アッシュコンセプト(東京・台東)は同社主催のデザインコンペティション「h concept DESIGN COMPETITION 2020」の最優秀賞1点と優秀賞2点を製品化した。2020年7~8月に「ひとめ惚(ぼ)れ」というテーマで日常品のデザインのアイデアを募集し、362点のうちから選出。同社オリジナルブランド「+d(プラスディー)」で21年11月4日に発売した。

「h concept DESIGN COMPETITION 2020」で最優秀賞を受賞した「Gulliver Frame(ガリバーフレーム)」
「h concept DESIGN COMPETITION 2020」で最優秀賞を受賞した「Gulliver Frame(ガリバーフレーム)」

 アッシュコンセプトが主催するデザインコンペティション「h concept DESIGN COMPETITION 2020」の最優秀賞は、熊谷英之氏(3MON)の「Gulliver Frame(ガリバーフレーム)」。縦横約12.5×7センチメートルのフレームにフレネルレンズと呼ぶレンズをはめ込んでいる。昆虫や鉱石、玩具などのさまざまなものの前に「額縁」のように置けば、レンズで小さなものが大きくなり、フレームで飾ったように見える。対象物の新しい魅力やストーリーが発見できるようなデザインにしたという。フレームのカラーはブラウン、クリア、グレーの3色。アッシュコンセプトの直営店「KONCENT(コンセント)」のBunkamura 渋谷店では11月の自社製品中、売上金額で2位になった(他社からの仕入れ商品を除く約80アイテムが対象で、フレームの3カラーを合算)。

 優秀賞は、中島保久氏と中島麻友子氏(DOOGS DESIGN[ドーグスデザイン])の「Beaver Dumbbell(ビーバーダンベル)」と、八田興氏と脇坂政高氏(wah)の「Kinome(キノメ)」。

 Beaver Dumbbellは、持ち手にビーバーがかじったような風合いを採用した木のダンベル。素材には北海道旭川市のタモ材を使用し、持ち手の風合いも同地域の木彫職人が一刀一刀手彫りで入れている。

 Kinomeは、ペーパーフィルターが不要な繰り返し使えるセラミック製のコーヒーフィルター。多孔質構造で雑味を除去し、まろやかな味わいを実現したという。植木鉢のようなフィルターの底に小さな「芽」が生えていて、その芽に水をやるようにお湯を注いで使用する。コロナ禍で「おうち時間」が注目されていることもあり、発売後の約1カ月で950個以上を売り上げる人気商品になった。

コロナ禍だから生まれたデザイン

 同コンペのアイデアを募集したのはコロナ禍だったため、応募作品のアイデアが生まれた背景にも、新型コロナウイルス感染症拡大による新しい生活様式が少なからず関わっているようだ。

 例えば熊谷氏のGulliver Frameのアイデアの基は、当時3歳の息子の「虫眼鏡」だった。「コロナ禍で在宅ワークになり、息子と一緒に外に出る機会が増えた。虫眼鏡で一緒に遊んでいるときに、『レンズを使って“ひとめ惚れ”を探せるのではないか』と気づいた」(熊谷氏)

 レンズには、小さいものを大きく見せるなどの面白さがある。その面白さを最大限引き出す方法を考えているときに、「小さいものを大きく飾る」という言葉を思いついた。そこから「Gulliver Frame」という商品名が生まれた。

 商品を作るうえで大切にした点が、レンズとフレーム、そしてレンズと外側の世界をいかに表現するかということだった。それぞれを分断するのではなく、グラデーションのような緩やかな連続性を生みたかったという。例えばGulliver Frameには、「フレームの中のラインがほぼ見えない」という特徴がある。同商品のフレームには2センチほどの幅(奥行き)があり、普通のレンズをはめ込んだ場合、レンズ越しに中側のフレームラインが見えてしまう。しかし同商品では、フレネルレンズの「中心から外側に行くにつれて見え方(反射)が変わる」性質を利用し、中側のフレームラインが見えないようにした。そうすることで、フレームと現実世界の間に緩やかなつながりを生み出した。

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