隔月5000円で、廃棄予定の余剰食品をランダムで届けるサブスクリプションサービスが始まった。サービスを運営するのは、余剰材料を使ったアップサイクル商品販売などを手掛ける大阪発スタートアップのロスゼロ(大阪市)だ。手元に届くまで中身の不明な余剰商品を、隔月5000円で購入してもらうため、同社はどんな工夫をしたのか。

2018年に創業したロスゼロは、毎月または隔月で、廃棄予定の余剰商品を届けるサブスクをスタート。フードロス削減に取り組む(21年12月現在は隔月のみ)
2018年に創業したロスゼロは、毎月または隔月で、廃棄予定の余剰商品を届けるサブスクをスタート。フードロス削減に取り組む(21年12月現在は隔月のみ)
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 ロスゼロが2021年11月から始めたのは、廃棄予定の余剰食品を届ける定額制サービス。月1回もしくは隔月ごと(21年12月時点では隔月のみ)に、1回5000円(税込み、送料無料)で、定価9000~1万円程度の商品を配送する。廃棄予定とはいえ、基本的に商品は1カ月程度の賞味期限を確保。フードロスを削減する取り組みの一環として行い、「ロスゼロ不定期便」と名付けた。同社によると、「廃棄予定食品のサブスクは日本初」だという。

 中身はお菓子や加工品、調味料などが多い。レストランや百貨店など、時短営業の影響で余った食品や地方の特産品にお土産、輸入食品などが入っている。ロスゼロ不定期便は開けるまで中身が分からず、毎月の配送時期も不定期だ。その時々で、企業から仕入れる商品の種類や量も変わるため、それに合わせて内容が変わる。

ロスゼロ不定期便の実物。中身はお菓子や加工品など、定価で購入すると9000円以上のラインアップ。それぞれの商品説明や、余剰が生まれた背景を説明したお便りも同封されている
ロスゼロ不定期便の実物。中身はお菓子や加工品など、定価で購入すると9000円以上のラインアップ。それぞれの商品説明や、余剰が生まれた背景を説明したお便りも同封されている
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 ロスゼロ代表取締役の文美月氏は、「食品ロスから生まれたサブスクなのに、時期や量を調整するのは自然ではない。そういった誤差の部分も含めて、ユーザーに理解してもらう。量が少なくても、ブランドものの商品を入れるなど、毎回発見や楽しみがある『福袋』のように購入してもらえたら」と語る。

ロスゼロ代表取締役の文美月氏
ロスゼロ代表取締役の文美月氏
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コロナ禍で取扱量が9倍近くに

 同社が余剰商品を仕入れるメーカーには、BtoB(企業間取引)の知見しか持たない会社も多く、納品期限が過ぎた商品を持て余しがちな実情がある。そこで、余剰食品や規格外食品、アップサイクル食品のEC事業などを手掛けてきたロスゼロが、そのノウハウを生かして、「賞味期限に十分猶予がある」と判断した商品を集め、売りさばくわけだ。

 18年に創業したロスゼロは、これまで400万点以上(1つのパッケージを1点とカウント)の余剰商品を取り扱ってきた。文氏は、「コロナ禍の影響で、多くの食品の販路が失われた」と語る。同社で取り扱う商品数も、19年末から比べると、9倍近くに増えているそうだ。

 これまでもロスゼロでは、単発的に余剰商品の配送サービスを行っていたものの、サブスクには踏み切っていなかった。商品数の継続的な供給や、ラインアップの偏りを懸念したためだ。だが、コロナ禍の影響による供給拡大で、需要との釣り合いが取れると判断。単発的に実施してきた催しが、何度も早期完売したことも後押しし、ロスゼロ不定期便を開始した。

 サブスクを始めたことで、必要な仕入れ量が想定しやすいメリットも生まれた。ECサイトだと商品を仕入れても、売れるかどうかの確証がなく、正確な需要予測ができなかった。定期的に余剰商品を購入するユーザーを一定数確保することで、安定した需要と供給のバランスを保てる。

