コーセーが「Find Your Own Beauty」を掲げる同社のコンセプトストア「Maison KOSE銀座」を2021年11月1日にリニューアルオープンした。1階と2階のコーナーを刷新し、先進的なデジタル技術を活用した「ビューティアトラクション」として「NEW ME COLLECTION」などを導入。新たな体験価値を生み出し、顧客とのタッチポイントとしての役割を高めていく。
自分の知らない自分を知る体験の提供
Maison KOSE銀座は、顧客が化粧や美容に関わる新たなソフトウエアやハードウエアを、ブランド横断で試せる場として2019年12月にオープン。「ビューティアトラクション」と呼ぶ、技術を活用したメークシミュレーターやネイルプリンターなどの機器を通じ、ユーザーに美容に関わる新たな体験と「私らしい美の発見」の機会を提供することを目指してきた。同社にとっては顧客と直接コミュニケーションできる場でもあり、得た情報や経験は、スピーディーに社内へフィードバックしているという。
リニューアルに当たり新型ビューティアトラクションを導入。「meet new me」をテーマに、「自分の知らない自分を知ることができる体験」を提供するものだという。
まず目を引くのが、「Beauty Attraction ZONE」と名付けられた1階に、新たに設置された「KOSE SELF PHOTO STUDIO」と「NEW ME COLLECTION」だ。
KOSE SELF PHOTO STUDIOは多くの俳優を撮影するカメラマン監修の下、カメラやライトなど専門の撮影機材を再現。自分自身でシャッターを切って自由に写真を撮れるセルフ写真スタジオだ。
同店では、顧客の要望を受け、コロナ禍で中止していたタッチアップ(美容部員が来店客にメークを施すこと)を再開。2階の「ビューティスタジオ」では「ビューティコンサルタント」と同社が呼ぶ、専任スタッフによるメークのレッスンも開催している。KOSE SELF PHOTO STUDIOは「(店舗内で)体験したメークの記録として、(スマートフォンのカメラアプリなどの)フィルターやスタンプで加工した写真とは異なる、高画質な写真を収めることができるようになっている」(コーセー マーケティング戦略部 Maison KOSE銀座店長の深沢亮氏)。気に入った写真は自分のスマホにダウンロードできる。
50種類のバーチャルメークが可能
メインとなる新アトラクションが、NEW ME COLLECTIONだ。KOSE SELF PHOTO STUDIOと同じブース内に、専用の撮影セットを用意。来店客は、タブレットの表示に従って5パターンの写真を撮影し、各パターンの写真に合うメーク全50パターンを、バーチャルで試せる仕組みになっている。「Unlocking from Unconscious Bias 無意識の偏見からの解放」という考えで開発したバーチャルメークは、自分では普段しないようなパターンも提案する。一度に50種類ものメークが試せるのはバーチャルだからこそだが、一方で、かなり細やかにメークが表現されるので、実際のメークの参考にしやすそうだ。
生成されたバーチャルメークの写真は、店内の幅12メートル、高さ2メートルの巨大なディスプレーにオリジナルムービーとして映し出されるほか、50種類のバーチャルメーク画像、ムービーは顧客専用Webサイトにアップ。顧客にURLを送り、顧客自身がスマホからムービーおよび画像をダウンロードできるようにもなっている。「撮影から短時間でムービーとサイトを生成し、大規模なバーチャルメークを体験できるのはMaison KOSE銀座ならでは」(深沢氏)。なお、店内の巨大ディスプレーに自分のメークムービーが流れることに抵抗がある場合、自分のスマホでだけ確認することも可能だ。また画像からバーチャルメークに使用しているメークアップアイテムが確認できるようになっており、気になったアイテムの「ITEM PAGE」をタップすると、コーセーのオンラインストアの商品ページに遷移する。
その他、1階にはプロのスタイリストによるシャンプーやブロー、髪質や悩みに合ったシャンプー選びとヘアケアの提案を受けられる 「BLOW BAR」(完全予約制)や、指1本につき約15秒でプリントできる最新のネイルプリンターを無料で試せるセルフサービスの「NAIL DRESSER」も設置している。
スポーツ向けメークの提供も行う
2階の「Consulting & Product Experience ZONE」では、ビューティコンサルタントによるイベントやセミナーを実施。21年11月15日には「Sports Beauty」をテーマにした「KOSE SPORTS BEAUTY SHOP」もオープン。同社ではブレイクダンスやフィギュアスケート、アーティスティックスイミングなどのスポーツ振興を支援していることもあり、メーキャップアーティストなどからなるチーム「KOSE BEAUTY CREATION UNIT」がスポーツシーンに適したメークや、各種スポーツのチームに適したメークの開発オーダーを受けるサービスなども開始する。また、スポーツ選手と顧客の接点となるイベントなども行う予定だ。
体験を持ち帰ってもらうことを重視
リニューアルに際し、「“Find Your Own Beauty”というコンセプトは変わっていない」とコーセー マーケティング戦略部 グループマネージャー兼コーセープロビジョン社長の杉崎洋氏。その上で、新アトラクション導入の理由については、コロナ禍の影響もあると話す。
「オープン直後からコロナ禍により、お客様への体験の提供が難しい時期が続いた」と杉崎氏。顧客の肌に直接、メークやスキンケアを施すタッチアップがしづらい状況が続く中で、「デジタル技術を活用しながら、少しでもコーセーからお客様にメークの楽しさを体験してもらいたいと考えた」(杉崎氏)という。
リニューアルの目玉となるNEW ME COLLECTIONはバーチャルメークが体験できるアトラクションだが、それならスマホアプリを提供し自宅で試してもらうという選択肢もあっただろう。しかし、顧客に驚きや喜びを提供し、その体験をメークしたいという意欲につなげるには、本格的な撮影環境とタッチアップエリアを用意できることが重要だった。
「バーチャルでの体験だけでなく、弊社のビューティコンサルタントと実際にコミュニケーションできるのがMaison KOSE銀座の特徴でもある。この場で撮影してバーチャルメークを施すだけでなく、タッチアップでメーキャップして帰っていただくことも可能だ。その楽しさをその場だけでなく、ご自身のスマホにダウンロードすることで持ち帰ってもらうことができる。体験をご自宅でも見返していただくことで、ポジティブに、アクティブになっていただきたいと思っている」(杉崎氏)
なお今回のビューティアトラクションが好評であれば、全国の店舗にも展開していきたいという。「タッチアップも解禁になってきたので、メークの楽しさなどを多くのお客様に体験してもらいたい」(杉崎氏)。