新型コロナウイルス感染症拡大の影響による内食需要の拡大により家庭での調理の負担が増え、手軽で便利な冷凍食品の需要が高まっている。その結果、多くの家庭で発生しているのが「冷凍庫パンパン問題」。限りある冷凍庫の収納力を補うための「セカンド冷凍庫」のニーズが急速に高まっている。従来の上開きタイプに加え、前開きタイプも普及している。

食材を大量にストックしたいこれまでの購買層で普及していたのは、上から積み重ねて収納する「上開き」タイプで、比較的容量が大きいものだった。写真は519L 上開き式冷凍庫「JF-MNC519A」。オープン価格、実勢価格は税込み14万800円(写真提供/ハイアールジャパンセールス)
食材を大量にストックしたいこれまでの購買層に普及していたのは、上から積み重ねて収納する「上開き」タイプで、比較的容量が大きいものだった。写真は519L 上開き式冷凍庫「JF-MNC519A」。オープン価格、実勢価格は税込み14万800円(写真提供/ハイアールジャパンセールス)
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7割の世帯で冷凍庫がパンパン状態

 2021年4月21日に発表された「冷凍食品の生産・消費について(速報)」(日本冷凍食品協会)によると、家庭用の冷凍食品の生産量は前年比111.4%、金額ベースで118.5%と、どちらも10年の調査開始以来最高値を記録した。逆に業務用は、数量ベースで前年比87.0%、金額ベースで85.9%と大幅に減少している。新型コロナウイルス感染症の拡大防止のために外食が減った結果、家庭での冷凍食品利用ニーズが急上昇しているのだ。

 しかし家庭用の冷凍冷蔵庫は冷蔵機能がメインであり、冷凍スペースの割合は半分から4分の1程度。そこで発生するのが、「冷凍庫パンパン問題」だ。ハイアールジャパンセールス(大阪市)が行った冷凍庫に関する調査では、子供と同居する家庭の約7割(68.1%)、共働き家庭では7割以上(70.7%)が、「冷凍庫がパンパン」だと回答している。

ハイアールは20年に前年比170%

 このデータを裏付けるように、ハイアールジャパンセールスの20年の冷凍庫販売実績(販売台数)は前年比約170%と大幅にアップ。21年も好調で、19年比約120%で推移しているという。

 ハイアールジャパンセールス東京支店 マーケティング部課長の松田完一氏によると、冷蔵庫や洗濯機などの白物家電市場は長く飽和状態が続いており、前年比で伸びることが多少あっても、大きく伸びることはなかった。しかし冷凍庫に関しては、20年4月に最初の緊急事態宣言が発令された前後で、急激に伸びたという。「これまでは海沿いの漁村など、鮮度が落ちやすい食材を大量にストックする必要のある限られた人たちからのニーズが多かった。しかし新型コロナウイルス感染症拡大の影響で巣ごもり需要が増え、冷凍食品販売数の増加などもあり、広く一般家庭にまでニーズが広がったのではないか」(松田氏)

小容量・前開き・ファン付きが人気

 同社の冷凍庫を見ると、内容積は66Lから519Lまで様々。519Lというとマグロが1匹丸ごと入る大きさで、海沿いのエリアで売れている。

 一般家庭では設置場所の問題もあり、比較的小さい100Lから150Lが売れ筋だという。セカンド冷凍庫の場合、冷蔵庫の中の冷凍室からあふれた食品を入れる、いわばサブ活用のため、大きな容量は必要ないのだろう。中には「コストコのピザが入るサイズ」と指定してくる購入者もいるそうだ。

 一般家庭用ならではなのが、前開きタイプがよく売れているということ。どこに何が入っているか一目で分かり、引き出し式のトレーですぐに取り出せる点が人気だ。また、霜取り不要のファン式であることも大きい。

ハイアールジャパンセールス マーケティング部課長の松田完一氏(写真提供/ハイアールジャパンセールス)
ハイアールジャパンセールス マーケティング部課長の松田完一氏(写真提供/ハイアールジャパンセールス)
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 ハイアールジャパンセールスの冷凍庫は、以前は容量の大きな上開きタイプが主流で、かつ霜取りが必要な直冷式しかなかった。前開きタイプもグローバルでは12年前から販売しており、数年前から日本でも展開はしているが、海外ではファン式のニーズがなかったため、直冷式を展開していた。このためファン式の製品を日本市場に向けて新規開発し、市場に投入することになったのだという。

 「長期間保存には温度が上がりにくい直冷式が向いているが、頻繁に食品を出し入れするのであればファン式が向いている」(松田氏)。価格的には、希望小売価格で2万円台から4万円台が売れ筋とのこと。

ハイアールで、一般家庭に最もよく売れているファン式で前開き式冷凍庫「JF-NUF138B」(138L/ファン式)。買い物カゴ4個分以上の収納が可能。「アルミトレイ」付きで、「急冷凍モード」と併せて使えば、素早く冷凍できる。オープン価格で実勢価格は税込み3万2850円(写真提供/ハイアールジャパンセールス
ハイアールで、一般家庭に最もよく売れているファン式で前開き式冷凍庫「JF-NUF138B」(138L/ファン式)。買い物カゴ4個分以上の収納が可能。「アルミトレイ」付きで、「急冷凍モード」と併せて使えば、素早く冷凍できる。オープン価格で実勢価格は税込み3万2850円(写真提供/ハイアールジャパンセールス
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業務用から家庭用に使いやすさが進化

