サッポロビールは2021年8月24日、新機軸商品として炭酸水テイストのアルコール飲料「サッポロ WATER SOUR」を発売する。「低アルコール×無糖」の軽やかな味わいで、自宅でのリフレッシュをはじめとした飲用シーンを想定している。発売を決めたのは「若年層へのニーズが見て取れる」2つの要因があった。
「サッポロ WATER SOUR」は、低アルコール(3%)、低カロリー(100ミリリットルで19キロカロリー)、無糖のRTD(レディー・トゥ・ドリンク、開栓してそのまま飲める飲料)アルコール飲料。雑味が少なく、後味の残らない爽快感が特徴で、これまでにない炭酸水感覚で楽しめるアルコール飲料を実現した。
サッポロビールマーケティング本部ビール&RTD事業部ブランド担当の市川昇平氏は、同商品を「全く新しい次世代アルコール飲料」と位置付ける。
「ライトに酔いたい」20~30代が増加
「日常のリフレッシュや、仕事から自分時間(オフの時間)に切り替えるきっかけとなるような、軽やかなお酒時間を提供し、新たな需要を喚起していく」と市川氏。
同社が、アルコール市場の中でも新カテゴリーとなる商品の発売を決めたのは、飲むことが負担になりにくいRTDアルコール飲料が若年層に売れると踏んだからだ。その理由は大きく2つある。
1つ目は同社をはじめとする市場調査で、20代を中心に気軽に飲めるアルコール飲料のニーズが高まっている結果が出たこと。2つ目は米国の若者の間で、「ハードセルツァー」と呼ばれる低アルコール飲料が人気であることだ。
サッポロの調べによると、20~30代の88%が「夜、家で趣味などの自由時間にお酒を飲みたいと思う」と答えた(2021年3月に230人に調査)。主な理由としては「リフレッシュしたい」「楽しい気分になりたい」が多かった。全国消費者パネル調査会社インテージによると、20代のRTDアルコール飲料の購入率は前年比120%(20年4月~21年3月間)となった。
20~30代では飲酒のニーズとともに、「酔い過ぎない」意識が高まっていることも判明。サッポロの調べでは「度数3%以下のお酒」を好む20代は半数を超え、30代でも4割を超えた(21年に1200人に調査)。
「若年層は自宅でのオフ時間に、趣味や学習など自分のやりたいことを邪魔しない程度の酔い感を求めている。平日の夜こそ『合理的に楽しく過ごしたい』ということで、リフレッシュをお酒に求めている傾向がある」(市川氏)
また、サッポロビールのマーケティング本部によると、今の20~30代は一昔前の世代より甘くない飲み物との接点が多いという。小さい頃からペットボトル入りのお茶やミネラルウオーターを頻繁に飲用し、最近では炭酸水が日常的に飲用されるようになった。甘くないものを好むなど、健康志向にシフトする若年層が多くなっているそうだ。
こうした市場背景や生活環境を受け、サッポロは「若年層に『低アルコールで甘くない、低負担』なRTDのニーズがあるのでは」と見通しを立てた。
米国での低アルコール飲料盛況がヒントに
サッポロの推測を後押ししたのが、米国の若者の間で「ハードセルツァー」と呼ばれる低アルコール飲料がブームとなっている状況だ。
ハードセルツァーとは、米国で19年ごろからブームとなっている、フレーバー付きアルコール入り炭酸水の総称だ。サトウキビの糖蜜由来アルコールを使用しており、「低アルコール、甘くない、低カロリー」が特徴だ。米国ではハードセルツァーの流行に伴い、RTDアルコール飲料市場も急成長。今では数々のハードセルツァーの新商品が誕生している。
ヒットの要因としては、若年層の「酔いたくない、健康志向」にマッチして、かつ男女両方に人気なことが大きいとされる。これまで米国では、フレーバーを使用したアルコールドリンクは甘く、女性向けのイメージがあった。しかし、ハードセルツァーは低アルコールで甘くなく爽快、デザインもカッコよくスタイリッシュで、男性からの支持も獲得した。
市場調査の結果と米国での状況を受け、サッポロは「ハードセルツァーを日本人になじむような味・生活スタイルにアレンジして売り出そう」と考えた。「日本における市場背景は米国と似ていて、コロナ禍によってより市場背景が加速した。米国で販売されているハードセルツァーをヒントに、日本のニーズに合わせて商品設計をした」(市川氏)。要するに「サッポロ WATER SOUR」は「日本版ハードセルツァー」というわけだ。
「これまでにない、かつなじみがある」コピーを意識
プロモーションにおいては、「ハードセルツァーを『炭酸水感覚のお酒』と日本語表現に、甘くないことを『無糖』と言い換えている。新しいお酒であるかを市場にいかに浸透させられるかが重要なポイントだ」(市川氏)
米国ではヒットしているものの、まだ日本ではなじみや知名度が低いため、ハードセルツァーを「炭酸水感覚のお酒」と表現。これによって、商品イメージが分かりやすくなり、スムーズに普及させられると考えた。同時に、これまでにない酒類カテゴリーとしての印象が付き、新しい市場も開拓しやすくなる。
甘くないことを「無糖」と表現しているのも、炭酸水感覚でライトな味わいであることを訴求するためだ。また、近年、無糖を訴求したRTDアルコール飲料商品は市場が拡大しており、多くのターゲット層にアピールできるという思惑もある。
味わいも日本人好みに寄せた。度数は日本の低アルコールRTDの基準である3%に合わせ、フレーバーは「レモン」「オレンジ」と缶チューハイでなじみが深いものを選んだ。
商談状況は「非常に順調。新カテゴリーに対する姿勢に期待が大きいのでは」と市川氏。サッポロの調査では、コロナ禍で「飲酒時間が増えた人は42%、残り58%の大半は変わらず(21年1月、380人に調査)」という結果も出ており、巣ごもり需要の影響も見える。
同社は「サッポロ WATER SOUR」の20~34歳における潜在顧客人口を、500万人以上と想定。若年層のニーズ変化を反映した「サッポロ WATER SOUR」が、今後どれほど浸透するか注目だ。
(写真提供/サッポロビール)