2015~19年までDセグメントの輸入車として販売台数1位を獲得し続けたメルセデス・ベンツの「Cクラス」がフルモデルチェンジした。現在は「Aクラス」が同ブランドの売れ筋になっているが、フラッグシップセダン「Sクラス」譲りの機能を搭載し、販売増を狙う。

5代目となるメルセデス・ベンツ「Cクラス」。Cクラスらしい、伝統的でありながらスポーティーなデザイン
5代目となるメルセデス・ベンツ「Cクラス」。Cクラスらしい、伝統的でありながらスポーティーなデザイン

 メルセデス・ベンツのミドルサイズモデル「Cクラス」のセダンとステーションワゴンが7年ぶりにフルモデルチェンジ。メルセデス・ベンツ日本(東京・品川)は2021年6月29日にお披露目し、7月下旬から予約を開始した。価格はセダンが654万~682万円(税込み、以下同)。ステーションワゴンが680万~708万円。先行予約者には5万円分のオプションがプレゼントされるという。

 Cクラスは高級輸入車市場でも定番モデルになっており、14年に発売された4代目はセダンとステーションワゴンを合わせると、日本だけで10万台以上を販売。特に15~19年までの4年間は、Dセグメント(主に欧州規格サイズ。全長約4.6~4.8メートル)に属する輸入車の中で販売台数1位を獲得した、メルセデス・ベンツ日本の重要モデルだ。

 注目の新型は、「全モデル電動化」と「フラッグシップセダンである新型Sクラス(21年1月発表の最上級モデル)譲りの最新技術の採用」の2つが特徴に挙げられる。

新型「Cクラス」の価格はセダンが654万~682万円。ステーションワゴンが680万~708万円
新型「Cクラス」の価格はセダンが654万~682万円。ステーションワゴンが680万~708万円

全車マイルドハイブリッドかPHVか

 全モデル電動化とは、全ラインアップがマイルドハイブリッドシステムのISG(Integrated Starter Generator:モーター機能付き発電機)か、プラグインハイブリッド(PHV)のどちらかを採用しているということ。

 販売の主力はマイルドハイブリッド車だ。ガソリンエンジンとISGを組み合わせた「C200」と「C200 4MATIC(4WD車)」には最高出力204ps、最大トルク300Nmを発生する1.5L直列4気筒ターボエンジンを搭載。クリーンディーゼルエンジンとISGを組み合わせた「C220d」には、最高出力200ps、最大トルク440Nmを発生する2.0L直列4気筒ターボエンジンを搭載する。エンジンとトランスミッションの間にISGを搭載したマイルドハイブリッドシステムは共通で、エネルギー回生、モーターアシスト、エンジン再始動などを行う。モーターの性能は最高出力20ps、最大トルク200Nmと強力なので、力強い加速が期待できる。

 またC200系と同じ1.5L直列4気筒ターボエンジンと電気モーターを組み合わせたPHVモデル「C350e」は、22年内に導入予定。エンジン単体だと最高出力204ps、最大トルク320Nmだが、電気モーターの最高出力は129ps、最大トルクは440Nmとパワフルだ。25.4kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載し、電気のみでの走行可能距離は100キロメートルを達成しているという。

全ラインアップがマイルドハイブリッドシステムのISG(Integrated Starter Generator:モーター機能付き発電機)か、プラグインハイブリッド(PHV)のどちらかを採用
全ラインアップがマイルドハイブリッドシステムのISG(Integrated Starter Generator:モーター機能付き発電機)か、プラグインハイブリッド(PHV)のどちらかを採用

Sクラス譲りの運転支援機能を搭載

 新型Sクラスに搭載された「最新世代の運転支援機能」「DIGITAL(デジタル)ライト」「リア・アクスルステアリング」など様々な最新機能を採用。特に安全運転支援機能では、システムのアップデートでセンシング性能が向上し、サポート性能が高まったことも特徴だ。

 左右のヘッドライトのDIGITALライトも全車標準装備で、片側130万画素の解像度を持つライトによる細やかな調光により、先行車や対向車に配慮しながら、最大限の視界を確保できるようになった。

 リア・アクスルステアリングはオプションの後輪操舵(そうだ)システム。前輪の動きに合わせて、後輪にも舵角(だかく)を与えることで、小回り性能を高めたり、コーナリングや車線変更時の走行安定性を高めたりするのに役立つ。

 エクステリアデザインは、ドライバーズカーでもあるCクラスらしくスポーティーさを強調している。ボディーサイズは全長4.751メートル、全幅1.82メートル、全高1.438メートル(セダン)と全長が6.5センチ、全幅が1センチ、サイズアップ。ホイールベースも2.5センチ増で2.865メートルとなっており、その恩恵を受け、後席の足元は2.1センチ、後席頭上空間は1.3センチ広くなっており、快適性の向上に貢献している。

 インテリアはSクラスで初採用された縦型タッチスクリーンを備えたダッシュボードが特徴的だ。このタッチスクリーンは、運転席側に6度傾けた配置で、運転席を中心としたコックピットデザインになっている。この配置は、Cクラス専用の仕様だが、助手席からの視認性を犠牲にしていないという。

ダッシュボードと縦型の11.9インチのメディアディスプレーを6度、ドライバー側に傾けた新しいデザインが採用されている
ダッシュボードと縦型の11.9インチのメディアディスプレーを6度、ドライバー側に傾けた新しいデザインが採用されている

BMWやアウディなどライバルも好調

 納車開始時期はセダンの「C200」「C220d」が21年秋、セダンの4WD車「C200 4MATIC」とステーションワゴンは22年の第1四半期を予定している。

 かつてはコンパクトなメルセデス・ベンツとして、またブランドエントリーとしても活躍したCクラス。しかし近年は「Aクラス」などよりコンパクトなモデルの登場で、ボディーサイズにしても性能にしても、メルセデス・ベンツのモデルの中でその位置づけが高くなってきている。

 ただし、購入者自らが運転することを想定した「ドライバーズカー」として、メルセデス・ベンツらしい上質さが感じられるように、スポーティーな走りを可能にしているのもCクラスならではだろう。セダンで654万円からという価格は、4代目Cクラスのエントリーモデルあるセダン「C180」と比べ、165万円も高いが、従来型のC200と比較すると、装備を強化しながらも、数十万円アップで抑えられており、実質的には同等の価格帯を維持したといえるかもしれない。とはいえ今後、同等価格帯のモデルを投入するのか、Aクラス・セダンを受け皿にするのかが注目される。

 なお、オンライン発表会に登壇したメルセデス・ベンツ日本の上野金太郎社長は、「(試乗してみて)新型は1世代以上先を行く進化を遂げていると感じた」と商品力の大幅向上に自信を見せている。今回、Sクラス譲りの機能を積極的に搭載したのは、ドイツのBMW「3シリーズ」やアウディ「A4」など、ライバルが近年好調なモデルばかりという気の抜けない状況もあってのことだろう。20年はBMWの3シリーズに販売台数を抜かれたが、新型の登場で巻き返せるかどうかも見どころだ。

メルセデス・ベンツ日本の上野金太郎社長は「Cクラス」の進化に自信を見せた
メルセデス・ベンツ日本の上野金太郎社長は「Cクラス」の進化に自信を見せた

(画像提供/メルセデス・ベンツ日本)

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