グルメ情報サイトのぐるなびが、ジビエのPR活動に注力する。2021年11月1日から開催中の「全国ジビエフェア」の事業実施主体となり、ジビエの新規取扱店の獲得や消費者への訴求を目指す。背景には、コロナ後の少人数での外食シーンにおいて、ジビエが浸透しやすい傾向がある。

日本初のグランピングリゾート、星のや富士で提供されている「冬の狩猟肉ディナー」。シカやイノシシの肉のほか、イノシシ肉を熟成させたベーコンやソーセージも活用されている
日本初のグランピングリゾート、星のや富士で提供されている「冬の狩猟肉ディナー」。シカやイノシシの肉のほか、イノシシ肉を熟成させたベーコンやソーセージも活用されている
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 新型コロナウイルスの感染者数が減少傾向となり、復活の兆しが見えてきた外食産業。2021年11月からは、飲食店に対する営業時間の短縮要請も全都道府県で解除となり、今後は外食需要の増加が期待される。その中でも、最初に回復していくと予想されるのが「少人数での外食」だ。

身近な人との外食は「脱・定番」の傾向に

 飲食店情報サイトのぐるなびの消費者調査によると、21年7月に飲食店に入った予約のうち、86.7%が4名以下のものだった。ワクチン接種後やコロナが収束しつつあるこの時期は、まず同居している家族や近所の友人と一緒に、外食を希望する人が多いという。

 同調査では、少人数での外食シーンにおいて、「自分好みの料理や食材」「家庭では味わえない体験」を求める人が多いことも判明。定番の料理や飲み放題の種類が多いことよりも、特別感を重視する傾向にあった。

1000人に聞いた消費者アンケート。大人数と少人数のケースで、求められる傾向がかなり異なることがうかがえる
1000人に聞いた消費者アンケート。大人数と少人数のケースで、求められる傾向がかなり異なることがうかがえる
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 こうした消費者のニーズの変化を受け、ぐるなびが着目したのがジビエだ。ジビエとは「狩猟で得た野生鳥獣肉」を意味するフランス語で、シカやイノシシ、カモなどを使った料理は日本でも広く知られている。

 同社が21年1月に行った調査によると、ジビエは消費者からのニーズが高い割に、取り扱う飲食店が少ないという結果が出た。ジビエを「今後食べてみたい」と63.4%の消費者が回答したのに対し、全体の飲食店の64.0%がジビエを取り扱っていないという現状が見られた。

 感染者数が抑制されている現時点では、非日常感のある外食を求める消費者のトレンドも後押しし、ジビエは浸透しやすい傾向にあると言える。飲食店情報サイトのぐるなびにとって、飲食店にジビエの導入を促し、取扱店舗の情報を消費者に提供できればメリットは大きい。

 そこでぐるなびは、ジビエで外食産業を活性化させるため、21年11月1日から行われている「全国ジビエフェア」の事業実施主体となった。

期間限定・新メニューは強力な来店動機に

 全国ジビエフェアとは、農林水産省が全国的なジビエの認知向上・普及・需要拡大を目的として行っている取り組みで、ジビエを提供する飲食店や小売店、宿泊施設などの情報をPRする活動だ。ぐるなびコーポレート部門 広報グループ長の増田佳子氏によると、同社が全国ジビエフェアに応募する形で、今回の参加が実現したとのこと。

「全国ジビエフェア」特設サイト内のロゴ画像
「全国ジビエフェア」特設サイト内のロゴ画像
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 「当社は全国に20カ所ほど営業拠点があり、飲食店とのネットワークもあるので、ジビエを広げられる可能性がある。まず飲食店に取り扱い方を知ってもらいハードルを下げていただければ、より一般の方にも普及していくと思う」(増田氏)

 増田氏が語るように今回の事業では、飲食店を中心とした提供側と、消費者側の両方にジビエを訴求していく。

 飲食店に向けては、取り扱いが簡単で、ハードルが低いことをアピール。全国ジビエフェアの特設サイト内では、参加店舗の情報を発信するだけではなく、ジビエの仕入れや調理方法、レシピなどをまとめたセミナー動画を掲載した。

