ファーストリテイリング傘下のユニクロが“次世代型”の「エアリズム 吸水サニタリーショーツ」を2021年9月17日に発売する。以前から女性のライフステージの変化に対応するインナーウエアを開発・販売してきたが、これを機に「フェムケアニーズ」に応えていくという。既存の商品、新たなラインアップともに、それぞれのライフステージに合わせ、訴求していく。
吸水ショーツは未来を担う商品になる
新製品となる、エアリズム 吸水サニタリーショーツは、30~40ミリリットルの水分を吸収する吸水シートをクロッチ部分(股布、シック部分)に合わせて配置したサニタリーショーツだ。吸水シートは漏れを防ぐ防水性シート(外側)と、速乾・抗菌防臭機能を備えた生地(肌に当たる側)に挟まれた3層構造で、ユニクロが独自開発した。全面でなく必要最低限となる中央に吸水シートを配することで、着用時のごわつきを防止。足ぐりやマチ部分はボンディング(接着)仕様にし、漏れにくくしたという。
身生地(クロッチ部分以外)には、伸縮性の高いエアリズムの生地を採用しており、例えば通常時に着用するような「エアリズムウルトラ シームレスショーツ」などと同じ滑らかな肌触りになっている。
約1年前、開発に着手したというユニクロ グローバル商品本部の炬口佳乃子部長は、開発の理由として、顧客からの強い要望というよりは、欧米市場をウオッチする中で、「吸水ショーツは(洗って繰り返し使えるので)サステナブルな観点からも未来を担う商品になるのではないかと考えた」と説明した。
コロナで生理用品の選択にも変化
一般的にサニタリーショーツというと、生理(月経)の際に生理用ナプキンなど経血を受け止める吸収体を貼り付けて使うためのショーツで、その際、使うのは使い捨てタイプのナプキンが多く、経済的にも環境的にも負荷が高いと考えられる。こうした中、新型コロナウイルス感染症の拡大によって、在宅ワークが増えたことで、生理用品の選択に変化が見られるという指摘がある。
ヘルステックベンチャー、FiNC Technologies(東京・千代田)が21年3月に20~60代以上女性を対象に実施した生理に関する意識調査によると、「普段使う生理用品(複数回答)」として、98%の人がナプキンを利用していると回答。ただし、ライフシーンや生理日数に合わせて、他の生理用品と併用しているというケースや、「家にいることが多くなったので、環境に配慮した布ナプキンや、月経カップ、吸収ショーツなどに興味を持った」など、コロナ禍で生理用品を見直す人も増えているという(FiNC総研調べ)。
数年前から中小メーカーを中心に、吸水ショーツの開発や販売が始まり、認知度が高まる中、この市場にユニクロが参入する意義について、炬口部長は価格帯の重要性を挙げた。「吸水ショーツは販売チャネルが比較的限られているが、それがユニクロの店頭で、服を買うように手に取れるのは、ユーザーのハードルを下げることにつながるのではないか。服装の一部として買っていただけるということは、われわれが参入する意義の一つ。(吸水ショーツを)使うなら、最低でも2、3枚は必要になると考えている。だからこそ、『ユニクロ価格』に設定することには、かなりこだわった」(炬口部長)
女性の体や健康をケアする商品を
同じファーストリテイリング傘下では、ジーユー(GU)が女性の健康サポートを目的とした「GU BODY LAB(ジーユー ボディ ラボ)」プロジェクトを始動し、「トリプルガードショーツ」(税込み1490円)を発売。「フェムテック市場への参入」を明確にした。
これに対し、今回ユニクロが、打ち出したのは「フェムケア」ニーズ対応だ。
フェムテックとは「Female(女性)」と「Technology(技術)」を合わせた造語で、IT(情報技術)やAI(人工知能)、ビッグデータなどの技術を活用し、生理、妊娠、不妊、更年期といった女性の健康課題の解消につなげる製品やサービスを指す。
一方、フェムケアは、「Feminine(女性の)」と「Care(ケア)」を合わせた造語で、ユニクロによれば、「女性の体や健康をケアする製品・サービスとして昨今注目」されてきているという。Femcareという言葉自体は、海外ではデリケートゾーンのケアを指すこともあるようだが、ユニクロが示すのはテクノロジーに頼らず女性特有の課題を改善、あるいはケアする商品やサービスの提供と考えてよいだろう。
ただ、新商品をどんどん開発するというよりは、既存の商品をライフステージに合わせて訴求していく考えが強そうだ。
ユニクロはこれまでも幅広い世代のニーズに応えられる商品をラインアップしてきている。中でも「女性特有のライフステージの変化、ライフイベントに合わせた商品開発に力を入れてきた」と炬口部長。
例えば妊娠から出産、産後までに対応する「マタニティインナー」シリーズや、女の子のバストの成長に合わせて選べる「ガールズインナー」シリーズ、病気や授乳期、腕が上がりづらい人が脱ぎ着しやすい「前あきインナー」シリーズなど、子供から高齢者までのニーズに応えるインナーウエアを販売してきている。
このうち前あきインナーは、介護する人が脱ぎ着させやすいという声や、乳がんを経験した顧客からの支持もあるそうだ。またワイヤレスブラやブラトップなどの「しめつけない下着」シリーズは、体が敏感になりやすい妊娠期や授乳期、あるいは更年期の下着としても支持されているという。
女性特有のバイオリズムに伴う体の変化に着目したうえで、こうした今あるラインアップを必要な人に届けられるように、市場に打ち出していく方針とみられる。
「エアリズム 吸水サニタリーショーツ」の販売目標数や目標売上高などは非公表だ。目標は「エアリズムの吸水サニタリーショーツの発売により、どんな日も自分らしく心地よく過ごせるようにという『ケア』、使い捨てずに洗って繰り返し使える『サステナブル』、さらには生理の貧困が話題になる中、国内の女性支援施設への寄贈を通して、『社会貢献』もかなえたいと考えている」と炬口部長は話した。