アパレル製品の企画、製造、販売を行うグラニフ(東京・渋谷)が2021年9月8日に旗艦店となるグラニフ原宿店をオープン。10月1日にはEC(電子商取引)サイトを全面リニューアルした。今後は商品カテゴリーを増強し、5年後には年間売上高約300億円を目指す。

2021年9月8日にオープンした都内最大規模となる旗艦店グラニフ原宿店。東京メトロの明治神宮前駅から程近い、明治通りに面した場所に位置する(写真提供/グラニフ)
2021年9月8日にオープンした都内最大規模となる旗艦店グラニフ原宿店。東京メトロの明治神宮前駅から程近い、明治通りに面した場所に位置する(写真提供/グラニフ)

「Tシャツ」から「ライフ」へ

  グラニフ(旧名はグラフィス)といえば、白地に赤文字で「Design Tshirts Store graniph」と書かれたロゴが印象的なSPA(製造小売業)ブランドだ。2000年に東京・下北沢に「グラニフ1号店」をオープンして以来、07年にはアジア諸国(台湾、香港、シンガポール)、08年にはオーストラリアにも出店。17年には国内店舗が100店を超えている。

 扱ってきたのは主にアパレルアイテムだ。Tシャツをキャンバスに見立て、グラフィックを中心としたオリジナルデザイン、あるいは世界中のアート、漫画やアニメで知られる人気キャラクター、絵本など多様なコラボレーションデザインをプリントして販売。ほかにはポロシャツ、パーカー、シャツ、トートバッグなども展開してきた。

 特にオリジナリティーのあるグラフィックデザインや、コラボアイテムが人気だ。またTシャツは2000~3000円前後、パーカーは5000~6000円前後で、リーズナブルな価格帯も支持されている要因だろう。

 そのグラニフが、21年9月8日に約185平方メートル(56坪)の、同社としては都内最大規模となる旗艦店、グラニフ原宿店をオープン。これに合わせて、ロゴデザインを変更。店舗・商品コンセプトもこれまでの「デザインTシャツストア」から「グラフィックライフストア」へとリブランディングした。また併せて10月1日に公式EC(電子商取引)サイトを全面リニューアルすることを発表した。

オンデマンドサービス開始

 原宿店オープンの発表会に登壇した村田昭彦社長は、「今後はブランドとして、Tシャツなどのファッションアイテムだけでなく、グラフィックデザインを通じた豊かな暮らしを生み出したいと考えている」と説明。例えば、「おうち時間」を充実させるための生活雑貨や、ジェンダーの多様性に合わせたユニセックスなアイテムなど、「新しい絆やコミュニケーション、より良い習慣をつくり暮らしを彩る」(村田社長)ような商品を販売していくという。

 原宿店で扱うのはグラニフの店舗中、最大規模となる約450型のアイテム。21年5月に先行販売したグラフィックスニーカーなども並ぶ。

白を基調とした内装。グラフィックアイテムが主役になるような空間をイメージしたという(写真提供/グラニフ)
白を基調とした内装。グラフィックアイテムが主役になるような空間をイメージしたという(写真提供/グラニフ)
原宿店限定先行販売のグラフィックスニーカーは7700円、グラフィックスマホケースのiPhone SE用は2750円、iPhone 12用は3300円、グラフィックマグカップは1980円(すべて税込み)(写真提供/グラニフ)
原宿店限定先行販売のグラフィックスニーカーは7700円、グラフィックスマホケースのiPhone SE用は2750円、iPhone 12用は3300円、グラフィックマグカップは1980円(すべて税込み)(写真提供/グラニフ)
21年8月に初展開したベビーアイテムや、人気のキッズ商品も並ぶ(写真提供/グラニフ)
21年8月に初展開したベビーアイテムや、人気のキッズ商品も並ぶ(写真提供/グラニフ)

 原宿店オープンに際し、オンデマンドプリントサービスのイメージ・マジック(東京・文京)との協業でポップアップストア「graniph Graphic Factory」を9月8~20日まで期間限定で併設。これはオンラインストア上で100種類に及ぶグラニフのグラフィックアーカイブがプリントされたアイテムを選び、受注生産、1週間以内に届ける新サービス「graniph Graphic Factory」の先行販売の場ともなっていた。

 同サービスは、ECサイトのリニューアル当日である10月1日に開始。自分の気に入ったデザインとカラーが選べるオンデマンドサービスは、グラニフとしてはオリジナリティーを発揮しやすく人気を得そうだ。

