ドミノ・ピザ ジャパンが2021年5月に発売した「ピザライスボウル」は発売5カ月で累計100万食を販売するヒット商品となった。ヒットの要因の1つはネットで起こった「ピザライスボウルはピザかドリアか」という論争だが、これは仕掛けられたものなのか。マーケティング担当に話を聞いた。

インターネット上で「ピザか、ドリアか」の論争を巻き起こしたドミノ・ピザ ジャパンの「ピザライスボウル」
インターネット上で「ピザか、ドリアか」の論争を巻き起こしたドミノ・ピザ ジャパンの「ピザライスボウル」

 米ミシガン州発祥の宅配ピザチェーン、ドミノ・ピザの日本法人であるドミノ・ピザ ジャパン(東京・千代田、以下ドミノ・ピザ)。同社は、直径40センチメートルのピザ生地に1キログラムのモッツァレラチーズを乗せた「ニューヨーカー 1キロ ウルトラチーズ」、激辛のピースが1枚だけ入っている「ハロウィンルーレット」など、ユニークな施策を打ち出して話題を集めてきた。

話題の商品にあの手この手で追い打ちをかける

 そんなドミノ・ピザが21年5月19日に発売した「ピザライスボウル」は、ピザ生地ではなく“ごはん”の上にピザの具を乗せた日本オリジナルの商品。5月14日に発売を告知した直後から「これはピザなのか?」「ピザではなくドリアだろ」とインターネット上で話題になった。

 それを受け、ドミノ・ピザでは5月25日から6月14日にかけて、Twitter上で同社公式アカウントのフォロワーに審判を求める「ピザライスボウルはドリアなの? 緊急アンケート」を実施。“ピザライスボウルはピザかドリアか論争”に拍車をかけた。

ドミノ・ピザではネット上の論争を受けて「緊急アンケート」を実施。もちろん、この対応も想定内だ
ドミノ・ピザではネット上の論争を受けて「緊急アンケート」を実施。もちろん、この対応も想定内だ

 アンケートを開始した翌日の5月26日には「#ピザライスボウル」がTwitterのトレンド入り。審判の結果は「ドリアじゃない」が2718票、「ドリアだろ」が4198票となった。

 ドミノ・ピザのTwitterアカウントには約47.8万人のフォロワーがいるので(21年11月24日時点)、投票したフォロワーが約7000人ではそれほど多くないようにも見えるが、アンケート開始から1週間の総リーチ数は1158万人に達したという。これは、アンケートの投稿にTwitterの「カンバセーショナルカード」を利用した結果だ。この機能では、ユーザーがアンケートに答えると、その内容がハッシュタグ(#)付きのツイートとして、そのユーザーのタイムラインにも投稿される。つまりアンケートに回答したユーザーのフォロワーにまでリーチするため、拡散力が強いのだ。

 ドミノ・ピザ ジャパン デジタルマーケティング&マーケティングオペレーション部ソーシャルメディアマーケティング課の小山魁理課長は、この一連の流れについて「想定通り」と言う。「日本の顧客をターゲットにした、日本人の舌に合う商品としてピザライスボウルの開発を始めたのは発売の1年ほど前。その段階で社内からも『これはドリアではないか』との声が上がっていた。ネットでも同様の反応が起こるのは想像に難くない」と小山課長。論争になった際の緊急アンケートも予定していたものだったという。

 ピザライスボウルが大きな話題となったことを受け、ドミノ・ピザではピザライスボウルの持ち帰り価格が一律500円(税込み、以下同)になる「日替わりワンコイン(500円)」キャンペーンを21年6月、7月の2回にわたって実施。さらに9月1日にはピザライスボウルのラインアップとして「ドミノ・デラックス」など5種類に加え、「北海道3チーズ」「明太マヨモチ」を追加し、同時に「日替わりワンコイン(500円)」の第3弾も打ち出した。ヒット商品のラインアップを強化し、その上にヒット企画をかぶせていったわけだ。

「日替わりワンコイン(500円)」では、曜日ごとに指定された種類のピザライスボウルを持ち帰りでネット注文すると、通常は799~999円(税込み)の価格が一律500円になる
「日替わりワンコイン(500円)」では、曜日ごとに指定された種類のピザライスボウルを持ち帰りでネット注文すると、通常は799~999円(税込み)の価格が一律500円になる

 結果、ピザライスボウルは発売5カ月で累計100万食突破という記録を達成。もともとは日本限定の商品だったが、グローバルでの展開も検討されているという。

消費者のニーズをネットで拾い上げる

 実は、冒頭のキャンペーン「ニューヨーカー 1キロ ウルトラチーズ」などを手掛けたのも小山課長だ。この商品は発売2週間で10万枚以上が売れたのだが、一部店舗で品切れとなってしまったため、販売休止を余儀なくされたという。

 「Twitterに謝罪文を掲載してキャンペーンを2週間延長したときは、グローバルを統括するオーストラリア本社のCEO(最高経営責任者)やCMO(最高マーケティング責任者)から『どうしてそんな事態になったのか』と説明を求められた」と小山課長は苦笑い。

 その後、「ニューヨーカー 1キロ ウルトラチーズ」は「ウルトラチーズ」として定番化されたが、その際はネット上の声に応えて「ニューヨーカー」以外のM、R、L各サイズでもチーズの増量に対応した。

「ウルトラ盛4倍!チーズ」は「ウルトラチーズ」として定番商品に。ニューヨーカーサイズのチーズは1kgにパワーアップ
「ニューヨーカー 1キロ ウルトラチーズ」は現在、「ウルトラチーズ」に名前を変えて各サイズで展開されている

 数々のヒット企画を手掛けてきた小山課長は「二項対立(2つの概念が矛盾または対立の関係にあること)はSNSで盛り上がりやすい。ピザライスボウルの論争でアンケートが盛り上がったのも二項対立があったから」と、ピザライスボウルが話題になった理由を分析している。

 「意識してバズらせるのは難しいが、まずはフォロワーがアクションを起こしたくなるトリガーを用意すること。もう一つはこちらが届けたい情報とフォロワーが求めている情報をうまく擦り合わせること。フォロワーに寄り添うことで情報をすんなり受け入れてもらえる」(小山課長)

 小山課長は「ドミノ・ピザ」をキーワードにしたエゴサーチを定期的に行っているという。理由は「消費者がドミノ・ピザに求めているものがよく分かるから」とのことだ。商品そのもののポテンシャルが高かったこともあるだろうが、ピザライスボウルの盛り上がりには、消費者の心理をつかんだ上での“燃料投下”があったのは間違いない。

(写真提供/ドミノ・ピザ ジャパン)

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