味の素冷凍食品(東京・中央)は2021年8月25日に行われたメディア発表会で、アスリート向け冷凍食品の新ブランド「For ATHLETE」の立ち上げを発表。同日に、公式オンラインストアで、2種類のアスリート向け冷凍ギョーザの販売を開始した。同社のオンラインストア展開はこれが初。

アスリート強化支援から新ブランドへ

 「For ATHLETE」は、味の素グループで行っているトップアスリート強化支援事業「ビクトリープロジェクト」で培ったノウハウを生かした新ブランド。第1弾は、試合前のエネルギー摂取に適した「『For ATHLETE』エナジーギョーザ」(以下「エナジーギョーザ」)と、試合後のコンディション調整に適した「『For ATHLETE』コンディショニングギョーザ」(以下「コンディショニングギョーザ」)の2品となる。

「『For ATHLETE』エナジーギョーザ」30 個入袋(525グラム)1200円(税込み)、「『For ATHLETE』コンディショニングギョーザ」30個入袋(720グラム)1500円税込み。公式オンラインストアで販売。送料別途(ただし税込み4800円以上購入で送料無料)(写真撮影/桑原恵美子)
「『For ATHLETE』エナジーギョーザ」30個入り袋(525グラム)1200円(税込み)、「『For ATHLETE』コンディショニングギョーザ」30個入り袋(720グラム)1500円(税込み)。公式オンラインストアで販売。送料別途(ただし税込み4800円以上購入で送料無料)(写真撮影/桑原恵美子)
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 2商品とも1袋に30~32個入り(1個当たりの重さにより変動)と同じ容量でありながら価格に差があるのは、1個当たりの重量が違うため。エナジーギョーザはエネルギー摂取が目的なので、食欲がないときもたくさん食べられるようにサイズが小さめで、1個当たりの重量は約17グラムだ。これに対してコンディショニングギョーザは1個当たり約24グラムとなっている。

エナジーギョーザは試合前向き

「エナジーギョーザ」。皮には小麦粉より低脂質で炭水化物含有量の多い米粉を採用(写真提供/味の素冷凍食品)
「エナジーギョーザ」。皮には小麦粉より低脂質で炭水化物含有量の多い米粉を採用(写真提供/味の素冷凍食品)
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 エナジーギョーザは炭水化物構成比を上げるため、皮に小麦粉より低脂質で炭水化物含有量の多い米粉のみを使用し、通常のギョーザよりも厚めの0.95ミリに仕上げている。またあんには、炭水化物をエネルギーに変えるのに必要なビタミンB1を加えた。食欲をそそるように豆板醤(トウバンジャン)を隠し味として追加し、スパイシーな味付けに仕上げている。

 皮は確かに厚みがあるが、米粉を使用しているからか、意外に軽い食感。ちなみに皮だけでなく、羽根の部分も100%米粉。これは味の素冷凍食品にしかできない技術なのだという。

 一般的にギョーザのあんにはかなり油分が含まれているため、焼くと油が流れ出てあんのボリュームが減りがちだ。しかしエナジーギョーザのあんは脂質を減らすために、鶏ガラスープをたっぷり吸わせた大豆由来の植物性たんぱく質を使用している。そのため、汁を含んだあんがみっちり詰まった状態で焼き上がる。このボリューム感のあるあんとのバランスも考え、皮の厚さの微妙な調整を重ねたという。

コンディショニングギョーザは爽やか

ニンジン、カボチャ、ホウレンソウが入っており、サラダ感覚で食べられる(写真提供/味の素冷凍食品)
ニンジン、カボチャ(ペースト)、ホウレンソウ(パウダー)が入っておりヘルシー(写真提供/味の素冷凍食品)
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 コンディショニングギョーザは、鶏肉・大豆(粒状大豆たん白)と6種の野菜(キャベツ・ニラ・タマネギ・ニンジン・カボチャ〈ペースト〉・ホウレンソウ〈パウダー〉)を使用。体をつくり、良い状態を保つのに必要なたんぱく質と、コンディションを整えるのに必要なビタミン類(A・C・E)が手軽にたっぷり取れるように栄養設計されている。コンディショニングギョーザの皮は小麦で作られており、野菜中心のあんに合わせて、厚さ0.65ミリと薄めにしている。

 ニラ、キャベツはギョーザのあんの基本だが、ニンジン、カボチャ、ホウレンソウが入っているのは珍しい。このため、普通のギョーザにはない、サラダや野菜ジュースのような爽やかな香りがある。この野菜独特の風味があるからこそ、アスリートもサラダ感覚でギョーザを食べられるのだという。疲れているときも食べやすいように、やさしい味付けにしているのもポイントだ。

きっかけは、羽生結弦選手の一言

 同商品開発のきっかけは、ビクトリープロジェクトのシニアディレクターである栗原秀文氏と、フィギュアスケート男子の羽生結弦選手との何気ない会話からだった。栗原氏は、羽生選手の試合に帯同し、期間中の食事をコーディネートして提供している。「今シーズンはどうしていこうか」「結弦君は鍋物が好きだったよね」という話をしていたところ、羽生選手は「僕はギョーザが好き」「ギョーザなら何個でも食べられる」と発言。

