イオンはプライベートブランド(PB)から新たに「トップバリュ プロのひと品」シリーズを展開し、計28品目を2021年10月11日より順次発売している。PB商品の売り上げを19年度の1兆円から25年度の目標2兆円まで伸ばす上で、トップバリュの品質へのイメージを上げる狙いが、同シリーズにはあるという。
シェフ監修で4ジャンル・28品目
2025年までにPBの売り上げを2兆円まで拡大する目標を掲げ、成長戦略を推進するイオンは、一流シェフの味を家庭で楽しめる、料理人監修による新シリーズ「トップバリュ プロのひと品」シリーズの新たな28品目を21年10月11日より順次発売。南麻布「分(わけ)とく山」の野﨑洋光総料理長、南青山「アクアパッツァ」の日高良実シェフ、南青山「慈華(いつか)」の田村亮介シェフらが監修を担当しており、全国の「イオン」「イオンスタイル」「マックスバリュ」など約3000店舗で取り扱う。
今回投入する28品目は、和食・イタリアン・中華の3ジャンルで、すべてチルド食品だが、21年9月1日からすでに販売しているロイヤルの主席料理長が監修した「トップバリュ プロのひと品」シリーズ4品目を合わせると全32品目、和食・イタリアン・中華・洋食の4ジャンルとなる。
「ワクチン接種をしても、外食には抵抗がある」66%
新シリーズは、長く続いた外出自粛生活の影響で、外食忌避が定着する中、料理人が作った食品へのニーズも高まっているという同社の分析から登場した。
マーケティングリサーチ会社のクロス・マーケティングが実施した「2021年7月 新型コロナウイルス生活影響度調査(食生活編)」によれば、「ワクチン接種による外食・会食への意識」としては、複数人の会食は「ワクチンを接種しても抵抗感がある」が66%とまだ高く、特に女性40~60代では「抵抗感がある」が各年代で7割を超えている。
こうした意識は外食市場の業績にも表れており、リクルート ホットペッパーグルメ外食総研の「2020年度外食&中食動向(20年4月~21年3月:東名阪夕食)調査」によれば、感染症拡大による外出自粛生活の影響で、20年度の3圏域計(首都圏・関西圏・東海圏)における外食市場規模は2兆1630億円、前年度比44.8%減と半分以下にまで縮小。一方で、20年度の中食市場規模は1兆4715億円、前年度比 19.8%増と伸長している。
「ワクチンの接種が進み、6割を超える国民が終えたが、いまだに外食忌避感は残っていると考えている。ただし自宅での食事が増えたことにより、『自宅では味わえない、より本格的な味を楽しみたい』というニーズは増大している」(イオントップバリュ 取締役 ブランド&コミュニケーション本部長 和田浩二氏)。そこで自宅で手軽に本格料理を楽しめる、一流料理人の監修による商品の開発に至ったという。
「毎日でも食べ飽きない」家庭料理に
商品開発本部デイリー商品部 中塚健氏によると、同シリーズは「飽きのこない、何度でも食べたくなる料理」を目指して開発。「一時的な流行などに左右されることなく、ぶれない信念を持ち、ワンランク上の商品として育てていきたい」と語った。
野﨑氏は、監修商品の1つである「牛すじ入りおでん」を例にとり、「素材を超えない味ということをすごく大事にしている。今までの味つけだと味が濃く、毎日食べると飽きてしまう。(ある意味)うますぎた。その点、『毎日食べて飽きない』味の開発を、今回、イオンさんと達成できたと思っている」とした。
同様に「素材の味を大事にするのが、今回の1つのテーマ。食材の良さを中国料理の技術や味付けで少し背中を押すようなイメージで全体を監修した」と田村氏。日高氏は「一口食べておいしい、そのまま続けて食べていただいて(最後まで)おいしかったと言っていただける料理を目指した」と語った。
「最高品質ブランド」ではない理由
イオンの「トップバリュ」ブランドは、前身ブランド「トップバリュー(TOPVALU)」登場から6年後の00年に発足し、14年から4ブランドを展開。現在は以下のような分類をしている。
(1)トップバリュ:毎日の暮らしにソリューションを提案する「差別化ブランド」。
(2)トップバリュ グリーンアイ:自然環境の持続可能性を追求する「オーガニックナチュラルブランド」。「オーガニック」「ナチュラル」「フリー フロム」の3シリーズがある。
(3)トップバリュ セレクト:毎日の暮らしに最上の体験を提供する「こだわり抜いた最高品質ブランド」。「お客さま満足度80%以上の評価」を得られた商品のみを発売。
(4)トップバリュ ベストプライス:トップブランド同等以上の品質で、地域一番の低価格を目指す、満足品質ブランド。
和田氏によると今回の「プロの料理人監修シリーズ」は(1)の差別化ブランドである「トップバリュ」の新製品だ。トップバリュは「ヘルス&ウエルネス」「こだわり」「サステナビリティー」をキーワードとして商品の開発を行っているが、「プロのひと品」シリーズはその中でも特に「こだわり」というキーワードに基づいた商品だという。
それならば、最高品質ブランドという位置付けの「セレクト」に入れるべきではないかという議論も社内にあったが、「セレクト」という位置付けをするよりも「差別化をしていく」「日々の生活に提案をしていく」ことに重きを置いているため、あえて「トップバリュ」ブランドでの発売になったという。
・ニーズの先取りがイオンの信条 他で買えないPB商品多数
和田氏は「トップバリュは4ブランドで食品だけでも3000品目以上の商品を販売しているため、『プロのひと品』シリーズが全体を大きく底上げするほどの売り上げに貢献することはないとみている」とした上で、「トップバリュの品質へのイメージを上げていくために大きな意味がある」と語った。
同社が21年10月6日発表した21年6~8月期の連結決算は、最終損益が4億円の赤字(前年同期は35億円の赤字)だった。PB商品の充実、特に需要の高い中食向けの商品の拡充は重要とみられる。
同社によれば今後は冷凍や冷蔵などの温度帯にこだわらず、常温の食品も視野に入れて、幅広いジャンルの商品開発をしていき、21年度内に50品目まで増やす予定。またイオングループの中のコンビニエンスストア事業「ミニストップ」や小規模店舗で販売する商品の開発もしていくという。
(画像提供/イオン)