持ち帰りすしチェーンの京樽(東京・中央)は2021年10月19日、およそ50種類ある京樽ブランドのすべての商品を刷新した。1932年の創業以来初めてという大規模なリニューアルで、すしダネ、酢飯の作り方から調理工程、店舗での温度管理まで、あらゆる部分を見直したという。

京樽がおよそ50種類のメニューを全面的にリニューアル。新メニューも追加して購買層の若返りを図る
京樽がおよそ50種類のメニューを全面的にリニューアル。新メニューも追加して購買層の若返りを図る
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 京樽は創業89年の上方ずしの老舗だが、「近年は購買層の高齢化が進んでいた。若い層を取り込めていなかった」と同社の石井憲社長は話す。今回のリニューアルの狙いの一つは購買層の若返りにある。

 リニューアルの目玉として新たに京樽のラインアップに加わったのが、同社の看板商品である「茶きん鮨(すし)」(220円、税込み、以下同)をアップグレードした「鯛茶きん鮨」(300円)と、鯛茶漬けに着想を得た「胡麻香る 鯛ちらし」(890円)だ。

「鯛茶きん鮨」は酢飯にタイの身やゴボウ、山椒(さんしょう)を混ぜ込み、薄焼き卵で包んだ一品。タイのあらから取っただしが効いている
「鯛茶きん鮨」は酢飯にタイの身やゴボウ、山椒(さんしょう)を混ぜ込み、薄焼き卵で包んだ一品。タイのあらから取っただしが効いている
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「胡麻香る 鯛ちらし」はタイの切り身の裏側にゴマだれが塗ってあるのがポイント。両面に塗ってしまうと見栄えが悪くなるというのがその理由だ
「胡麻香る 鯛ちらし」はタイの切り身の裏側にゴマだれが塗ってあるのがポイント。両面に塗ってしまうと見栄えが悪くなるというのがその理由だ
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 この2商品を監修したのは「ミシュランガイド京都2021」のグルメ部門で二つ星を獲得した老舗旅館、美山荘の4代目主人・中東久人氏。中東氏は「従来の『茶きん鮨』は一口で食べるには大きく、ちらしずしのようにバラしてから食べる形になっていた。それではすし全体のうま味を味わえない上、所作も美しくない。『鯛茶きん鮨』は少し小ぶりにし、一口で食べられるようにした。薄焼き卵の包み方もかわいらしく見えるように工夫している」と話す。これは若い女性を意識した商品開発とみていいだろう。

 また京樽では、定番商品である各種「押すし」も一つひとつのサイズを小さくし、その販売方法も好みのものを1貫単位(100円)で購入できるように変更した。京樽 商品本部 商品開発部長の丸山翔氏は「押しずしは上方ずしの代表だが、昔から形を変えてこなかった。特に女性から『一口で食べられないので食べ方が難しい』『いろいろな押しずしを食べたいが、1つのセットでおなかがいっぱいになってしまう』といった声が出ていた」と明かす。

 「KYOTO style.(キョートスタイル)」と名付けた押しずしの詰め合わせ3種類をラインアップに追加したのも、「いろいろな味を楽しみたい」という要望に応えたものだ。「KYOTO style.」では、上方ずしではあまり使われないアジやタイといった食材を取り入れ、すしダネを酢で締めたり火を通したりしてから提供する従来の上方ずしとは異なる、生ずしに近い押しずしを開発した。「アジやタイは刺し身で食べられる新鮮なものを酢にくぐらせている。上方ずしと江戸前ずしの中間的な、色鮮やかな押しずしに生まれ変わった」と丸山氏。

「KYOTO style.」は「市結(いちゆう)」(650円)、「紫乃(しの)」(800円)、「雛菊(ひなぎく)」(990円)の3種類をそろえる。生ずしのようでいて常温でも傷みにくい工夫が凝らしてある
「KYOTO style.」は「市結(いちゆう)」(650円)、「紫乃(しの)」(800円)、「雛菊(ひなぎく)」(990円)の3種類をそろえる。生ずしのようでいて常温でも傷みにくい工夫が凝らしてある
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 すしダネ、シャリ(酢飯)まで変えるのは全商品に影響する大刷新だ。京樽が今回のような大規模なリニューアルに踏み切れたのは、21年4月に、あきんどスシローなどを擁するFOOD & LIFE COMPANIES(フードアンドライフカンパニーズ、F&LC)の傘下に入ったことが大きい。

 F&LCでは京樽や回転すしのスシローといった同社の全ブランドで共通するキャンペーンを打ち出したり、21年7月からはダブルブランドの持ち帰りすし専門店「京樽・スシロー」十数店舗を立て続けにオープンしたりと、傘下ブランド同士の協業による相乗効果の最大化を図っている。

 「F&LCの一員となったことで商品の調達力、開発力が強化された。京樽の持つ伝統を大切にしつつ、F&LCの革新性を生かして新たな商品づくりに挑戦した結果が今回のリニューアル」(石井社長)

 京樽の今後について石井社長は「リニューアルで新たな一歩を踏み出すことができたが、現状に満足することなく、これまで以上においしさを追求していく。時代に即した上方ずしの在り方を追求しながら(約90年の歴史を持つ京樽が)今後も100年、200年と成長できる会社でありたいと思っている」と語っていた。

(写真提供/京樽)