LINEギフトがクリスマス商戦で勝負をかける。「購入金額100%還元」をはじめとしたキャンペーンで認知向上を狙い、ヤフーとの提携強化で、出店数や品ぞろえを拡充する。サービスが急成長する背景には、LINEギフト独特のビジネスモデルを利用した、LINEの緻密な戦略が見えてきた。
2015年4月にサービスを開始した「LINEギフト」の利用者数が、21年12月9日時点で2000万人を超えた(LINEギフトを贈った、もしくはもらったユーザーの総数)。LINEギフトとはその名の通り、LINEのトーク画面から、「友だち」のユーザーにプレゼントを贈れるサービスだ。相手の住所を知らなくてもサービスを活用できるため、より簡単に、感謝の気持ちやお礼を伝える手段として役立つ。
LINEギフト事業部事業部長の米田昌平氏は「緊急事態宣言が発令された直後の20年5月、母の日のタイミングも重なり、利用者数が大幅に伸びた」と振り返る。それ以降も急速にサービスを拡大させ、21年度第2四半期の流通額は前年同期比184%増となった。21年10月には、平均で1秒に1回以上の頻度でギフトが贈られている。
対面しづらい新型コロナウイルス禍、誕生日や結婚記念日のお祝い事や、バレンタインなど季節のイベントで重宝されてきたLINEギフト。しかし米田氏は「LINEギフトがより当たり前の文化として定着してほしい」と期待する。
米田氏が語る「当たり前の文化」とは、特別な機会だけでなく、日常的にギフトを贈る習慣が根付くことを意味する。仕事のねぎらいや日ごろの感謝の気持ちを伝える手段として、メッセージとともにギフトの日常使いを浸透させる。
「利用者数に比重を置くというより、LINEギフトがあらゆる人に利用されるかどうかが重要だ。自分の家族や友人など、身近な人が当たり前に使っているようなサービスを目指す」(米田氏)
そのためには、サービスの認知を進め、初めて使うユーザーを増やしていくことが重要だと分析する。
「LINEギフトは、贈り手側である購入者ともらい手側の両者がいて、初めてサービスとして成立する。このサービスモデルがポイント。例えば、誕生日にプレゼントをもらった人が贈り手にお返しをしたり、自分の友人に同じようにギフトを贈ったりする流れが生まれる。良い体験が生まれたら、それが周囲へ広まっていく仕組みだからこそ、ユーザー間でのシナジーを生み出す最初のきっかけづくりにかかっている」(米田氏)
そこでLINEギフトは、認知拡大と新規ユーザー獲得のため、クーポンをはじめとした施策を展開。21年12月1~25日まで、クリスマス需要に合わせた大規模なキャンペーンを行う。
内容としては、新規ユーザー限定の90%割引クーポン(上限1000円)や、LINEギフトにアクセスした全ユーザーに20%割引のクーポン(上限5万円)に加え、支払金額が抽選で最大100%戻ってくる還元キャンペーンを実施。キャンペーン期間に合わせて、タレントのみちょぱ(池田美優)とお笑い芸人の狩野英孝を起用したテレビCMを放映する。LINEギフトとしては、第2弾となるテレビCMで大々的に宣伝を行う。
米田氏によれば、クリスマスやバレンタインを含む12月から翌年3月までは、1年で最も需要が高まる時期だそうだ。この時期に向け、LINEは大規模な先行投資に出る。
さらに、21年3月に経営統合したZホールディングス傘下のヤフーと協力して、出店数の増加と品ぞろえの強化を図る。
LINEギフトでは同年10月にYahoo!ショッピングやPayPayモールとの商品連携を開始。両者の協業により、LINEギフトに新店舗が続々登場している。11月には出前館やZOZOTOWN、ebookjapanが出店、21年までには旅館予約サイトの一休.comも出店の予定だ。
新規店舗の開拓にも力を入れる。LINEとヤフーの営業部社員で構成された200人ほどのチームで、21年10月から600店舗以上とのシステム連係を順次進めている(出品準備中を含む)。その結果、21年11月末時点で、LINEギフトの出店数は約380、取扱商品は約4万点になっており、その数は今後さらに拡大する見込みだ。
LINEギフトは出店費用が販売手数料のみと企業にとっては参入しやすい条件を整えている。ヤフー コマースカンパニー・ショッピング 統括本部長の畑中基氏によれば、Yahoo!ショッピングやPayPayモールに出店する店舗からも、LINEギフトへの参入を希望する声は非常に多いそうだ。ヤフーでも店舗に対して、LINEの公式アカウントの開設を推奨しており、ユーザーとの強固な関係構築や新しい販促の手段としてLINEギフトを役立ててもらうよう、提案していく考えだ。
ヤフーからしても、自社の店舗がLINEギフトに参入することで、グループ全体の流通額の増加が見込める。今後は、ヤマダホールディングスなどの家電や、動画配信サービスのGYAO!(ギャオ)など、多種多様なコンテンツを組み合わせ、LINEギフトのコンテンツを充実させる方針だ。
LINEは、こうした「認知拡大、品ぞろえ強化、出店数の増加」の3つのアプローチで、LINEギフトのサービス拡大を狙う。需要が右肩上がりになる年末に向け、LINEギフトの存在感がますます強くなりそうだ。
(写真提供/LINE)