アパレル大手、H&M ヘネス・アンド・マウリッツ・ジャパンが日本のブランド「TOGA(トーガ)」とコラボレーションしたコレクションを2021年9月2日に数量限定で発売した。H&Mは04年以来、有名デザイナーやブランドとコラボしてきたが、日本発信で世界展開が決まったコラボはこれが初めてとなる。

2021年8月31日に行われた発表会に登壇したH&M ヘネス・アンド・マウリッツ・ジャパンのルーカス・セイファート社長(左)とTOGAデザイナーの古田泰子氏(右)
2021年8月31日に行われた発表会に登壇したH&M ヘネス・アンド・マウリッツ・ジャパンのルーカス・セイファート社長(左)とTOGAデザイナーの古田泰子氏(右)

 今回、H&M ヘネス・アンド・マウリッツ・ジャパン(東京・渋谷、以下H&Mジャパン)がコラボした「TOGA(トーガ)」は、ジェンダーレスかつ個性的なファッションにより、ロンドンコレクションなどで高い評価を得ているブランドだ。

 1997年にデザイナーの古田泰子氏が設立。メインのラインとなるTOGAの他、「TOGA PULLA」「TOGA VIRILIS」などのラインを展開。オンラインストアを参照すると、価格帯はメインラインのTOGAのカットソーやニットなどのトップスで、約3万~7万円となっている。

 H&Mとのコラボに当たっては、「TOGA ARCHIVES X H&M」というコレクションを新規に立ち上げた。商品型数はウイメンズ、メンズ、アクセサリー、色違いを含めて55種類で、商品の価格帯は1299~2万9999円(税込み)。国内16店舗と欧州やアジアなどのグローバルの9カ国計27店舗、および公式オンラインストア(全52市場)で展開する。日本では9月2日の発売から約1週間でほぼ完売となり、再入荷分も売り切れ状態だ。

日本発のコラボとして初の世界展開

 H&Mは、2004年のカール・ラガーフェルドを皮切りに、これまで有名デザイナーやブランドと数多くのコラボを行い、世界で高い人気を得てきた(関連記事「ユニクロ、H&Mと有名デザイナーのコラボは〈愛用品〉になるか」)。ただこれまではすべて海外発信。21年8月31日に開催したTOGAとのコラボ発表会でH&Mジャパンのルーカス・セイファート社長は、「TOGAはH&Mジャパンから発信するコラボコレクションとして、初めて世界展開が決定した」と喜びを示した。

 世界展開が決まったのは、TOGAの「性差なく自分が着たい服をそのまま着られる社会になるように」という思いが込められたコラボコレクションが、本国から高い評価を得たからだという。

 発表会の席で古田氏自ら解説していたが、TOGA ARCHIVES X H&Mの商品は、カットアウト(切り抜きなどの加工)から違う柄を見せたり、肌の露出を増やしたり、着る人によって様々な楽しみ方ができる点が大きなポイントだ。「今回のコレクションを通して一人でも多くのユーザーに、自分らしいファッションを楽しんでいただければ」(H&Mジャパン広報担当者)という。

 また「プロジェクトは2年前にTOGAに依頼しスタートしたが、東京オリンピック2020開催により日本が注目される」ことも大きかったとセイファート社長。

 加えて、H&Mジャパンとしては、同コラボの世界展開が、グループ全体で取り組んできたサステナビリティー(持続可能性)や多様性に関するメッセージ発信の機会になることにも期待する。

 スウェーデンに本社を置くH&Mは07年に日本で事業を始め、ファストファッションとして存在感を放ってきた。多くの人が購入しやすい価格帯で、デザイン性とクオリティーの高い商品を販売する姿勢を保つ一方、カナダの出版・調査会社であるコーポレート・ナイツ社が20年に発表した「Global 100」では、サステナブルな企業100社の内の1社に選ばれるなど、サステナビリティーにも力を入れる。

 「この(サステナビリティーへの)取り組みは、終わりがあるものではない。世界全体で永続的に対話を続け、取り組み続けていかなければいけないものだ。本コレクションは、TOGAやデザイナーの古田氏の思いと弊社の思いが一致している」(H&Mジャパン広報担当者)として、より多くの人々にコラボを通じてメッセージを発信することへの意欲を見せた。

発表会では実際にコレクションを身に着けたモデルも登壇。古田氏がデザインについて解説。「カットアウトから違う柄を見せたり、肌の露出を増やしたり、着る人によって様々な楽しみ方ができる点も大きなポイント」という
発表会では実際にコレクションを身に着けたモデルも登壇。古田氏がデザインについて解説。「カットアウトから違う柄を見せたり、肌の露出を増やしたり、着る人によって様々な楽しみ方ができる点も大きなポイント」という

コラボを知った幅広い層に認知

 TOGA ARCHIVES X H&Mは発売から約1週間で完売状態となったが、H&Mジャパンはそれ以前からコラボに関して手応えを感じていたようだ。21年6月のコレクション発表以来、反響が大きく、TOGAファンやH&M愛用者はもちろん、ニュースなどを通じて幅広い人にもコレクションを知ってもらえたと実感していたからだ。

 また、H&Mジャパンが発案したコラボとしての期待感も高いことから、日本のブランドであるTOGAを世界中の人々に発信する機会をH&Mジャパンが担うことの意義も感じているそうだ。「日本ブランドとのコラボで、日本のお客様にH&Mを身近に感じてもらうことにもつながる」(H&Mジャパン広報担当者)という期待も掛ける。

 新型コロナウイルス感染症の拡大がアパレルに与えたダメージは大きく、H&Mグループもその例外ではない。20年度(19年12月1日~20年11月30日)は売上高が約1870億3100万スウェーデンクローナ(約2兆2382億円)となり、現地通貨で前年比18%減となった。

 21年に入り、欧米でワクチン接種の普及を受けて、店舗が再開し、オンラインともども売上高は堅調に上昇してきている。中国市場での落ち込みはあるものの、全体としては好調といえる。その中で、「性差なく自分が着たい服をそのまま着られる」というジェンダーレスへの思いやサステナビリティーといった今求められる感覚が、アパレルの復調に作用するのか注目される。

「性差なく自分が着たい服をそのまま着られる社会になるように」という思いが込められたコレクションとなった
「性差なく自分が着たい服をそのまま着られる社会になるように」という思いが込められたコレクションとなった
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