期間限定で開設されていたポップアップストア「graniph Graphic Factory」。希望者が選んだデザインをイメージ・マジックのガーメントプリンター「GTXpro」でプリントしていた
期間限定で開設されていたポップアップストア「graniph Graphic Factory」。希望者が選んだデザインをその場でプリント。イメージ・マジックによれば、使用プリンターはガーメントプリンター「GTXpro」

年間売上高を5年で3倍の300億円

 村田社長は中期方針にも触れた。「グラフィックに特化し、他ブランドとは一線を画す品ぞろえと、高いNPS(Net Promoter Score、顧客ロイヤルティーを測る指標)を背景に、年間売上高を5年で300億円、現在の約3倍に拡大する」とし、チャネルシェアは現在のリアル店舗73%、EC(電子商取引)27%から、5年後には各50%にしたいという。

 商品カテゴリーの拡充は、売上高拡大への布石といえるだろう。アパレル限定の展開からグラフィックを軸にした服飾雑貨、生活雑貨へと商品ラインアップを増やし、さらにカテゴリー開発を継続的に進め、やはり5年後にはアパレルと非アパレルの売上比率が同等になることが目標だ。

 そのために実店舗も変えていく。これまでのグラニフでは50~70平方メートルの店舗が多かった。しかし「今後出店する店舗に関しては、約3倍の広さとなる150~200平方メートルを標準店とし、今期は20店舗、以降、毎年20~30店舗、標準型の店舗を展開していきたいと考えている。また300平方メートル程度の大型店舗も予定している」と村田社長。「店舗を体験の場と捉え、店舗においてグラフィックを通じた心躍る体験をしてもらうため」(村田社長)という目的が大きいが、新型コロナウイルス感染症の拡大により店内での対人距離を確保する必要性が出たこともあるだろう。

 ECサイトのリニューアルに関しては、現在いる約100万人の会員に対し、UI(ユーザーインターフェース)を改善し、UX(ユーザーエクスペリエンス)を向上。例えば店舗受け取りなどの連動サービスの提供など、ユーザーの選択肢を増やしていく。オンラインを利用する価値を高めていき、売り上げ向上につなげたい考えだ。

標準店のオープンはすでに始まっており、21年9月度は東北最大級の駅ビル型ショッピングセンターエスパル仙台 本館1階にオープンしたエスパル仙台店(写真)のほか、ららぽーと沼津店、イーアスつくば店、イオンレイクタウンmori店を新規オープン。また、阪急西宮ガーデンズ店をリニューアルオープンした(写真提供/グラニフ)
標準店のオープンはすでに始まっており、21年9月度は東北最大級の駅ビル型ショッピングセンターエスパル仙台 本館1階にオープンしたエスパル仙台店(写真)のほか、ららぽーと沼津店、イーアスつくば店、イオンレイクタウンmori店を新規オープン。また、阪急西宮ガーデンズ店をリニューアルオープンした(写真提供/グラニフ)

EC事業拡大のため社長の手腕に期待

 グラニフは20年1月に投資ファンドの丸の内キャピタルが管理・運営する丸の内キャピタル第二号投資事業有限責任組合が株式を取得したことを発表。新型コロナウイルス感染症の拡大直前ではあったが、すでに「国内におけるさらなる店舗展開や、EC事業の拡大により、顧客基盤の拡大と事業のさらなる成長」を目指すとしていた。

 総務省統計局家計調査によれば、20年の1世帯あたりの「衣類、服装雑貨」の年間平均支出は11万6008円と、前年比でマイナス18.1%と大幅減。その中で、20年の「衣類、服装雑貨」カテゴリーにおける、BtoCのECの市場規模は2兆2203億円で、前年比16.25%上昇しているという(経済産業省が21年7月に発表した「電子商取引に関する市場調査」より)。

 グラニフにとって今後のEC事業の拡大は売り上げ向上の必須条件だ。村田社長は20年9月に就任したが、オンワード樫山、ネットプライス、カフェグローブ・ドット・コム取締役最高執行責任者(COO)を経て、ベイクルーズに入社しEC事業を成功させた実績を持つ。今後は村田社長の手腕がどう生かされるかに期待がかかる。

グラニフ原宿店の店内を案内する村田社長
グラニフ原宿店の店内を案内する村田社長
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