セブン&アイ・ホールディングス傘下のイトーヨーカ堂が「イトーヨーカドー」初の取り組みとなる衣料品の回収キャンペーンを108店舗で行うと発表した。併せて再生糸を使用した秋冬ラインアップを紹介し、持続可能な生産と消費を広めるための活動の推進を示した。

イトーヨーカ堂が2021年9月28日に行った発表会には女優の羽田美智子さんが登壇し、衣料品の回収キャンペーンをPRした
イトーヨーカ堂が2021年9月28日に行った発表会には女優の羽田美智子さんが登壇し、衣料品の回収キャンペーンをPRした

利用者参加促す10%OFFクーポン

 イトーヨーカ堂は、2021年10月1日から24日まで、「イトーヨーカドー」初の取り組みとなる衣料品の回収キャンペーンを108店舗で行う。環境省が定める3R(廃棄物等の発生抑制=リデュース、再使用=リユース、再生利用=リサイクル)推進月間に合わせたものだ。

 このキャンペーンは、繊維から再生ポリエステル素材をつくる「RENU」プロジェクトを展開する伊藤忠商事との協業によるもの。店頭で回収した後、ポリエステル100%の衣料品についてはペレット化し、RENUパートナー再生糸工場にて原料の一部として活用。それ以外の衣料品についても、イトーヨーカドー指定のリサイクル工場へ集約する。また回収した衣料品を再生糸工場に投入するまではトレース可能だ。利用者参加型の服のリサイクルとして、「私とイトーヨーカドーが一緒にリサイクルに参加する」という意味を込めて「i:Recycle(アイリサイクル)」と名付けた。

 利用者は回収期間中、衣料品1点回収ごとに「婦人服・紳士服・子供服1点 10%OFF クーポン券」を受け取ることができる。回収対象となるのは衣料品(婦人服・紳士服・子供服)だが、肌着、靴下、パジャマ、エプロン、レザー、ダウンは回収対象外となる。なお合わせて傘のリサイクルキャンペーンも実施するという。

再生PETの商品を拡大

 セブン&アイグループは19年5月にESG(環境・社会・企業統治)、環境宣言「GREEN CHALLENGE 2050」を定めた。特に小売業として影響が大きい環境負荷低減の方針を明確にし、「二酸化炭素(CO2)排出量削減」「プラスチック対策」「食品ロス・食品リサイクル対策」「持続可能な調達」の4つのテーマを打ち出して、サーキュラーエコノミー(循環型経済)を推進している。

 その中でイトーヨーカドーが早くから取り組んでいるのがペットボトルのリサイクルで、12年から自動回収機を店頭に設置。21年2月末までにイトーヨーカドーをはじめグループ各社の店舗に合計1001台を設置し、20年度は合計約8700トンを回収。自治体やリサイクル業者など他企業とも連携を深め、再資源化、製品化まで取り組んできた。

 今回のキャンペーン実施についての発表会に登壇した、イトーヨーカ堂 経営企画室 CSR・SDGs推進部 総括マネジャーの小山遊子氏は、「リサイクルの回収スキームは、お客様が洗浄後のペットボトルを自動回収機に入れることで効率よく運搬に進み、その後のリサイクル業者への再資源化、メーカー側の製品化、そしてイトーヨーカドー店舗での仕入れ・販売につながっている」と利用者参加型であることを強調。なお利用者はリサイクルに参加するとリサイクルポイントを付与され、ポイントはたまると電子マネーの「nanaco(ナナコ)」のポイントに交換できる仕組みになっている。

 再資源化された再生PETを利用した商品展開は拡大しており、「セブンプレミアムでは再生PET樹脂100%のペットボトルを使ったお茶飲料を19年6月から販売。またグループで回収したペットボトルの一部を原料とする再生糸を使用した、機能性肌着も20年2月から販売している」(小山氏)という。

 そんな中、羽毛製品のリサイクル(20年3月から常設)や、傘のリサイクル(21年3月、6月)に続き、衣料品の回収キャンペーンとなった。

イトーヨーカ堂 経営企画室 CSR・SDGs推進部 総括マネジャーの小山遊子氏
イトーヨーカ堂 経営企画室 CSR・SDGs推進部 総括マネジャーの小山遊子氏

あくまでも肌触りや着心地で選ばれる

 発表会ではRENUを使った秋冬ライフスタイル商品も紹介した。衣料品や住まいの品におけるイトーヨーカ堂のSDG'sの取り組みに触れ、リサイクル素材採用商品のこだわりを衣料雑貨部 シニアマーチャンダイザーの神戸智子氏が説明。神戸氏は「快適な着心地」「毎日着られる利便性」を強調した。

