JR東日本は2021年12月8日、AI(人工知能)搭載ロボット型コーヒーバリスタ「Ella(エラ)」を使った、無人コーヒー販売のテストマーケティングを始めた。東京駅と横浜駅の2カ所に22年2月末まで設置し、コロナ禍で変化した非接触販売の需要や、駅ナカ飲食店の省人化効果などを検証する。

JR東日本がテストマーケティングを行っている、AI搭載ロボット型コーヒーバリスタ「Ella(エラ)」。上部には防犯用のカメラが付いている
JR東日本がテストマーケティングを行っている、AI搭載ロボット型コーヒーバリスタ「Ella(エラ)」。上部には防犯用のカメラが付いている

 「Ella(エラ)」は、シンガポール発のスタートアップ企業、Crown Technologies Holdings(以下、Crown社)が開発したもので、バリスタが行う一連の作業をロボットが無人で行う。

 Crown社は、人間がいれる高級志向のコーヒーショップとしてスタートした。しかし「スタッフの入れ替わりが激しくて人材不足に直面したため、AIとロボットを使って高品質なコーヒーを効率的に提供する解決策にたどり付いた」(Crown Technologies Holdingsのキース・タンCEO)という。

Crown Technologies Holdingsのキース・タンCEO
Crown Technologies Holdingsのキース・タンCEO

 Ellaの設置場所は2カ所。まず東京駅の銀の鈴広場に、完全無人でコーヒーを提供するスタンドアローン型の「Ella X」を設置する。もう1カ所は横浜駅で、JR東日本の体験型ショールーム店舗「JRE MALL Cafe」に、店内設置向けの「Ella Y」を設置して、飲食店の効率化を検証する。設置期間は22年2月28日までとなっている。

 購入方法は2通り。一つは、スマホの専用アプリから注文してクレジットカード決済で支払う方法だ。注文すると2次元コード(QRコード)が発行され、商品ができあがると通知が届く。そのQRコードをEllaでスキャンすると注文した商品が取り出せる。例えば、自宅やオフィスを出るときに受取時間を指定して注文しておけば、現地に到着したときに待たずに商品を受け取れる。もう一つは現地でタッチパネルを操作して注文し、Suicaなどの交通系電子マネーで支払う方法だ。アプリからの注文データやSuicaなどの決済データから、時間帯別売り上げなどのデータを収集して効果を検証する。

専用アプリから注文して決済することも、その場でタッチパネル操作で注文して交通系電子マネーで支払うこともできる
専用アプリから注文して決済することも、その場でタッチパネル操作で注文して交通系電子マネーで支払うこともできる

 メニューはエスプレッソコーヒーが中心で、アメリカーノ、ダブルエスプレッソ、カプチーノなど5種類。コクの強いフルボディーを基調にした味としている。砂糖の有無が選べるほか、オプションでキャラメルシロップの追加などのカスタマイズも可能だ。価格は、アプリで注文して決済すると、交通系電子マネーで決済する場合より割安になる。例えば、アメリカーノは交通系電子マネー決済では300円(税込み、以下同)で、アプリ決済の場合は260円になる。

人間の4~5倍の効率でコーヒーを作る

 東京駅にあるElla Xで実際に飲んでみた。Ella Xは幅3メートル×奥行き1.7メートルで、自動販売機としては大柄だ。内部には、デロンギの業務用ブランド「Eversys(エバシス)」のコーヒーマシンとロボットアームが設置されている。ロボットアームがカップをコーヒーマシンに設置して、できあがるとそれを取り出し口まで運ぶ仕組みだ。コーヒーを置いたあと、ロボットアームが“手”を振ってくれる。

内部には、業務用コーヒーマシンとロボットアームがある
内部には、業務用コーヒーマシンとロボットアームがある

 アメリカーノを砂糖なしで飲んでみたところ、濃いめでコクがあり、少量でもコーヒーをしっかり飲んだ満足感を得られる味だった。1時間あたり200杯のコーヒーを作ることができ、一定品質のコーヒーを、人間のバリスタの4~5倍の効率で作れるのが強みだという。

 Ella Xの前面は透過型ディスプレーになっていて、ロボットアームが動く様子が見られる。ギミックとして楽しませてくれると同時に、抱えているオーダーを表示したり、できあがった商品の取り出し口を指示したりする。何も作っていない“暇”なときはアニメーションが表示されていたが、広告の表示にも使えそうだ。

ロボットアームが忙しく動いて、注文を次々とさばいていく。ディスプレーには、抱えているオーダーや、できあがった商品の受け取り指示などが表示されている
ロボットアームが忙しく動いて、注文を次々とさばいていく。ディスプレーには、抱えているオーダーや、できあがった商品に受け取り指示などが表示されている

非接触・非対面で楽しいサービスを提供

 Ellaの設置は、JR東日本が社外パートナーと共創し、駅をヒト・モノ・コトがつながる暮らしのプラットフォームとしていくという「Beyond Stations 構想」の取り組みのひとつだ。

 JR東日本がテストマーケティングを行う目的は大きく3つ。まず、コーヒーの注文から提供までを完全無人で行うことで、人手不足の解消や人件費削減につながるかを検証する。JR東日本 常務執行役員の表輝幸氏は「東京駅のような都心の大ターミナル駅では、周辺に住んでいて始発に合わせて出勤できるような人が少ないため、早朝からの従業員確保に大変苦労している。Ellaで、早朝にコーヒーを飲みたい人にサービスを提供できるようになる」と述べた。また、売り上げと人件費のバランスからカフェの出店が難しい地方駅にも向くと見ている。

JR東日本 常務執行役員の表輝幸氏
JR東日本 常務執行役員の表輝幸氏

 2つめは駅構内にできた狭小スペースの活用で、3つめは非接触・非対面のニーズを検証することだ。「コロナ禍で、人との接触を避けたいというニーズが高まっている。Ellaは非接触、非対面でサービスができる。モバイルで注文して受取時間を指定しておくと、その時間にスムーズに受け取れる、安心、安全、便利なサービスを提供できる。本格的なコーヒーが味わえるし、エンターテインメント性も高く楽しい。画期的なサービスではないか」(表氏)と期待を寄せる。コロナ禍でも高まっているという、駅ナカでのコーヒー需要に応えられるか。

(写真/湯浅英夫)

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