 多種類の食品を頻繁に出し入れすることが多い一般家庭用の冷凍庫は、そのニーズに合わせて様々な進化を遂げているという。

 松田氏によると、進化のポイントは大きく2つ。1つは「温度調整機能」が付いていること。カチカチに凍らせてしまうマイナス16度からパーシャル冷凍まで、自分で温度を1度単位で切り替えられるものや、マイナス24度からプラス4度まで、6段階で切り替えられるものなどがある。冷凍させているものがあまりない時には、サブの冷蔵庫として使える。

 もう1つは、前開きが主流になってきたことによるトレーの工夫。例えばペットボトルを立てて入れられるようになっているが、これは夏場に凍らせたペットボトルの飲料需要が高まることから。また肉や魚を素早く冷凍できるよう、一番上の段に冷えやすいアルミトレーを付属しているタイプもある。

 「セカンド冷凍庫ニーズの高まりは大きなビジネスチャンスだが、新しい市場を創造することでもあるため、地道に認知を広げていきたい。まずは一般生活者にメリットをどう伝えていくかが課題」(松田氏)

食品を急いで冷凍する「急冷凍モード」付きの冷凍庫「JF-NU102C」(102L/直冷式)。オープン価格、実勢価格は税込み2万8770円(写真提供/ハイアールジャパンセールス)
食品を急いで冷凍する「急冷凍モード」付きの冷凍庫「JF-NU102C」(102L/直冷式)。オープン価格、実勢価格は税込み2万8770円(写真提供/ハイアールジャパンセールス)
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アイリスオーヤマは前年比2倍以上

 家電事業が売り上げ全体の58%を占めるアイリスオーヤマ(仙台市)も20年は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響による内食需要の増加を受けて、調理用家電の売り上げが伸びており、中でも電気圧力鍋やホットプレートは19年比3~4倍。

 小型冷凍庫も、同2倍の売り上げを記録したという。

 しかも「新型コロナウイルス感染症拡大の影響で工場を稼働させられなかったり、需要が多すぎて電子部品関係の調達が間に合わなかったりで、購入希望数に供給が追い付かない時期もあった」と、アイリスオーヤマ 大型家電事業部 統括事業部長の石垣達也氏は語る。つまり購入したくでもできなかった潜在顧客数を含めると、本来は2倍以上の伸び率だったことになる。

アイリスオーヤマ 大型家電事業部 統括事業部長の石垣達也氏
アイリスオーヤマ 大型家電事業部 統括事業部長の石垣達也氏
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 21年になってもその勢いは衰えず、2倍売れた前年の1.5倍ペースで伸び続けているという。その理由について「前年度の伸びによって、“セカンド冷凍庫”が家庭でも一般化してきたことが影響していると考えられる」と石垣部長は分析する。今まで“セカンド冷凍庫”の購入を視野に入れていなかった人も、購入者からそのメリットを聞く機会が増え、そのクチコミ効果で継続して購入者が伸び続けているというのだ。

現状で最もよく売れているという85Lサイズの「ガラス扉冷凍庫85L KUGD-9B-W」(税込み4万2800円)(写真提供/アイリスオーヤマ)
現状で最もよく売れているという85Lサイズの「ガラス扉冷凍庫85L KUGD-9B-W」(税込み4万2800円)(写真提供/アイリスオーヤマ)
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コロナ禍機に人気機種が様変わり

 同社の冷凍庫は現在、上開きタイプが5機種、前開きタイプが7機種、合計12機種で展開。コロナ禍以前の需要は、上開きタイプも前開きタイプもそれほど大きな差がなかった。しかし石垣氏は「コロナ禍を境に、様変わりした」と振り返る。家庭用の前開きタイプが爆発的に売れ行きを伸ばすようになったのに対し、上開きタイプの売れ行きはほぼ変わらなかった。つまり2倍以上という伸び率の中身はほぼすべてが、家庭用の前開きタイプなのだ。

 同社が家庭用の前開きの小型冷凍庫に力を入れ始めたのは、3年ほど前。共働き家庭が増え、週末のまとめ買いや、コストコなどでのビッグサイズ食品の購入増加に伴い、これまで冷蔵庫の主流だった400Lより大型の500Lがよく売れるようになった。

 ただし、約20万円から約30万円もする冷蔵庫の買い替えは、消費者にとって大きな負担。そこで、冷蔵庫の中でも特にスペースの必要性が増大している冷凍スペースに着目し、家庭用のセカンド冷凍庫の開発を開始した。通常、白物家電は開発を始めてから発売までに2年くらいはかかるが、セカンド冷凍庫は急ピッチで開発を進め、20年に家庭用の前開きタイプの小型冷蔵庫のバリエーションを増加。それがたまたま、コロナ禍での需要急増のタイミングと一致したという。

