ホームセンター国内最大手のカインズ(埼玉県本庄市)は2021年12月22日、生活雑貨の東急ハンズ(東京・新宿)の全株式(1440万株)を取得すると発表した。取得日は22年3月末、取得額は非公開。地方都市に強いカインズと、都市部に店舗を持つ東急ハンズの協業で相互補完を見込んでいる。

ホームセンター最大手のカインズが、東急不動産ホールディングスの東急ハンズを買収。赤字ブランドを傘下に加えるメリットとは?
ホームセンター最大手のカインズが、東急不動産ホールディングスの東急ハンズを買収。赤字ブランドを傘下に加えるメリットとは?
[画像のクリックで拡大表示]

 国内28都道府県に227店舗を展開するカインズは、ショッピングセンターのベイシア(前橋市)や作業服大手のワークマン(東京・台東)などを傘下に抱えるベイシアグループの主力企業だ。2020年度の売上高は約4845億円で、ベイシアグループの売上高の44.7%を占めている。

 一方の東急ハンズは、東急不動産ホールディングス(HD)を親会社に持つ生活雑貨のブランドで、東京・渋谷や新宿など、都市部を中心に86店舗(FC、海外を含む)を展開している。東急ハンズを傘下に加えることで、出遅れていた都市部での店舗展開を補完する狙いがカインズにはある。

 カインズの高家正行社長は「これまでカインズは、単純な規模拡大は意味がないと考え、M&A(合併・買収)を行ってこなかった。今回は買収というより、新たなDIY(Do It Yourself、日曜大工)文化を共創、発信するためのパートナーとして東急ハンズを迎え入れた」と話す。

カインズの売り上げは創業以来右肩上がり。コロナ禍に見舞われた2020年でも前年比110%を記録した
カインズの売り上げは創業以来右肩上がり。コロナ禍に見舞われた2020年でも前年比110%を記録した
[画像のクリックで拡大表示]

「東急ハンズ」の名称もいずれ変更

 東急ハンズは1976年に神奈川県藤沢市の第1号店を出店して以来、DIY用品や文房具、パーティー雑貨などを手掛け、若者文化の発信地として東急ブランドの価値向上に貢献してきた。同社のTwitterのフォロワーは19万人超、Instagramにも23万人を超えるフォロワーがいる(21年12月時点)。

 しかし近年は業績不振が続いており、新型コロナウイルス感染症が拡大した21年3月期の連結売上高は前年同期比35%減の631億円、営業損益は44億円の赤字に転落。21年10月末には旗艦店の一つだった東京・池袋店が閉店に追い込まれた。東急不動産HDは「グループの経営資源では再建は難しい」と判断し、野村證券をファイナンシャルアドバイザーに、入札による売却に踏み切ったという。

 「東急ハンズ」の名称は売却後もしばらくは使用するが、いずれ変更される見込み。高家社長によれば「東急不動産HDと当面、維持することで合意しているが、適切な時期に改める予定」とのことだ。

 カインズと東急ハンズ、両社に共通する強みはDIY分野だ。高塚社長は「東急ハンズの創業(1976年)はカインズ(89年創業)よりも早い。同社は当時から『手の復権』をテーマに独自性高い店舗を展開しており、その店舗空間づくり、目利きは一朝一夕にできるものではない」と東急ハンズを高く評価する。

 「SPA(製造小売り)としてカインズが築き上げてきた商品開発力や、約224万人(21年8月時点)のユーザーがいる専用アプリ、月間PV数445万(21年6月時点)を誇るオウンドメディア『となりのカインズさん』といったデジタル基盤を最大限に活用し、“手”を通じて新しい社会文化を創造してきた東急ハンズの魅力を戦略的に磨き上げていく」と高家社長。両社の物流拠点を合わせると20拠点、仕入総額は約3500億円に上るとのことだ。

 高家社長は「日曜大工だけがDIYではない。家事も料理もDIY。暮らしを楽しくするという点では、東急ハンズも近いものを目指している」と話す。カインズでは「くらしのDIY」を訴求する同社の文化と、「趣味のDIY」を訴求する東急ハンズの文化を掛け合わせることで、一般人には「ハードルが高い」というイメージのあるDIYを身近なものにし、日本発のDIY文化を世界に向けて発信することを目指すという。

東急ハンズ買収の経緯と狙いについて説明するカインズの高家正行社長
東急ハンズ買収の経緯と狙いについて説明するカインズの高家正行社長
[画像のクリックで拡大表示]