スポーツ用品大手のアルペンは、全国に展開するゴルフ用品専門店「ゴルフ5」の初心者向け新業態店舗「初心者専用ゴルフ5」を新宿にオープンした。密を避けられるスポーツとして注目を集めるゴルフだが、なぜターゲットを「初心者」に絞ったのか。狙いや今後の課題を聞いた。

JR新宿東南口の「Flags(フラッグス)」5階にオープンした「初心者専用ゴルフ5」新宿フラッグス店。2021年8月26日~22年5月末までの期間限定で出店している(写真提供/アルペン)
JR新宿東南口の「Flags(フラッグス)」5階にオープンした「初心者専用ゴルフ5」新宿フラッグス店。2021年8月26日~22年5月末までの期間限定で出店している(写真提供/アルペン)
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 2021年8月26日、新宿東南口のファッションビル「Flags(フラッグス)」の5階に「初心者専用ゴルフ5」がオープンした。テーマは、「日本一ゴルフをはじめやすいゴルフショップ」。ゴルフ初心者は、「何から始めたらよいのか」「どんなものをそろえればよいのか」「ゴルフのマナーが分からない」など、数多くの不安を持つ。そこで、初心者が楽しく、安心してゴルフを始められるよう、専用の「初心者相談カウンター」や初心者向けのリーズナブルな商品をそろえた。

「初心者相談カウンター」には専任のコンシェルジュを配置。「どんなクラブを選べばいいのか」「ゴルフのマナーや服装が知りたい」など様々な相談に応える。また初めてコースに出る人向けに用意されたレッスンと食事付きで5500円(税込み)の「GOLF DEBUT TOUR(ゴルフデビューツアー)」にも申し込める(写真提供/アルペン)
「初心者相談カウンター」には専任のコンシェルジュを配置。「どんなクラブを選べばいいのか」「ゴルフのマナーや服装が知りたい」など様々な相談に応える。また初めてコースに出る人向けに用意されたレッスンと食事付きで5500円(税込み)の「GOLF DEBUT TOUR(ゴルフデビューツアー)」にも申し込める(写真提供/アルペン)
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 アルペンはゴルフ専門店の「ゴルフ5」を全国で展開しているが、これまで明確な初心者向けコーナーを店舗内に設置したことはなく、独立した売り場をつくるのは初の試みだという。アルペン専務執行役員戦略企画本部長兼マーケティング本部長兼店舗開発本部長の二十軒翔氏によれば「初心者からの問い合わせが増えた上に、全体的に売り上げが伸びていた。その中で、初心者が購入するクラブセットの売り上げが特に増えていると感じていたため、より手軽に安心して始めてもらえるよう、初心者向けの店舗を出店した」という。

新型コロナ禍で若者・女性の需要急増

 ではなぜそれほどまでに初心者の売り上げが伸びているのだろうか。

 その理由について同氏は、まず「新型コロナウイルス感染症の拡大の影響」を挙げ、「ゴルフ市場は伸びてきている」と説明。21年8月に発表された同社の「2021年6月期決算説明資料」の「セグメント別売上高」によると、ウインタースポーツが前年比85.4%と減少、一般スポーツは同102.6%と微増だったのに対し、ゴルフは同117.8%と伸びている。その要因を同資料では、次のように説明している。緊急事態宣言によって県をまたぐ移動や旅行を自粛する動きが広まる中、ゴルフは密を避けられるスポーツとして注目され、若いプレーヤーも増加したこと。また主要メーカーと協業した販促企画の展開や売り場演出の強化、「初心者応援宣言」として新型コロナウイルス感染症の拡大をきっかけにゴルフを始めた層へのサポートを強化したことが功を奏したとしている。

 これは各所のデータからも明らかで、経済産業省特定サービス産業動態統計調査では、ゴルフ場やゴルフ練習場の利用者数は毎月増加傾向だ。また、総務省の家計調査(20年)の世帯主の世代別に見たゴルフプレー代で見ると、全体としては前年比減ながら、20~40代では支出が増加しているという。

