フリーマーケットアプリを展開するメルカリと、プロ野球パ・リーグ6球団の共同出資会社パシフィックリーグマーケティング(東京・中央)は2021年12月16日、共同でNFT(非代替性トークン)事業に参入すると発表した。スポーツリーグの試合映像を利用したNFT事業は日本初という。
新事業「パ・リーグ Exciting Moments β(エキサイティング・モーメンツ・ベータ)」は、パ・リーグ6球団の試合映像から名場面などの動画コンテンツを数量限定で販売するサービスで、2021年中の立ち上げを予定している。
通常の試合の公式映像はダウンロードが禁止されているが、新サービスを利用して購入した動画コンテンツは専用サイトからダウンロードすることで、自分だけのコレクションとして保有できる。動画コンテンツはNFT形式なので複製はできないものの、サービス内の機能を利用すればSNS(交流サイト)などで共有することも可能だ。
第1弾として販売する「Series 1-'21 Season Best Players(シリーズ 1-'21 シーズン・ベスト・プレーヤーズ)」では、21年に活躍が目立った選手の動画を中心に18コンテンツを用意した。動画コンテンツには、シーンや選手に応じて星(レアリティー)が付いており、星4つは20本、星3つは50本、星2つは100本の数量限定となっている。価格は2000~2万5000円(税込み、以下同)で、収益の一部は選手にも還元するという。
星の数は動画コンテンツを購入すると累積していく。メルカリ執行役員兼メルコイン取締役の伏見慎剛氏は「保有する星の数に応じて限定の特典コンテンツやサービスを提供することも考えている」と話した。
コンテンツ購入時の決済方法はクレジットカードのみ。また当面の間コンテンツの再販機能は搭載されず、購入のみになる。22年以降はマネーロンダリング(資金洗浄)対策を強化した上で再販機能を提供したり、ブロックチェーン(分散型台帳)技術を利用したコンテンツ管理機能を追加したりしていくとのこと。ブロックチェーンには米ダッパーラボの「Flow(フロー)」を採用する予定だ。
パシフィックリーグマーケティングの根岸友喜CEO(最高執行責任者)によれば、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で無観客試合などが増えた結果、20年、21年は球場を訪れるファンが激減。19年までリーグ全体で1100万人以上あった観客動員数が21年は330万人にとどまったとのこと。「直接的なコミュニケーションの機会が失われたことで、エンゲージメントの低下、ファンの減少などが中長期的な課題になっていた」と根岸CEOは言う。
一方で、公式動画配信サービス「パーソル パ・リーグTV」など、21年はインターネットでの視聴者数が19年と比べて3倍以上に増えた。NFT事業への参入には、パシフィックリーグマーケティングが持つ動画コンテンツと、メルカリが持つマーケットプレイスの知見・技術力とを融合し、新たなスポーツビジネス、ファンコミュニケーションの形を構築していく狙いがある。
(写真提供/メルカリ、パシフィックリーグマーケティング)