サイズ展開にアイリスオーヤマらしさ

 アイリスオーヤマの冷凍庫はサイズ展開も細やかだ。一般的な400Lくらいの冷蔵庫であれば、100Lほどの冷凍庫が付いている。同社はその冷凍庫に入りきらずオーバーしてしまう食品がどれくらいあるかを、生活者目線で考えて調査。4人家族で週に1度まとめ買いをする家庭であれば、60Lのセカンド冷凍庫があれば大丈夫だろうと考え、60L、85Lという小型サイズも展開している。

 また冷凍食品が進化し、利用率も上がっていることを踏まえ、冷凍食品によくあるサイズの商品がぴったり収納できるようにしているのも、アイリスオーヤマらしさといえる。

アイリスオーヤマの「冷凍庫 119L(KUSN-12A-W)」のボックス。深さが冷凍食品に多いサイズになっているので、ぴったり収納できる(写真撮影/桑原恵美子)
アイリスオーヤマの「冷凍庫 119L(KUSN-12A-W)」のボックス。深さが冷凍食品に多いサイズになっているので、ぴったり収納できる(写真撮影/桑原恵美子)
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コスト重視で小型タイプは直冷式に

 また引き出しがすべてボックス型で、トレー式を採用していないことも特徴の1つ。使い勝手を考えるとトレーもあったほうがいいように思うが、これには理由がある。

 前述のように、冷凍庫は霜取り不要のファン付きが人気だが、ファンを付けるとどうしても販売価格が高くなる。同社は小型の前開き冷凍庫をなるべく安価で作って早く普及させたいと考え、コストを重視。前開き5機種のうち、需要が多いとみられる小型2機種(60Lと85L)を直冷式にすることで、価格を抑えた。直冷式の場合、開閉時間が長くなると庫内の温度が上昇し、霜が付きやすくなる。そこで庫内の冷気を逃げにくくするため、すべてボックス式にしたという。

アイリスオーヤマのファン式冷凍庫で最小の冷凍庫 119L(KUSN-12A-W)。直冷式と同じ引き出し式のボックス4個に加え、オープンの棚が2カ所にある(写真撮影/桑原恵美子)
アイリスオーヤマのファン式冷凍庫で最小の冷凍庫 119L(KUSN-12A-W)。直冷式と同じ引き出し式のボックス4個に加え、オープンの棚が2カ所にある(写真撮影/桑原恵美子)
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21年2月発売の冷凍庫「冷凍庫142L(KUSN-14A-W)」(税込み5万4800円)、6月発売の「前開き冷凍庫 119L(KUSN-12A-W)」(写真、同4万9280円)、「前開き式ノンフロン冷凍庫 175L(IUSD-18A-W)」(同4万4980円)はファン式 (写真提供/アイリスオーヤマ)
21年2月発売の冷凍庫「冷凍庫142L(KUSN-14A-W)」(税込み5万4800円)、6月発売の「前開き冷凍庫 119L(KUSN-12A-W)」(写真、同4万9280円)、「前開き式ノンフロン冷凍庫 175L(IUSD-18A-W)」(同4万4980円)はファン式 (写真提供/アイリスオーヤマ)
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フードロス軽減にも貢献

 セカンド冷凍庫を持つメリットは、主婦の調理負担を軽くすることにとどまらない。冷凍食品のまとめ買いが可能になるので買い物の回数を減らすことができ、新型コロナの感染リスクを減らすことが期待できる。また冷蔵庫に付属している冷凍庫は上に積み重ねていくスタイルのため、下にある食品を見つけにくく、食べごろを逃して廃棄しがちだった。しかし前開きのセカンド冷凍庫であれば何が入っているか一目で分かるため、フードロスの軽減にもつながる。さらに最近は豪雨や台風などの被害で野菜の価格が高騰することが珍しくないが、冷凍野菜を大量に常備しておけば経済的でもある。

30品の冷凍食品が、「前開き冷凍庫 119L」のボックス4個で収納できた。ボックスの2/3ほどしか使用していないので、まだまだ余裕がある(写真撮影/桑原恵美子)
30品の冷凍食品が、前開き冷凍庫 119L(KUSN-12A-W)のボックス4個で収納できた。ボックスの2/3ほどしか使用していないので、まだまだ余裕がある(写真撮影/桑原恵美子)
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最大の課題は「スペース不足」の解消

 最大のネックは、家庭のキッチンにはすでに物があふれていて、「欲しいけれど置ける場所がない」という状況。特に首都圏の狭小住宅や賃貸住宅では、そのためにセカンド冷凍庫をあきらめざるを得ない層が多い。

 ハイアールジャパンセールスには天面を耐熱の樹脂にした冷凍庫もあり、電子レンジなどが上に置けると改めて注目されているという。またアイリスオーヤマも、21年11月には独自の工夫を盛り込んだ新製品の発売を予定している。「2台目の冷凍庫が普及していく中で最大のネックとなっている”場所問題”を解消するような商品を出せると考えている」(石垣氏)