プレスリリース配信サイトのPR TIMESが2021年11月10日、飲食店の情報発信を支援する取り組みを開始した。飲食店に向けて、リリースの書き方やPR活動を指導する勉強会や、メディアへの露出の増加を狙った試食会などを実施。コロナ禍で苦境に立たされた飲食店をサポートする。

プレスリリース配信サイトを運営するPR TIMESが、新プロジェクト「食べ物語」を発足
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 プレスリリース配信サービスを運営するPR TIMESが、キリンビールとサントリー酒類と協力して、飲食業界の活性化に注力する。2021年11月10日から、協力企業2社の商品を扱っている飲食店を対象に、情報発信を支援する「食べ物語」プロジェクトを始動した。

 PR TIMESはこれまで累計100万件を超えるプレスリリースを配信。21年8月には、利用企業数が5万8000社を超えた。持ち前のネットワークを生かし、飲食店の取り組みや思いの発信を手助けする。

飲料メーカーとウィンウィンな関係を

 食べ物語発足のきっかけは21年6月ごろ。PR TIMESがキリンビールと議論する中、コロナ禍で苦境に立たされた飲食店や、仕入れ先の企業の苦戦する声を多く耳にしたことがきっかけだという。こうした現状から、PR TIMESは飲食業界に携わる企業と広く協力して、業界を盛り上げようと考えた。協力先を探している中で、サントリー酒類に思いが伝わり、今回の協業にいたった。

 PR TIMES PRパートナー事業部長の村田悠太氏は、本プロジェクトを通して「現場の声を広く届け、飲食店だけでなく飲食業界全体の活性化を目指す」と意気込む。

 「(PR TIMESによる情報発信で)飲食店の認知向上や売り上げ増加につながれば、キリンビールにとって仕入れの増加につながる。我々からしたら、食べ物語を一緒にスタートできたことだけでも価値がある。飲食店から『キリンビール、サントリー酒類とプロジェクトをやっている』と認知されれば、良い循環になると思っている」(村田氏)

PR TIMES PRパートナー事業部長の村田悠太氏
PR TIMES PRパートナー事業部長の村田悠太氏
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 本プロジェクトの内容は主に3つ。1つ目は、PR TIMESが提供する各種サービスを安価で提供する。店舗情報を伝える動画サービス「PR TIMES TV」の、制作から公開までの費用の40万円(税別)を半額に、1回の配信で3万円(税別)かかるプレスリリース配信料を半年間で3回まで無料にする。

 サービスの対象となるプレスリリースは2種類。店舗情報やメニュー紹介を中心に記載する「PR TIMES」と、担当者の思いや商品背景・開発経緯をメインに盛り込める「PR TIMES STORY」だ。過去プレスリリースを配信してこなかった参加店にはPR TIMESを、配信経験がある店舗にはPR TIMES STORYを対象に、情報発信の機会を提供する。

 2つ目は、PR活動に役立つ勉強会の開催だ。プレスリリースの書き方やPRに関するアドバイスを提供する。「飲食店には季節感やトレンドを取り入れたメニューやフェアを開催し、プレスリリースで発信することで、メディアへの露出が増えることを知ってほしい」と村田氏。

 勉強会にはキリンビールとサントリー酒類も参加する。飲食店がどのようにPR活動を行っているかを両社が知ることで、飲食店との連携強化や、メーカー営業担当の人材育成も期待できる。勉強会の初回は21年12月、その後は4カ月に1回を目安に開催する予定だ。

 3つ目は、メディア向けの合同試食会を開くこと。1店舗だけで試食会を開くより、毎回複数の店舗を集めてお披露目の場をつくるほうが、飲食業界全体の認知も効率的に高められる。その時々の季節性やトレンドからテーマを決めて、話題性を高めることで、メディアに興味を持ってもらえる工夫も施す。

 メディアだけでなく、一般ユーザーに向けても試食会の様子を発信する予定だ。PR TIMES内の動画サービス「PR TIMES LIVE」で、全ユーザーに対して試食会を生中継する。イベント自体を1つのコンテンツとし、興味を喚起できれば、一般の消費者も参加店舗に興味を持ち、プレスリリースを読む人の増加も期待できる。

 基本的にPR TIMESのユーザーであれば、合同試食会への参加は可能だ。ただし、22年2月に開催される1回目と22年5月の2回目は、お試し期間として「ある参加条件」を設けた。それがプレスリリースの文章や写真のクオリティーを競う「食べ物語アワード」で入賞することだ。

プレスリリースの内容でコンテスト

 食べ物語アワードとは、文章力や写真のクオリティーなどから、プレスリリースの内容を競うコンテストのようなもの。審査のポイントは、「タイトルの言葉選び、文章の構成や分かりやすさ、写真のインパクト、飲食店の歴史やメニューの開発秘話などの物語性、シェフやオーナーの思い」など様々だ。

 選考を行うのは、PR TIMESプロジェクトチームと、食べ物語プロジェクトのアンバサダーを務める齋藤孝氏。同氏は明治大学文学部教授で、テレビ番組のコメンテーターとしても活躍。著書の累計出版部数は1000万部を超える。入賞特典としては、店舗と齋藤氏の写真が入った、店舗オリジナルのポスターを贈呈する。

明治大学文学部教授の齋藤孝氏。「プレスリリースを読んで料理について知っておくことで、実際に食べたときに、料理の奥深さとか味わいを堪能できる」と語った
明治大学文学部教授の齋藤孝氏。「プレスリリースを読んで料理について知っておくことで、実際に食べたときに、料理の奥深さとか味わいを堪能できる」と語った
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 村田氏は「メディアに取り上げられる機会を増やし、飲食店にモチベーションを与える」と開催目的を語る。特に、個人事業主の飲食店には、プレスリリースでの発信を他人事と捉えている店舗も多い。こうしたイベントで話題をつくり、より多くの飲食店に情報発信を促す狙いもある。

 自社のプラットフォームを生かして、飲食店とその関連企業、メディア、一般の消費者の3方向に働きかけるPR TIMES。村田氏は「日本全国に1700以上ある、全ての自治体から飲食店の発信があればうれしい」と展望を語る。また今後は、飲料メーカーにこだわらず、協力してもらう企業を増やしていくと述べた。

 緊急事態宣言も解除され、徐々に明るい兆しが見え始めてきた飲食業界。PR TIMESの食べ物語プロジェクトが、業界の活性化を後押しするきっかけとなるか注目だ。

(写真提供/PR TIMES)