スズキは新型軽乗用車「ワゴンRスマイル」を2021年9月10日に発売する。軽ハイトワゴン市場では、スライドドア付きモデルは16年発売のダイハツ工業「ムーヴキャンバス」のみだった。今回スズキが新モデルを投入することで、「ワゴンR」の存在感を高められるかどうかが注目される。

スズキは新型軽乗用車「ワゴンRスマイル」を2021年9月10日に発売する。同8月27日に行われた発表会では鈴木俊宏社長が登壇
スズキは新型軽乗用車「ワゴンRスマイル」を2021年9月10日に発売する。同8月27日に行われた発表会では鈴木俊宏社長が登壇

軽ハイトワゴンに待望のスライドドア

 「ワゴンRスマイル」は、ミニバンスタイルを持つスズキ軽ワゴンの主力商品「ワゴンR」の新モデル。ワゴンRのセールスポイントである「手ごろな価格」「高い機能性」「ちょうどいいサイズ感」はそのままに、後席に乗り降りしやすいスライドドアを取り入れたのが特徴だ。希望小売価格はガソリン車で129万6900円(税込み)から。マイルドハイブリッド車は147万2900円(同)から。2021年8月27日の発表会で鈴木俊宏社長は「多くのお客様に支持していただけるモデル」と自信を見せた。

 軽乗用車市場では近年、スライドドア付きのモデルの人気が高い。20年度に販売された軽乗用車の52.3%がスライドドア付きモデルで、そのほとんどが高さ1700ミリを超える軽スーパーハイトワゴンだった(全国軽自動車協会連合会のデータに基づくスズキ調べより)。しかし、軽スーパーハイトワゴンに次ぐ人気を誇る軽ハイトワゴンのうち、スライドドア付きモデルは16年に発売された、ダイハツ工業の「ムーヴキャンバス」のみ。それだけに、ワゴンRスマイルがムーヴキャンバスを超える販売数を達成できるかどうかは大きな注目だ。ある意味、今回スズキは軽ハイトワゴン市場のパイオニアとしてのプライドをかけて、ワゴンRスマイルを送り込んだといえる。

「子離れ世代」にも支持される質感に

 スズキがワゴンRスマイルを投入した背景には、軽自動車をメインに使用する層の拡大がある。初めから軽自動車を選びたいというニーズはもちろんのこと、小型および普通乗用車(登録車)からの乗り換えユーザー(ダウンサイズユーザー)も増加している。そこで軽スーパーハイトワゴンのターゲットである子育て世代をターゲット層の中心とせず、ミニバンは不要になったがスライドドア付きの車には乗りたいという「子離れ世代」など、幅広い層に支持されるデザインや質感の高さ、機能性の向上に力を入れたという。つまり利便性の高いスライドドア付きながら、パーソナルカーを意識して仕立てた軽ハイトワゴンなのだ。

 フロントに丸目ライトを採用した外観はポップさがあり、四角いボディーのフォルム全体に丸みを持たせ、親しみやすさを演出。その一方で男性の需要も意識し、グリル付きのフォーマルさも備えている。ボディーカラーは2トーンを含め、落ち着いた色から華やかな色まで全12色を用意。インテリアに特別な素材は使っていないが、視覚や触感で高い質感を感じる工夫が施されている。

ボディーカラーは12色用意
ボディーカラーは12色用意

 車内空間は、ワゴンRよりも四角いスタイルな分、広くなった。軽スーパーハイトワゴンほどは高くないが、ワゴンRに対して室内高を65ミリ拡大し、ゆとりを持たせている。着座位置がワゴンRよりも高い分、視界が良くなっている。

 注目のスライドドアは、開口幅とリアの地上高を同社の軽スーパーハイトワゴン「スペーシア」と同じ600ミリ(開口幅)と345ミリ(地上高)に設定することで乗り降りしやすくしている。車内の静粛性と乗り心地にもこだわった。これらは普通自動車からの乗り換え層を意識したためだろう。

 機能面では先進の安全運転支援機能である「スズキ セーフティサポート」を全車に標準装備。エンジンも自然吸気のみの設定で、マイルドハイブリッド仕様を主力に据え、手ごろな価格と燃費の良さ、そして静かな走りを実現した。

ワゴンRスマイルの室内高はワゴンRより高く、開口幅はスペーシアと同じ600ミリなので乗り降りしやすいという
ワゴンRスマイルの室内高はワゴンRより高く、開口幅はスペーシアと同じ600ミリなので乗り降りしやすいという

月間5000台販売しライバル超えへ

 ワゴンRスマイルの月間販売台数の目標は5000台。この数値について同社国内営業本部 国内第1営業本部長の鈴木敏明氏は、「新型コロナウイルス感染症の流行と半導体不足による新車供給体制の現状を加味しつつ、新型車投入の意気込みも踏まえた数字」と説明する。しかし、そこはライバルであるダイハツ工業「ムーヴ」の販売台数を意識しているとみていいだろう。

 全国軽自動車協会連合会によると、21年のワゴンRの登録台数は、現在までのところ3月が最高の8458台。最も少なかった21年6月の2618台を含め、7月までの販売数を平均すると、月間約5000台だ。一方のムーヴは、ムーヴキャンバスを含め21年の月間登録台数の平均が約9390台となっている。単純にワゴンRにワゴンRスマイルの5000台が加われば月間1万台を超える。ムーヴと戦うには、スマイル分の積み上げが重要。好調な販売となれば「ムーヴ超え」によって、ワゴンRの存在感を高められる計算だ。

 約3年前というスマイル開発着手のタイミングを考慮すると、ムーヴの名を再び世に知らしめたムーヴキャンバスの打倒を目指し、ワゴンRスマイルを開発したと言っても過言ではないだろう。鈴木俊宏社長も、「他社で軽スーパーハイトワゴンが登場した際、ワゴンRへのスライドドア導入も検討したが、そのためには、軽スーパーハイトワゴンの全高が必要と判断し、新たにスペーシアを投入した。スライドドアの使いやすさや狭い駐車場での乗降性の良さは多くの人に支持されている。時代とともに顧客のニーズも大きく変化した。ワゴンRも今の位置に安住しているわけにはいかない」とスマイル投入への思いを語った。

 スズキの21年度(4~7月)四輪車販売累計は前年比112.7%となる18万5830台を記録しており、主力の軽四輪車が前年比113.4%の15万5169台、登録車が同108.9%の3万661台で共に前年超えとなっている。しかしコロナ禍以前の19年度と比較すると、四輪車全体で84.4%(軽四輪車で86.2%、登録車が76.2%)と減少。依然として厳しい販売状況が続いている。消費の厳しさ、懐事情に加え、半導体不足による納期の長期化も影を落とす結果となっている。

 ダイハツ工業のムーヴ キャンバスが若い女性をメーンとするのに対して、ワゴンRスマイルはそのキャラクターを幅広い層に訴求する戦略とした。軽自動車ニーズの変化や依然先が見えない生産と販売状況も踏まえた結果なのだろう。鈴木社長は「こんなときだからこそ、スマイルを送り出すことで乗る人を笑顔にしたい」と新型車に希望を込めて話した。

スズキ 国内営業本部 国内第1営業本部長の鈴木敏明氏
スズキ 国内営業本部 国内第1営業本部長の鈴木敏明氏

(画像提供/スズキ)