も視野に入れている。台湾などからは弾丸ツアーで来日する観光客が多く、そうしたインバウンドに特化したサービスも検討中だ」(吉武氏)

 コロナ禍で外出機会が減り、レジャー施設も苦戦が続く。だが、「いずれコロナが収束し、マスクを外していい社会に戻ったとき、コロナのせいでレジャーが衰退したという歴史にはしたくない」と吉武氏。しかも今は、レジャー施設にとって、定額制動画配信サービスのような家で楽しめるエンターテインメントとも可処分所得、可処分時間を奪い合わなければいけない時代だ。「これからは施設同士で競争するのではなく共闘すること。外に出て、新しいものに触れた経験は人を成長させ、人生を豊かにする。そんなレジャーの魅力を伝えていきたい」(吉武氏)。アフターコロナの時代を見据え、吉武氏の目標は高い。

(写真提供/ORIGRESS PARKS)