 続いて挙げたのが、「若者のゴルフに対するイメージの変化」だ。「若者のゴルフに対するイメージが、会社の上司に連れられて行く接待のようなものから、友達同士で楽しみながら遊べる身近なレジャーに変化している」と同氏。若い世代を中心に、コロナ禍で密も避けられる身近なスポーツと受け止められるようになったことが、利用者の増加に一役買っているのだろう。

アルペン専務執行役員戦略企画本部長兼マーケティング本部長兼店舗開発本部長の二十軒翔氏
アルペン専務執行役員戦略企画本部長兼マーケティング本部長兼店舗開発本部長の二十軒翔氏
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初心者ならではの悩みに応える工夫

 初心者専用ゴルフ5には、若者やゴルフ初心者を引き込むための工夫が数多く盛り込まれている。

 その1つが初心者相談カウンターだ。専属のコンシェルジュを配置し、商品の購入サポートからレンタルクラブセットの受け付け、初心者向けの練習場やコースの案内、ゴルフ場でのドレスコードやゴルフ用品の使用法、スコアアップの仕方といった相談まで、初心者ならではのあらゆる悩みに対応する。

 またスイング計測システムを店舗内に導入。試打コーナーで、ゴルフボールを打ったときの飛距離やヘッドスピード、左右のブレ、軌道などを数値で測れるようになっている。この情報に基づき、専用のスタッフが、試打に使ったクラブよりもう少し軽めがいいか、重めがいいかなど、適した道具選びのサポートをするという。

 スイング計測システムそのものは通常のアルペン5にも設置されており、細かい計測情報を確認できるようになっているが、初心者が細かな数字に圧倒されないように、顧客に表示する情報はあえて絞ってシンプルにし、分かりやすくしたのがこの店舗ならではの特徴だ。

初心者は、自分にどんなゴルフクラブが合うか分からない。そこで、試打コーナーでいくつかクラブを持ち替えて試し打ちをすることで、自分に合った商品を選べるようになる
初心者は、自分にどんなゴルフクラブが合うか分からない。そこで、試打コーナーでいくつかクラブを持ち替えて試し打ちをすることで、自分に合った商品を選べるようになる
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店舗内に設置されたスイング計測システムの顧客側の表示。顧客が目にするのは飛距離などを含めたシンプルなデータのみだ
店舗内に設置されたスイング計測システムの顧客側の表示。顧客が目にするのは飛距離などを含めたシンプルなデータのみだ
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スイング計測システムのスタッフ側表示。より細かなデータが示されている
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 もう1つの工夫が、商品ラインアップの幅広さだ。ゴルフクラブはセットで数十万円になることも珍しくなく、初心者にはかなりハードルが高い。そこで、ドライバー、アイアン、パター、キャディーバッグもしくはゴルフケースなどがセットになった「新品クラブセット」を設定。さらにアウトレット商品など、初心者でも手に取りやすい価格帯の商品を多数用意した。

ドライバー、アイアン、パター、キャディーバッグもしくはゴルフケースなどが1セットになった「新品クラブセット」はアウトレット商品など、手に取りやすい価格の商品を用意している
ドライバー、アイアン、パター、キャディーバッグもしくはゴルフケースなどが1セットになった「新品クラブセット」はアウトレット商品など、手に取りやすい価格の商品を用意している
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ゴルフのためだけではないウエア販売

 ゴルフウエアやシューズも、ファッション性の高さや若年層が手に取りやすいカジュアルさを意識し、普段使いもできる商品やブランドをピックアップ。男性のゴルフウエアというと、ポロシャツにスラックスという鉄板スタイルを思い浮かべる人が多いかもしれないが、「今持っているウエアを活用してゴルフスタイルを提案できるようにした」と二十軒氏。カジュアルシャツにジョガーパンツという、日常着にも他のスポーツにも着回し可能なコーディネートで、「ゴルフのためだけ」ではなく、普段も使えるものとして購入できる。