 その理由を詳しく聞いたところ、「まずお客様の生活シーンに寄り添うことが大前提にある。環境配慮の素材は重要だが、毎日着ていただくために、様々なアンケートを実施したり競合の調査をしたりした結果、肌触りや着心地で選ぶ人が多いことが分かった」と神戸氏。

 また「われわれのリアル店舗でも、環境配慮素材であることは購入のきっかけの1つにはなるものの、購入の決め手になるのは商品を見て手に取って、その肌触りや試着での着心地に共感してということが多いと感じている」(神戸氏)。このことから、ニーズを深掘りし、どのようなシーンに合わせるかを想定して商品を作り、あくまでも肌触りや着心地で選ばれるように努めたという。

同社衣料雑貨部 シニアマーチャンダイザーの神戸智子氏
同社衣料雑貨部 シニアマーチャンダイザーの神戸智子氏

 例えば、フリースやプルパーカーは近隣まで出かけることを想定しながらも、家ではリラックスできるように、滑らかな肌心地を追求。また、女性衣料については、イトーヨーカドーの顧客で一番多い40代、50代のニーズに応えるべく、3Dスキャナーを使用して3000人以上の体形を計測したデータを基に3Dパターン「3D BODY FIT」を設計。21年春商品から3D BODY FIT採用しているが、「いつもの服より着やすい、窮屈さを感じないなど実感していただいていると思う」(神戸氏)という。

「2021 秋冬イトーヨーカドー環境配慮型商品」の一例の展示も行われた。回収ボックスの足元には再生糸も展示
「2021 秋冬イトーヨーカドー環境配慮型商品」の一例の展示も行われた。回収ボックスの足元には再生糸も展示

環境配慮素材でも価格を維持

 同社では中長期的には環境配慮素材の使用や、生産過程における持続可能性の実現を目指すことは、すでにベースとなっていて、「環境配慮することは小売店の衣料品開発として当然のことと考え、挑んでいる」(神戸氏)という。

 自社商品については衣料品、インナーウエア、寝具というカテゴリーの中でそれぞれ約2割がリサイクル素材を使用しており、「再生ポリエステル素材のRENUに関しても拡大を計画している」(神戸氏)。リサイクル素材を使用した商品開発は加速度的に進められているというが、価格は抑えられており、これは幅広いカテゴリーに展開することで、コストを吸収するよう努めているからと考えられる。

 「服から服をつくる衣類のサーキュラーエコノミー」は、環境省が20年12月〜21年3月に、日本で消費される衣服と環境負荷に関する調査を実施し、21年6月にその結果をまとめたものを公表したことで、注目が高まっている。もちろん各社とも以前から「服から服をつくる」取り組みは行ってきており、例えば、ファーストリテイリング傘下のユニクロは06年から「全商品リサイクル活動」として進めてきた取り組みを発展させ、20年9月に購入者が不要になったユニクロの服を回収し、服に新しい価値を与えて次へと生かすユーザー参加型の取り組み「RE.UNIQLO」をスタート。服を再利用した新商品第1弾として 「リサイクル ダウンジャケット」を同年11月に発売している。

 今年はさらに「服から服をつくる」取り組みが目立つようになり、ファーストリテイリング傘下のジーユーは、日本環境設計(神奈川県川崎市)が企画・運営する「BRING」ブランドの再生ポリエステル樹脂を使った「ニットポロシャツ」を21年3月に発売。イオンは同社のエシカルなファッションブランド「SELF+SERVICE」から、やはりBRINGの再生繊維「BRING Material」を一部用いた夏物4品目(計8種類)を21年6月から本格展開している。

 イトーヨーカ堂の発表会には、女優の羽田美智子も登壇した。再生糸を使用したトレーナーを着た羽田は「再生糸を使用していると、これまで自分たちが着てきた服に比べそん色があるのではと思うかもしれないが、そのようなことはなく、むしろ全く違う新しい素材という感覚で、着心地が良い。空気をまとうような軽さで、風合いが柔らかく驚く。環境にもよく配慮された商品を選ぶ、次の時代に突入したのだなと思った」と感想を述べた。

 また羽田はオンラインショップ「羽田甚商店」の店主としても活動しているが、「SDGsを推奨する会社との取引などにより、われわれもSDGsに参加できているという意識が持てる」とのこと。SDGsに参加したいと思っても何ができるか分からないと感じたら、「SDGsを推奨している会社の応援をすることで一緒に取り組めるのでは」と、キャンペーンへの参加を推奨した。

羽田は「空気をまとうような軽さ」と着用したトレーナーを評した
羽田は「空気をまとうような軽さ」と着用したトレーナーを評した
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