 一般的なギョーザは脂質量が多く、アスリートは好物でも手を出しにくいメニューだ。だが栗原氏は、「それならば、結弦君が食べられるようなギョーザを作ってあげる」とその場で約束。「自分を追い込んだ」と今では振り返っている。

 その後、トップアスリート100人を対象にしたアンケートをとると、91人が「ギョーザが好き」と回答。またアスリートに「試合期間中の食事で気にすること」を聞くと、以下の3つだった。

  • たんぱく質をしっかり取る
  • 炭水化物をしっかり取る
  • 脂質を取りすぎない

 エネルギー源の糖質、筋肉の材料となるたんぱく質、コンディショニングに必要なビタミンが取れるギョーザは、工夫次第でアスリートに最適のメニューになり得る。にもかかわらず、選手の栄養強化にこれまで積極的に活用されていないことに栗原氏は気づき、そこから本格的に開発を開始した。

 自宅での試作を重ねた後、2019年から合宿などに帯同する現場のシェフたちと協力して完成度を高めていった。東京オリンピック開催が迫った20年からは、身近にいる“ギョーザのプロ”である味の素冷凍食品の協力を得て、驚異的なスピードで商品化が進んだ。オリンピックが1年延期になったことで、さらに商品を進化させることができたという。

 東京オリンピックの選手村の食堂では、同社のNB品の冷凍ギョーザが外国人選手に大好評だったため、同社は世界展開への自信も深めている。

エナジーギョーザとコンディショニングギョーザが通常のギョーザと決定的に違うのは、脂質量が少ないこと。一方たんぱく質料は多めになっている(写真提供/味の素冷凍食品)
エナジーギョーザとコンディショニングギョーザが通常のギョーザと決定的に違うのは、脂質量が少ないこと。一方たんぱく質料は多めになっている(写真提供/味の素冷凍食品)
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ビクトリープロジェクトでは、卓球の伊藤美誠選手、柔道の阿部一二三選手、安倍詩選手らに試作品を試食してもらいながら商品を開発。阿部詩選手の「対戦競技なのでニンニクはない方がいい」という意見から、2品ともニンニクを使用していない(写真提供/味の素冷凍食品)
ビクトリープロジェクトでは、卓球の伊藤美誠選手、柔道の阿部一二三選手、阿部詩選手らに試作品を試食してもらいながら商品を開発。阿部詩選手の「対戦競技なのでニンニクはない方がいい」という意見から、2品ともニンニクを使用していない(写真提供/味の素冷凍食品)
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トップアスリートからのシャワー効果

 これまではトップアスリートへの商品提供のほか、準トップアスリートである強化選手の合宿所の食事などBtoBのみの展開だった。しかし自社オンラインストアでの販売では毎日ジムに通う人、部活をしている学生などの一般層をターゲットにする。

 味の素冷凍食品の石原敏章マーケティング本部新事業開発部長は、「今まで公式オンラインストアをやってこなかったが、アスリートのようなスモールマスの切実なニーズに応えるために、ツーウエーのコミュニケーションを取りながら、販売を拡大していきたい」と抱負を語る。

 公式オンラインストアのみでの限定販売なので、同社ではSNSを有効に活用したり、スポーツイベントでのサンプリングを積極的に行ったりして、認知度を上げていく方針。味の素グループでは既に、アミノバイタルなどの商品で、部活動をしている学生を中心に、SNSで同様の活動を展開している。その経験が豊富なクルーの力を借りる予定だという。

 今後、For ATHLETEブランドでは、幅広い層のアスリート向け商品のラインアップを拡充していく予定。年内にはアスリート向けのスイーツも販売予定だ。

 “スモールマスのニッチなニーズ”に焦点を当てて開発した商品というが、手軽にたんぱく質を補給できる低脂肪なコンディショニングギョーザは、シニア層や女性層にもニーズがありそうだ。またスタミナ補給ができるエナジーギョーザは、大事な仕事の前の勝負メシとしても受け入れられるかもしれない。「多くのアスリートは、普段の生活では自炊をしている。その負担を軽減して、より良いものを食べていただきたいということも、重要な目的の一つ」(栗原氏)とのことだが、これは忙しい人にも当てはまるだろう。アスリート向けの冷凍食品は、必ずしも“スモールマスのニッチなニーズ”ではないかもしれない。

左から、味の素冷凍食品の下保寛取締役専務執行役員、味の素「ビクトリープロジェクト」栗原秀文シニアディレクター、味の素冷凍食品のマーケティング本部新事業開発部 岩崎裕マネージャー、味の素冷凍食品の石原敏章マーケティング本部新事業開発部長(写真撮影/桑原恵美子)
左から、味の素冷凍食品の下保寛取締役専務執行役員、味の素「ビクトリープロジェクト」栗原秀文シニアディレクター、味の素冷凍食品のマーケティング本部新事業開発部 岩崎裕マネージャー、味の素冷凍食品の石原敏章マーケティング本部新事業開発部長(写真撮影/桑原恵美子)
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