BEAMS GOLF(ビームス ゴルフ)やアディダス、OAKLEY(オークリー)、DESCENTE(デサント)、期間限定取り扱いであるUNBIND(アンバインド)などウエアは若年層が手に取りやすいブランドが並ぶ
BEAMS GOLF(ビームス ゴルフ)やアディダス、OAKLEY(オークリー)、DESCENTE(デサント)、期間限定取り扱いであるUNBIND(アンバインド)などウエアは若年層が手に取りやすいブランドが並ぶ
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 ブランドとしてはBEAMS GOLF(ビームス ゴルフ)やアディダス、OAKLEY(オークリー)、DESCENTE(デサント)など、アパレルブランドとしても認知が高く、ゴルフ未経験者にもなじみ深い名前が並ぶ。コンバースのゴルフシューズは普通のスニーカーに見えるほど、普段の服装にも合わせやすいカジュアルな印象だ。

コンバースやアディダス、ニューバランス、プーマなどスポーツではおなじみのブランドのシューズが並ぶ。移動中や練習場でも使いやすいカジュアルなシューズを中心にラインアップしているという
コンバースやアディダス、ニューバランス、プーマなどスポーツではおなじみのブランドのシューズが並ぶ。移動中や練習場でも使いやすいカジュアルなシューズを中心にラインアップしているという
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 バッグも同様で、デザイン性の高い製品を取りそろえてあり、カラーバリエーションも豊富だ。通常のゴルフ店ではキャディーバッグがずらりと並んでいるイメージが強いが、初心者が所持するクラブ本数はあまり多くないため、本数の少ないクラブケースのラインアップを充実させている。

 また、ゴルフ5は郊外のロードサイドに店舗を構えるケースが多かったが、人の流動性が高い新宿のショッピングモールに展開したことで、多くの人が気軽に立ち寄れるというメリットもありそうだ。

バッグはカラーバリエーションが豊富で種類も多い。期間限定取り扱いのBRIEFING(ブリーフィング)や、アウトドアブランドとして人気のKELTY(ケルティ)のほか、ALOHA(アロハ)、hellolulu(ハロルル)、Jack Bunny!!(ジャックバニー)などがそろう
バッグはカラーバリエーションが豊富で種類も多い。期間限定取り扱いのBRIEFING(ブリーフィング)や、アウトドアブランドとして人気のKELTY(ケルティ)のほか、ALOHA(アロハ)、hellolulu(ハロルル)、Jack Bunny!!(ジャックバニー)などがそろう
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口コミで広がる話題づくりが課題

 20~40代のゴルフ人口が増えているとはいえ、集客は容易ではない。アルペンでは、テレビCMだけでなく、ネット上のバナー広告や動画広告でも拡散が難しい現状を踏まえ、ウェブサイトやSNSなどの活用を課題に挙げている。

 「そのためにはどのように話題づくりをして、口コミを生むのかが重要」(二十軒氏)。店舗名に「初心者専用」と付けることにこだわったのも、新しくゴルフを始める人がネットで調べる際に、ヒットしやすくするためだ。

 「弊社では(ゴルフ5の情報発信ツールとして)ウェブはもちろん、YouTubeチャンネルやインスタグラム、『ゴルフ5』アプリやメルマガなどもすでに展開している。今回の店舗は実際にお客様が訪れた際の反応を見て、訴求ポイントを探っていきたい」(二十軒氏)

 一方で二十軒氏は初心者専用ゴルフ5を「半分実験店という扱い」と表現しており、顧客の悩みやニーズを直接聞くことで、次の事業に生かしたい考えも示している。

 まずは「初心者へのサポートを継続的に行う体制をつくれるかどうか。これに関してはわれわれも想像がついていない面があり、隠れたニーズはたくさんあるはずだ。それが何かを探り、次の展開として何がベストかを考えていきたい。今回は22年5月末までの期間限定店舗だが、常設で店舗を構えたほうがいいのか。はたまた、既存店舗の中に相談カウンターをつくるのか、ウェブ上で相談できる窓口をつくるのか。最適な答えを見つけていきたい」と同氏は意気込みを語った。