元AKB48の“こじはる”こと小嶋陽菜氏がプロデュースするアパレルD2Cブランド「Her lip to」が好調だ。2021年で4年目を迎える同ブランドの売り上げは、立ち上げ時の約10倍に成長した。その秘訣は何なのか。日本マーケティング学会が主催したイベントで、クー・マーケティング・カンパニー代表取締役の音部大輔氏が小嶋氏と対談。その秘訣に迫った。

クー・マーケティング・カンパニー代表取締役の音部大輔氏と小嶋陽菜氏が対談。小嶋氏が手にしているのは音部氏の著書『The Art of Marketing マーケティングの技法』(宣伝会議、2021年)
クー・マーケティング・カンパニー代表取締役の音部大輔氏と小嶋陽菜氏が対談。小嶋氏が手にしているのは音部氏の著書『The Art of Marketing マーケティングの技法』(宣伝会議、2021年)

音部大輔氏(以下、音部) 早速ですが、小嶋さんが手掛ける「Her lip to」とはどのようなブランドなのか教えてください。

小嶋陽菜氏(以下、小嶋) Her lip toはアパレルブランドです。AKB48の初期メンバーとして12年間活動し、2017年に卒業した後、何をしようか考えたとき、新しいことにチャレンジしたいと思ったんです。今まではメディアに呼んでいただく側でしたが、今度はプラットフォームを作り、自分がメディアとなって発信し、ファンの方たちと好きなものを共有したいという思いから洋服を作り始めました。

音部 どんな洋服を取り扱っているのでしょうか?

小嶋 ワンピースが中心です。総レースのロングドレスやクリスマスにぴったりなベロア生地のドレス、フェミニンなフラワー柄のドレスなどがあります。

 私はもともと、旅行先での写真をInstagramにアップしていたのですが、中でもリゾート地で着用していた洋服にインサイトが集まっていました。そこで、リゾート服を作ろうと思い立ったんです。

 お客様に特に人気なのはワンピース。しかし、コロナ禍ではリゾート地に行きづらいため、皆さん、ホテルのアフタヌーンティーでこのドレスを着てくださっています。日常でも、リゾート地に行った気分になれたり、特別な日になったりするようなドレスが人気ですね。

Her lip toではリゾートでも着られるようなワンピースが人気
Her lip toではリゾートでも着られるようなワンピースが人気

音部 なるほど。日常からちょっと離れた服が人気なんですね。それらのユーザーは何を求めているのでしょう?

小嶋 リゾートやカフェで映えるような、他とはちょっと違ったデザインなど、こだわりを感じるものを求めていると思います。

 一番多く寄せられるのは、「着ただけでスタイルアップする」という声です。私はアイドルという“見られる”仕事をする中で、どの部分をどうしたらスタイルがよく見えるかを常に考えてきました。長年の経験で得た知識をワンピースに落とし込み、着ただけで美しく見えるように作っています。

 実際に「写真で盛れる」「彼氏に褒められた」といった声、身近な人だけでなく、「美容師さんに褒められた」「コスメを買いに行ったら店員さんに褒められた」というコメントもSNSでよく見かけます。

音部 褒められる体験につながりやすいのですね。

小嶋 はい。日常で褒められる機会ってあまりありませんよね。今は自己肯定感の低い方が多い世の中だと思うので、褒められることでちょっとした成功体験が積み上がり、自分に自信が持てるようになるのだと思います。

音部 Her lip toは小嶋さんがプロデュースしているブランドですが、アイドルとしての“こじはる”と一人の人間としての“小嶋陽菜”は同じではなく、微妙に分けられると思います。顧客にとって“こじはる”になれそうなことが重要なのか、小嶋陽菜の世界観を支持しているのか、どちらなんでしょう。

小嶋 うーん、難しいですね。Her lip toはSNSで発信しているブランドなので、アイドルとしての“こじはる”は、入り口として大きな影響があると思います。しかし、今はそれだけにとどまらないものづくりも意識していますから、洋服やビューティーアイテムなど、商品そのものが良いといってリピートしてくださる方が多いです。

音部 それが、さっきおっしゃっていた褒められる体験ともつながるんですよね。

小嶋 そうですね。自分が「いい」と思って満足するだけではなく、他者から褒められることでいいという認識の確認ができますから。

音部 ここは重要ですね。ブランドの入り口は“こじはる”ですが、いざ入ると“小嶋陽菜”が出てくる。そして、その服を着ることによって、“小嶋陽菜”も“こじはる”も関係なく、自分が自分の大事な人に褒められる。この経験が、“こじはる”が作った小嶋陽菜の世界観で構成されているHer lip toの服に対する支持につながるという、ブランドの構図が見えてきました。

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