サッポロビールは2021年9月15日、「エビス」ブランドの下期戦略説明会を行い、今後のビジョンを発表した。ポイントは「これまで飲食店を通して獲得していたユーザーとの接点をどう補っていくか」だ。コロナ以降も見据えた、競合にはないブランドらしさを訴求する戦略に出る。

エビスブランドが今年刷新したブランドコンセプト(画像は説明会でのスライド資料から抜粋)
エビスブランドが今年刷新したブランドコンセプト(画像は説明会でのスライド資料から抜粋)
[画像のクリックで拡大表示]

 サッポロビールが展開する「エビス」ブランドは、今年2月にブランドコンセプトをリニューアルした。ブランドのキャッチコピーも、これまでの「ちょっと贅沢(ぜいたく)なビール」から、「Color your time! エビスビールの楽しさ、もっと多彩に。」へと変えた。

 ブランドコンセプトの刷新について、サッポロビールマーケティング本部ビール&RTD事業部長の武内亮人氏は「初年度の手応えを感じている」と語る。上半期の実績は、エビスブランド缶で前年比104.6%、ビール缶全体では113.1%を記録。20年10月の酒税改正で、ビールにかかる酒税が軽減されたことも後押しし、好調な出だしとなった。

サッポロビールマーケティング本部ビール&RTD事業部長の武内亮人氏
サッポロビールマーケティング本部ビール&RTD事業部長の武内亮人氏
[画像のクリックで拡大表示]

 今後も新しいコンセプトで、コロナ以降も含めた中期的な視点でマーケティングを展開していくという。「コロナ禍にかかわらず、様々なツールやオンデマンドのコンテンツが進化して、生活や働き方の多様化が進んでいる。そんななか『自分の時間を充実させて、有意義なものにしたい』というニーズが高まっている」と武内氏。

 サッポロビールはこうしたユーザーの動向の変化を、エビスブランドなど多彩な商品でくみ取っていく。しかし、武内氏は「我々も競合も、様々な種類のビールの提案が増えている」と語る。缶商品カテゴリーの充実だけでは、エビスブランドらしさが伝わらないとした。

 より深くブランドらしさを訴求するため、「リアル体験とデジタルを融合させた『進化型コミュニケーション』を実践していく」と武内氏は述べた。

コロナ禍でも飲食店の存在は必要不可欠

 武内氏が言う「進化型コミュニケーション」とは、「ユーザーの飲酒体験を向上させること」「ブランドとの接点を増やすこと」の2つを意味する。この「進化型コミュニケーション」を実現するには、ユーザーに「飲酒時間が楽しく充実している」と感じてもらうことが重要だという。

 お酒を飲んでもらう体験価値を高めるには、商品自体の魅力に加えて、飲食店との提携や独自のサービスが必要だとサッポロビールは考えた。

 「(体験価値や顧客接点を)商品で実現できる部分も多々あるが、エビスブランドは(商品を飲用する際の)サービスや時間を豊かにしていくということを、総合的にご提案していこうと考えている」(武内氏)

 サッポロビール広報担当によれば、ビールブランドにおける顧客との最大の接点は、「外で飲む生ビールの感動体験にある」という。例えば、缶商品の「サッポロ生ビール黒ラベル」は6年連続で売り上げを伸ばし続けている。その理由を調査したところ、外食でおいしいと感じた体験をきっかけに、スーパーなどで缶商品を購入しているユーザーが多いことが明らかになった。

 「(コロナ禍では)家庭用ニーズに目がいきがちだが、業務用・外食体験はビールブランドのエビスにとって非常に重要なものだ」と武内氏。コロナ禍においても、飲食店と協力していく方針は変わらない。

 ただ、今のコロナ禍では外でビールを飲む機会は減り、ユーザーとのコミュニケーションもうまく測れない。いわば、キーワードの「リアル体験とデジタル」における、「リアル体験」の部分が縮小している。

 そこでサッポロビールは、「デジタル」の部分に注力して、ユーザーの体験価値と新しい接点を生み出す施策を取った。

自分一人の時間をビールで豊かに

 現在サッポロビールが着手している、デジタルを用いたキャンペーンは大きく2つ。1つ目はエビスブランドの業務用商品を扱っている飲食店のレシピを、ツイッターで紹介するというもの。「お店気分でエビスを楽しめる」をコンセプトに、飲食店のレシピを家庭用にアレンジしたメニューで、ビールと一緒に楽しんでもらうのが狙いだ。

 2つ目はエビスビール記念館(130年にわたるエビスの歴史を紹介するギャラリー)のオンラインツアーだ。エビスビールの知見を深めてもらいつつ、ジャズライブや朗読会も実施して、ビールを飲みながら飲酒時間を満喫してもらう目的だ。

左が10月7日に行われるオンラインツアー「エビスビール記念館 秋の夜長の特別編」、右が現在実施されている「絶品エビスの店料理人監修 おうちレシピ」キャンペーン(画像は説明会でのスライド資料から抜粋)
左が10月7日に行われるオンラインツアー「エビスビール記念館 秋の夜長の特別編」、右が現在実施されている「絶品エビスの店料理人監修 おうちレシピ」キャンペーン(画像は説明会でのスライド資料から抜粋)
[画像のクリックで拡大表示]

 「コロナ以前の『ビールでみんなで乾杯して、同じ時間を共有する』楽しみ方だけでなく、『自分一人の時間を、ビールで豊かなものにしていく』という価値観を、サービス全体で考えていきたい」(武内氏)

 また、飲食店の紹介制度などを盛り込んだ、ユーザーとつながるプラットフォームを構築すると明かした。詳細の発表は22年以降になるものの、コロナが収束した未来を見据えて、より綿密に飲食店やユーザーとの連携を図っていく方針だ。

1000年以上続く生産地の物語をウリに

 新しい形での顧客接点を模索するエビスブランドだが、缶商品にも力を入れていく。「これからもある程度、外食が制限された環境が続く」と武内氏も語るように、長期化したコロナ禍で、家飲みのニーズにも対応する。

 9月7日には「琥珀(こはく)エビス プレミアムアンバー」をリニューアル発売。季節やシーンに合わせた、本格的なビアスタイル商品を拡充した。加えて、11月24日には数量限定商品「エビス ホップテロワール」を発売する。

2021年11月24日に発売予定の「エビス ホップテロワール」。豊かなシングルホップの味わいが特徴的
2021年11月24日に発売予定の「エビス ホップテロワール」。豊かなシングルホップの味わいが特徴的
[画像のクリックで拡大表示]

 新発売となる「エビス ホップテロワール」は、名産地ドイツバイエルン州の畑から採れたアロマホップを100%使用。製造過程では3回ホップを加えて、最大限にその苦味や風味を抽出した。

 同商品のウリはおいしさだけでなく、開発経緯にもある。1000年以上続く歴史ある生産地と協働契約栽培を行うなど、商品の物語が壮大だ。こうした背景を伝えるため、缶の側面には2次元コードを貼り、読み込むとホップ畑の映像が360度広がる仕掛けを搭載した。ホップにまつわる豆知識や生産者のインタビュー動画も掲載し、商品の製造過程がわかるコンテンツを盛り込んだ。

 飲食店との提携、飲酒時間を豊かにするサービス、充実した缶商品。これら施策から、顧客接点を総合的に提案していくサッポロビール。コロナ禍で外食体験が減少しているなか、これまでにないサービスやキャンペーンで、中長期的にユーザーとの関係を強固なものにしていく。

(写真提供/サッポロビール)