九州に本拠を置くディスカウントストアのトライアルホールディングス(トライアルHD、福岡市)が、「リアル小売店のスマートストア化」で攻勢を強めている。行政と協力して複数の研究拠点を設けた福岡県宮若市内に新店を開業し、研究拠点との連携を深めた他、東海エリア初のスマートストアの出店や、トライアルグループ以外では2例目となるスマートショッピングカートの外販も実現した。攻勢の中身を追った。

開業日にスーパーセンタートライアル宮田店の前に立つRetail AI(リテールAI、東京・港)の代表取締役CEO(最高経営責任者)、永田洋幸氏
開業日にスーパーセンタートライアル宮田店の前に立つRetail AI(リテールAI、東京・港)の代表取締役CEO(最高経営責任者)、永田洋幸氏
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 2021年10月28日、トライアルHD傘下のトライアルカンパニー(福岡市)は、福岡県の福岡市と北九州市のほぼ中間にある宮若市内に、「スーパーセンタートライアル宮田店(以下、トライアル宮田店)」を新たにオープンした。宮若市は、トライアルHDが行政や取引先などとの協働で「リテールDX(デジタルトランスフォーメーション)」を軸にしたまちづくり「リモートワークタウン ムスブ宮若」プロジェクトを推進するエリアである。

 トライアル宮田店には、タブレットを搭載した自社開発の「スマートショッピングカート」約200台、「デジタルサイネージ」約120台をまず導入。「AI(人工知能)カメラ」も順次導入し、店内に約200台を配置する予定だ。さらに、AIカメラと複数のセンサーを備えた最先端の冷蔵ケース「AI冷蔵ショーケース」も18台設置した。

 店内に設置したAIカメラで撮影した画像を使って、どの棚の前にどれだけ滞在したか、どの商品を手に取ってカートに入れたかといった来店客の行動データを計測可能。また、カートのタブレット画面にクーポンを表示したり、サイネージ画面で商品の割引サービスを告知したりして、来店客に特定の商品をレコメンドして商品の購買につながったかなども計測できる。POS(販売時点情報管理)から得られる購買履歴や商品ごとの売り上げデータなどと組み合わせ、来店客の購買行動をデータとして収集・分析できるのが強みだ。

トライアル宮田店で初めて導入されたAI冷蔵ショーケース。写真では商品が置かれた状態だが、当面は、前日昼に欠品した商品は「赤」、当日夕方に欠品した商品は「緑」、当日夜に欠品した商品は「青」のLEDライトが棚前面に表示され、店舗スタッフに要補充の欠品商品を知らせる仕組み
トライアル宮田店で初めて導入されたAI冷蔵ショーケース。写真では商品が置かれた状態だが、当面は、前日昼に欠品した商品は「赤」、当日夕方に欠品した商品は「緑」、当日夜に欠品した商品は「青」のLEDライトが棚前面に表示され、店舗スタッフに要補充の欠品商品を知らせる仕組み
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上部にあるのが外付けされたAIカメラ。「ケースにカメラを内蔵したモデルでは棚の奥までの撮影が難しかったため、外付けに戻した」(フクシマガリレイ 福岡支店 リテールAI課営業一課の麻生達弥氏)
上部にあるのが外付けされたAIカメラ。「ケースにカメラを内蔵したモデルでは棚の奥までの撮影が難しかったため、外付けに戻した」(フクシマガリレイ 福岡支店 リテールAI課課長の麻生達弥氏)
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 今回、初めて店頭に設置したAI冷蔵ショーケースでは、AIカメラと複数のセンサーによって棚の奥の状況まで正確に観察し、どの商品がどれだけ棚から取り出されたかをリアルタイムに計測。商品の店頭在庫を常時把握し、本部に自動で報告する。また店頭スタッフには、棚前面に設置されたLEDライトを使って、該当商品が欠品した時間帯別に色別で表示し、棚の在庫の有無を知らせて適切なタイミングでの補充を促す。トライアルグループのAIソリューション会社で、スマートストア化の旗振り役を務めるRetail AI(リテールAI、東京・港)のProduct Sales Department Product Managerである永井義秀氏は、「将来は、商品の店頭在庫を把握して自動発注するところまで持っていきたい」と語る。

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