コロナ禍が収束に向かえば、今まで我慢していた生活者による“リベンジ消費”が巻き起こる可能性が高い。だが、一体どのようなビジネスが受けるのか。先行する海外事例を基に、そのヒントを提示しているのが、『アフターコロナのニュービジネス大全』(ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)だ。著者は、海外トレンドリサーチのプロフェッショナルでTNC社長の小祝誉士夫氏と、若者研究の第一人者である原田曜平氏。アフターコロナの有望ビジネスは何か。
2021年8月現在、日本国内は東京などが緊急事態宣言の真っただ中で、先行きが見通しにくい状況だ。しかし、ワクチンの普及などが進むことで、いずれコロナ禍は収束に向かうだろう。そのアフターコロナ時代、これまで抑制されていた消費が一気に回復し、 “リベンジ消費”が発生することは間違いない。
しかし、すべてのビジネスがこれまで通りうまくいくかといえば、そうとも限らない。なぜなら、今までとは違う生活を1年半以上強いられた消費者の心理は、以前とは異なる形にアップデートされているからだ。たとえ消費が戻っても、新たなニーズをつかみきれない企業も多数出るかもしれない。
では、どんなビジネスを仕掛ければよいのだろうか。実は、そのヒントは海外に多くある。日本人が消費を我慢をし続けている間、海外では数多くのニュービジネスが生まれているのだ。どのような発想でアフターコロナのビジネスを考えればいいのか、新刊『アフターコロナのニュービジネス大全』で紹介されている具体的な事例を5つ解説していこう。
(1)チャットEC
オンラインの買い物をグループで楽しむ
外出自粛が続く中で、友人と一緒にショッピングに行く楽しさをECで再現したい――。それをかなえるサービスが、2020年5月にスタートしたイスラエル発の「Squadded Shopping Party」だ。米国のAsosやBoohoo、MissguidedといったアパレルECサイトで、グループによるショッピング体験を楽しめる。ターゲットは15~25歳のZ世代。友人同士で一緒にコンテンツを楽しむ「Netflix Party」やInstagramのCo-Watching機能など、欧米ではグループで楽しむオンラインサービスが増加しているが、その方向性がオンラインショッピングにも波及した形だ。
Squadded Shopping Partyは現在、Googleのアドオン(拡張機能)として実験的に提供されている。目当てのECサイトにアクセスし、友人や知人に通知を送ってチャットへ招くことで、ECサイト上の様々な商品を見て回りながら、意見交換や雑談ができる。欲しいものリストを共有したり、気になるアイテムについて「似合う」「やめたほうがいい」といったことを投票したりできるシステムなども実装している。
リアル店舗で服を選ぶとき、自分に似合うかどうか、その場で友人から率直な意見を聞くことは、よくある行動だ。従来ECサイトでは、その不可欠な要素が欠けていた。そこに斬り込むSquadded Shopping Partyは、ECサイトをコミュニケーションの場に変え、新たな買い物体験を実現している。
先行するSquadded Shopping Partyをヒントに、従来の日本のアパレルECサイトにはなかった“おしゃべり機能”を展開することは有効だろう。こうして、オンラインでの利便性や感染リスクを避けられる安全性を担保しながら、ショッピング本来のエンターテインメント性や友人、恋人、家族と共に同じ時間を過ごす体験価値を提供できる“ハイブリッドなEC”が今後の主流になってくるはずだ。
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