バルミューダは2021年11月16日、4.9型の5G対応スマートフォン「BALMUDA Phone(バルミューダフォン)」を発表した。独自の部材を使って曲線だけで構成したデザインと、スマホを使う時間を短くできるというスケジューラーなどの独自アプリが強み。21年11月26日発売で、大手通信キャリアのソフトバンクで取り扱うほか、SIMロックフリー版を10万4800円(税込み)で販売する。

バルミューダの4.9型スマートフォン「BALMUDA Phone(バルミューダフォン)」。ドーム型の背面が、手のひらのくぼみに収まり、持ちやすい。当初は4.8型の予定だったが、5G対応などによる設計変更で4.9型になった
バルミューダの4.9型スマートフォン「BALMUDA Phone(バルミューダフォン)」。ドーム型の背面が、手のひらのくぼみに収まり、持ちやすい。当初は4.8型の予定だったが、5G対応などによる設計変更で4.9型になった
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「スマホに新たな選択肢を」

 バルミューダといえば、デザインや機能にこだわったトースター、扇風機、照明器具といった生活家電を主に手掛けてきたメーカーだ。それがなぜスマートフォンを作ったのか。狙いは2つある。まず、画一的になっているスマホの世界に選択肢を作ることだ。バルミューダの寺尾玄社長は、「今の世の中のスマホは、iPhone含めて画一的すぎる。選択の自由がスマホの世界にはないのではと長年感じていた」と語る。

 もうひとつは、スマホを使う時間を短くすることだ。「我々はスマホの画面を見るために生きているのではない。すてきな人生を送るために生きているのであって、スマホはあくまでもそのための補助をする道具だ」と寺尾社長。「人生にとって重要なことはだいたい画面の外で起きている。我々はスマホの画面にくぎ付けになりすぎているのでは」と、スマホが主で人間が従になってしまう危惧を訴える。

バルミューダの寺尾玄社長
バルミューダの寺尾玄社長
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 チーフデザイナーである寺尾社長自らがデザインしたバルミューダフォンには、そうした考えが随所に盛り込まれている。まずサイズだ。最近は6型以上のスマホが多く、コンパクトな4.9型は珍しいサイズといえる。例えば小型スマホの中では人気が高い米アップルの「iPhone 13 mini」は5.4型で、バルミューダフォンはそれよりも小さい。重さは138グラムと、5G対応スマホとしては世界最軽量クラスだ。

 板のような直線的でフラットなデザインが主流の中で、曲線や曲面を多用した「どこにも直線がない」(寺尾社長)というデザインも独自性を打ち出すポイント。ディスプレーやボディーの縁は一見すると直線に見えるが、実際は微妙な曲線を描いている。平らなディスプレー表面以外に、直線的な部分がない。

ディスプレーは角が丸くなっているだけでなく、4辺がそれぞれ微妙にカーブしている。ボディーの4辺も同様に、外に向かって少しだけ膨らんだ曲線になっている
ディスプレーは角が丸くなっているだけでなく、4辺がそれぞれ微妙にカーブしている。ボディーの4辺も同様に、外に向かって少しだけ膨らんだ曲線になっている
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 背面は亀の甲らのようなドーム型で、手になじみやすい。実際に持ってみると、成人男性としては小さい筆者の手のひらにすっぽりと収まり、握りやすかった。表面はざらっとした質感で滑りにくく、経年変化が楽しめるような加工が施してあるという。08年に発売されたアップルの3.5型スマホ「iPhone 3G」など、背面が曲面になっているスマホはこれまでにもあったが、その頃を思い起こさせるようなサイズ感とデザインだ。

背面には、指紋センサーを兼ねた電源ボタン、カメラがあり、バルミューダのロゴが彫り込まれている
背面には、指紋センサーを兼ねた電源ボタン、カメラがあり、バルミューダのロゴが彫り込まれている
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背面はドーム型になっている。ディスプレーを上に向けて置いた状態から、手で持ち上げやすい
背面はドーム型になっている。ディスプレーを上に向けて置いた状態から、手で持ち上げやすい
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基本アプリは独自開発