サブスク以外でのECでは、自社独自のアップサイクル商品などを販売
サブスク以外でのECでは、自社独自のアップサイクル商品などを販売
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 サービス開始の初月となる11月は、配送頻度を「毎月か隔月か」の2択にして先着100人を募集。定員数を超える応募が舞い込んだ。今後は会員数を効率良く増やすため、11月度の反応を見て、12月以降は隔月だけのプランに変更した。

「1円安くするのは誰でもできる」

 ただ、5000円という価格設定は、当面下げるつもりはないそうだ。「送料もあるので、あまり安くしても満足できるものを入れられない。例えば、3000円は割安な金額だと思うが、満足度はそこまで上がらず、解約率が高くなる懸念もある。まずは5000円という価格に納得してもらえるように工夫していく」(文氏)

 こう判断するのには、顧客満足度を上げる目的以外にも、大きく2つの理由があるからだ。1つは、SDGs(持続可能な開発目標)や循環型社会といった社会的な価値観が浸透し、廃棄予定商品を扱う競合が増えてきたこと。もう1つは、安売りしないことで仕入れ先との関係を良好に維持するためだ。

 文氏はロスゼロを創業した18年当時と現在を比べると、「圧倒的に競合が多くなった」と話す。

 「(創業当初の18年は)楽天グループで『食品ロス』と検索したら、検索結果はほぼゼロだったが、今現在では7000件以上ヒットする。昔から『処分価格』『訳あり価格』と名付けて安売りしていた方々が、ただ単にはやりのキーワードとして『食品ロス』と付けて販売しているケースがある」(文氏)

 しかも、商品を売るためにトレンドに便乗する人は、「価格帯を下げる傾向にある」と文氏。そうした同業他社との差別化を図るためにも、商品の価格をあえて落とさず、自社のブランディングや見せ方に注力することが重要と説く。

 販売商品の価格の維持は、仕入れ先との良好な関係性の維持にも重要だ。もちろん、破格の値段で売れば消費者には喜ばれるだろう。しかし、メーカーにとっては実入りが少なく、何より自社の製品が安く売られることでブランド毀損にもつながる。ビジネスを安定させ、長期的に食品ロスを削減するためには、消費者と仕入れ先の両者に満足してもらう塩梅(あんばい)が必要だ。

 価格を維持しつつ、ユーザーに購入してもらうため、食品ロス削減に関する社会活動の発信を強化する。ロスゼロは、西武池袋本店や大丸などの百貨店に期間限定の特設売り場を作って販売したり、医療従事者やこども食堂に商品を提供したり、インターンの大学生にコラムを寄稿してもらったりと、自社が行う食品ロス低減の啓蒙活動をサイトで紹介する。

 このほか、SDGsや地球環境に関するテーマのコラムや、イベントリポートなどもあり、同社のサイトに掲載されている読み物は500本を超えた。時にはファンミーティングも開催して、ユーザーの声にも耳を傾ける。商品自体の魅力だけで勝負するのではなく、ロスゼロの理念に共感を持ってもらえるようなブランディングを行う。

 「食品ロスが生まれる背景を知ってもらわないと、マーケットが成熟しないので売るのも難しい。自社の活動を通して、消費者と会話が生まれ信頼度もアップしていくと考えている」と文氏。利益だけを追求せず、手間暇かけて食品ロス問題を発信していくことで、安定した基盤を固めたい考えだ。

 「1円安くするよりも、どうすれば1円高い価値を生み出せるか。安売りするぐらいなら、ロスゼロが存在する意義がない」とまで言い切る文氏。需要と供給のバランスを考慮して価格を保ちつつ、余剰食品を購入してもらうための努力が実を結ぶか。その手腕に注目したい。

(写真提供/ロスゼロ)