国内プリントシール市場を独占するフリューが、2021年10月より新機種「猫と彼女。」を全国に順次設置する。多種多様な加工アプリやSNSがある中、今なお年間9種類の新機種をリリースし、業界をけん引している。ヒット作を生み出す秘訣やZ世代の傾向、業界に参入し続ける理由を聞いた。

フリューが2021年10月から設置する新機種「猫と彼女。」
フリューが2021年10月から設置する新機種「猫と彼女。」

 1995年にアトラス(東京・品川)が「プリント倶楽部」を発売して以来、10~20代の女性を中心に栄えてきたプリントシール機。全盛期の97年からおよそ四半世紀、現在では多くの企業が撤退して業界も縮小する中、国内市場をけん引し続けているのが業界最大手のフリュー(東京・渋谷)だ。

 同社が2020年夏に行った調査によると、プリントシール機設置台数シェアは国内の95.0%。21年3月期実績では、約1秒に1回の計算となる年間3000万回プレーされた。プリントシール画像を閲覧・取得できるサービス「ピクトリンク」には、21年3月末時点で約150万人の有料会員がいる。コロナ禍でアミューズメント施設が休業を強いられる期間もあったが、根強い人気を維持している。

 フリューは現在も年間9種類の新機種をリリースし、21年10月からは新機種「猫と彼女。」を全国に順次設置していく。今でも安定してプリントシール機を出し続けているメーカーはフリューだけだ。

Z世代はプリクラとアプリで「2次加工」

 フリューによると、同社の機種を含め、こうしたプリントシール機の利用者はZ世代の女性が中心。この世代は、InstagramやSNOWなどの画像加工アプリになじみが深い。プリントシール(通称「プリクラ」「プリ」などという)を撮る人は減少傾向にあると思われがちだが、フリュー管理本部広報部の疋田裕貴氏によると、加工アプリの登場で若年女性の楽しみ方はむしろ幅広くなったそうだ。

 「『アプリとプリのどちらかしか楽しんでいない』とよく思われがちですが、女の子は両方楽しんでいると思っています。自社の調査でも、アプリを楽しむ子ほどプリも楽しむ結果が出ています」(疋田氏)

フリュー管理本部広報部の疋田裕貴さん
フリュー管理本部広報部の疋田裕貴さん

 Z世代の女の子では、プリントシール機で撮影した画像を、さらにアプリで加工する「2次加工」が一般的だという。プリントシール機とアプリを併用して、写真に落書きしたり、写りを調整する人が多いようだ。

 「猫と彼女。」にも、2次加工を楽しむための2つの新機能がある。

 1つは、通信容量や画像容量をこれまでの約2倍にしたことだ。プリントシール機で撮影した画像を高画質でSNSに投稿できるよう、二重に加工しても画質が粗くならない技術を搭載した。

 もう1つは、顔が盛れた(加工された)まま、約3秒間の動画撮影ができるところだ。Instagramのストーリーズ(スライドショー形式で画像や動画が投稿できる機能)などを意識して、画像だけでなく動画も投稿できるようにした。

最新機種「猫と彼女。」。シール・動画・写り・画質すべてにこだわり、Z世代の要望を幅広く実現した
最新機種「猫と彼女。」。シール・動画・写り・画質すべてにこだわり、Z世代の要望を幅広く実現した

 加工アプリと共存する形で、ユーザーのニーズに応えるだけではない。手軽に撮影できるアプリがある時代だからこそ、プリントシールでは体験価値に重きを置いて魅力を伝えていく。

 「日常的にアプリで撮影を楽しむ中、プリはお出かけをしたときの記念で撮ることが多いです。ブース内でワイワイしたり、撮影してSNSにあげたりすることが、女の子の間では1つのコミュニケーションツールになっています」(疋田氏)

 簡単に撮影、投稿できるアプリとは違い、プリントシールは思い出づくりや友人との交流を深めるために利用されることが多い。わざわざ足を運んで、お金を払い、整った環境で撮影を楽しむ。こうした一手間がZ世代の女性にとっては特別に感じられ、アプリが主流の時代でも、プリントシールの醍醐味として受け入れられてきた。

 最近のZ世代は、「好きなアイドルやアニメキャラクターの誕生日に、お祝いの意味を込めてSNSに写真を上げたり、名前やメッセージを入れたプリを持ち歩く人がすごく多い」と疋田さん。今年の夏にリリースされたプリントシール機「97%」では、こうしたZ世代の傾向を反映。シールの形やふちの色や柄を選べる仕様にしてオリジナル感を演出し、SNSへの投稿を楽しんでもらえるような工夫も施した。

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