 スマホを使う時間を短くするための工夫は、「BALMUDA App」と呼ぶ独自アプリの搭載だ。ホーム画面、スケジュール管理、メモ、時計、電卓、カメラの6つがインストールされている。初期状態では独自のホーム画面にこれらのアプリのアイコンが並んでいて、ホーム画面の背景色などはカスタマイズできる。今後別のアプリも追加していくという。

 いずれも、スマホでよく利用される基本的なアプリだが、使いやすさに工夫をこらした。例えばスケジュール管理アプリの「スケジューラ」は、ピンチ操作で、1日の予定から年間の予定まで表示範囲を伸縮できる。1カ月の予定を大まかに把握したら、そこからピンチ操作で、1週間や1日の予定をすぐ確認するといった直感的な使い方ができ、スマホの操作に費やす時間を短縮できるという。天気や気温が表示され、Googleカレンダーなど外部スケジューラーとの連携が可能で他のアプリを開く手間もかからない。メモアプリの「メモ」も同様にピンチ操作で表示範囲を伸縮でき、目当てのメモを探し出しやすくなっている。

「スケジューラ」の画面。年間の予定(左)から1日の予定(右)まで、表示範囲をピンチ操作ですばやく伸縮できる
「スケジューラ」の画面。年間の予定(左)から1日の予定(右)まで、表示範囲をピンチ操作ですばやく伸縮できる
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 基本アプリにこだわった理由を、寺尾社長は「普段使いの使い心地のよさが大事。いいアプリがあれば、同じデバイスでも全く違う使い心地になる。日々使う基本アプリはスマホ体験の重要な部分。考える時間や別のアプリに行く時間を減らし、したいことがなるべく早くできるように、やりたいことに対して素早く答えがでるようにした」と語る。基本アプリは、Android搭載スマホならGoogleのものなど、OSに付属の標準アプリを使うケースが現在では主流だ。そこを独自開発することで、他のスマホとは違う使い勝手をアピールしたい考えだ。

こだわった結果の価格

 主なスペックは、プロセッサーが米クアルコムのSnapdragon 765、メインメモリーが6GB、ストレージは128GB、バッテリー容量は2500mAh、IPX4(生活防水)対応、OSはAndroid 11で、ミドルハイクラスのスマートフォンといったところ。大手キャリアではソフトバンクが取り扱い、価格は14万3280円、「新トクするサポート」適用で7万1640円になる。SIMロックフリー版は10万4800円で、いずれにしてもスペックを考えるとかなり高額な製品だ。

 価格が高くなった要因は、他のスマホと一線を画したデザインや、独自アプリにこだわったことにある。生産や部材調達は京セラに委託しているが、曲線を使ったディスプレーなどの独自部品や、独自アプリの開発に相当なコストがかかっているという。

 それでも「スマホを使う時間を減らすことで、別のことができるようになる。時間は可能性であり、“体験のバルミューダ”としては、その切り口でスマホを介して皆様とつながりたい」(寺尾社長)と方針を変えるつもりはない。アプリの開発にも力を入れ、これまでにないアプリを提供していきたいという。

 ターゲットはバルミューダのファン層にとどまらない。「スマホを、よりよく生きるための補助道具であると考えている人がターゲットの候補。スマホより自分の人生が大事という人に響くと考えている。現状に対して少し疑問をもち、我々の提案に耳を傾けてくれる人にアピールしたい」(寺尾社長)という。

 バルミューダフォンは、IT機器やサービス向け新ブランド「BARUMUDA Technologies」の第1弾製品だ。この製品を中心に、携帯電話事業で年内に30億円の売り上げを見込んでいる。新ブランドについて寺尾社長は「家電のバルミューダはポップソング的なもの。バルミューダテクノロジーズは、IT産業のヒーローたちがしのぎを削る世界向けのもので、いわばロックミュージックだと考えている。やることは違うが、根本は同じ“体験のバルミューダ”であり、新しい体験価値を生み出していく」と語る。スマホか、タブレットのようなものか、まだ明かせないが次のデバイスの開発も始まっているという。

 スマホやタブレット市場は、米アップルをはじめとする大手メーカーによる寡占が進んでいる。その中でバルミューダが独自路線でどれだけ存在感を示せるか注目される。

カバー、保護フィルム、ACアダプターなどのオプションも用意する
カバー、保護フィルム、ACアダプターなどのオプションも用意する
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(写真/湯浅英夫)