 「飲食店側のアンケート結果だと、(自分の)お店の料理に合わないという先入観もあった。和・洋・中、いろんなジャンルで提供できると知っていただくことで、考えが変わるきっかけになる」(増田氏)。店舗に従来あったメニューにプラスして、手軽にジビエ料理を提供することを勧める。

 こうした取り組みによりメニューのラインアップが増えることで、消費者の来店動機や満足度向上も期待できるとみる。21年7月に行われた同社の消費者アンケートでは、「フェアや新商品、期間限定メニューを目的に飲食店へ行く」と回答した人は63.7%。ランチで通っているお店を対象にした場合では、93.5%が「新商品や期間限定メニューを注文したい」という結果となった。

ジビエの消費が社会貢献に

 消費者に向けては、大きく2つの点からジビエの消費を促す。1つはジビエが健康や美容に良い点、もう1つはジビエの消費が社会貢献になる点だ。

 厳しい環境で育っている野生の鳥獣は、牛や豚などの家畜に比べ、ヘルシーなうえ栄養価が高い。高タンパクで低脂肪、鉄や亜鉛などのミネラルやビタミンB群が豊富だ。健康や美容に良い利点も併せて伝えることで、「若い方も含めて認知が広がるのでは」と増田氏。コロナ禍による健康意識の高まりも、ジビエの推進活動にとっては追い風になる。

豚肉に含まれている栄養素を1とした、シカ・イノシシ・牛肉の栄養素
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 また、ジビエを食べることは、野生鳥獣による農村や漁村の被害を抑えることにもつながる。農林水産省の19年度のデータによると、捕獲した鳥獣がジビエとして利用されているのは、捕獲頭数の約1割にとどまるという。ジビエの消費量が増えることで、地域の所得や捕獲意欲が向上し、農作物の被害額や生活環境の改善が期待できるわけだ。

 消費者がジビエ料理を楽しむことが、自然と地域貢献や循環型社会の実現に結びつく。こうしたエシカルな側面や背景も伝えることで、ジビエを消費することの社会的意義や魅力を発信していく。

 21年10月27日に行われた「全国ジビエフェア記者発表会」では、同フェスに参加している店舗の情報や思いを発信した。参加店舗もジビエを消費することのサステナブルな視点からの説明や、ジビエ料理の商品背景も併せて、消費者に訴求していく方針だ。

 参加企業の1つで、首都圏に140店舗を展開する総合フードサービス事業のラムラは、「持続可能な観点から考えて、イノシシ、シカというジビエ食材だけでなく、被害を受けている農作物にも着目して、地域の野菜やワインを取り込んだメニューを紹介していきたい」と発言。星野リゾートが運営するグランピング施設の星のや富士は、「農林業への被害が深刻化している中、ジビエだけでなく、季節ごとに旬の食材を組み合わせたコース料理を提供している。基本的に鹿肉は内臓以外全て使用している。骨や歯材なども加工品として全て使うことを大事にしている」と語った。

ラムラが提供している「国産天然イノシシと有機野菜のしゃぶしゃぶ」(写真はサンプル)
ラムラが提供している「天然国産イノシシと有機野菜のしゃぶしゃぶ」(写真はサンプル)
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星のや富士が提供している「冬の狩猟肉ディナー」(写真はサンプル)
星のや富士が提供している「冬の狩猟肉ディナー」(写真はサンプル)
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 消費者、飲食店、生産者の各方面に恩恵が生まれるよう、ジビエのPR活動に注力するぐるなび。プレオープン段階の21年10月26日時点で、すでに1123店舗から申し込みがあったという(同社が参加していない20年度の最終的な参加店舗数は1143)。自社の発信力とジビエの需要を生かし、コロナ後の外食産業を盛り上げることができるか注目だ。

(写真提供/ぐるなび)