亀田製菓とオイシックス・ラ・大地は、フードテックベンチャー企業のグリーンカルチャー(東京・葛飾)と資本業務提携を行うと2021年7月1日に発表した。各社は今回の資本業務提携により、植物肉、プラントベースフードの市場拡大を図る。

植物肉市場の活性化へ向け、資本業務提携を発表。写真左より亀田製菓の田中通泰会長、グリーンカルチャーの金田郷史社長、オイシックス・ラ・大地の松本浩平取締役(Future Food Fund社長)(写真提供/グリーンカルチャー)
植物肉市場の活性化へ向け、資本業務提携を発表。写真左より亀田製菓の田中通泰会長、グリーンカルチャーの金田郷史社長、オイシックス・ラ・大地の松本浩平取締役(Future Food Fund社長)(写真提供/グリーンカルチャー)

総額2.5億円の資金調達で事業拡大

 亀田製菓とオイシックス・ラ・大地は、フードテックベンチャー企業のグリーンカルチャー(東京・葛飾)と資本業務提携を行う。

 2021年7月1日の発表によれば、グリーンカルチャーは今回、ユニバーサル マテリアルズ インキュベーター(UMI、東京・中央)をリードインベスター(主導的立場の投資家)に、亀田製菓、オイシックス・ラ・大地を加えた3社を引受先とする第三者割当増資により、総額2.5億円の資金調達を完了。オイシックス・ラ・大地の投資子会社、Future Food Fund(FFF)も新規株主となった。

 グリーンカルチャーは国内外のプラントベースフードを扱うネット通販会社として11年に創業。同社のプラントベース専門通販サイト「Green's Vegetarian」は、「ベジタリアンの41%が認知しているという、調査会社の報告もある」(同社の金田郷史社長)という。また創業当初から植物性の製品が文化として拡大・浸透していくことを考えて事業を展開しており、13年発売の「菜食餃子(ギョーザ)」「唐揚げ」をはじめとして現在までに20製品を商品化している。

グリーンカルチャーの製品一覧
グリーンカルチャーの製品一覧

 同社の植物肉「Green Meat」はそれまでの製品で蓄積された研究の集大成の1つともいえる製品で、20年4月より本格的に開発を開始し、21年4月に発売した。現在は「市場のニーズに合った高品質な植物肉を提供し、事業者からの評価も受けるように」(金田社長)なっており、プラントベース業界のリーディングカンパニーになってきているという。

 ただし、現在の販路は、一部スーパーマーケットで流通している製品があるものの、基本的に全て同社通販と飲食店向け卸売りのみ。21年に創業10周年を迎えた同社は、「植物肉をベジタリアンやビーガンだけでなく、より多くの人に広める」ことに注力すべく、20年11月から資金調達に向けて動き始め、今回の資金調達および業務提携に至った。

植物肉「Green Meat」をミンチ状にしたもの(写真提供/グリーンカルチャー)
植物肉「Green Meat」をミンチ状にしたもの(写真提供/グリーンカルチャー)
グリーンカルチャーの金田社長は自身もビーガンとして、植物肉製品のバリエーション拡大に努めてきた
グリーンカルチャーの金田社長は自身もビーガンとして、植物肉製品のバリエーション拡大に努めてきた

亀田はグルテンフリーもビーガンも

 亀田製菓とは、植物肉の共同開発や製品化、亀田製菓の販路を生かした拡販を狙う。金田社長は「亀田製菓は食品総合カンパニーを目指す中で植物肉にもいち早く注目されていた。製造からマーケティングまで、ご支援いただけるのではないかと考えている」と話す。今後、亀田製菓が創業以来60年以上にわたり培ってきた製品開発技術や、米菓メーカーとしてのノウハウも生かし、スケールアップを図りたい考えだ。

 一方、亀田製菓の田中通泰会長は、今回の資本業務提携の理由の1つとして、市場縮小への危機感を挙げる。

 矢野経済研究所が行った「コロナ禍における流通菓子市場に関する調査」によれば、19年度の流通菓子市場(メーカー出荷金額ベース)は2兆566億円で前年度超えを記録。しかし20年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響で外出自粛となり、家庭内での消費量は増えたものの、行楽需要、オフィス需要は減少。お茶請けとして消費されるおせんべいなどの米菓は人が集まることが減ったことで苦戦したという。

 それだけでなく、「日本の人口減少、健康志向の高まりから、米菓市場は7~8年後に現状から10%の減少もあり得る。12年に米国のMary's Gone Crackersを完全子会社化した。同社は創業者である臨床心理学出身でセラピストのメアリー・ワルドナー氏が、強度のセリアック病(グルテンに対する異常な免疫反応が引き金になって起こる自己免疫疾患)を発症し、自身が食べられるクラッカーをと創業した。この買収と前後して、弊社は『“あられ、おせんべいの製菓業”から“Better For You の食品業”へ』を掲げ、事業を広げている」と田中会長は話す。

 その後も13年に長期保存食を製造・販売し、食物アレルギー対応に強い尾西食品(東京・港)、19年にアレルギー対応食品やプラントベースフードなどの製造・加工・販売を行うマイセン(福井県・鯖江市)を買収、子会社化。21年7月1日には青果物卸や米粉パンの製造販売を手掛けるタイナイ(新潟市)の米粉パン事業を買収し、子会社化している。

 田中会長は私見としながらも、「プラントベースフードが定着し、市場がある米国では、立派な生産設備も整備されている。しかし味や食感などは改良の余地があると思われる。弊社が蓄積してきたノウハウを活用し、グリーンカルチャーとともに製品を開発し、亀田製菓の主要事業の1つとして、成長させていきたい」と今後の事業展開への期待感を示した。

亀田製菓の田中通泰会長
亀田製菓の田中通泰会長

オイシックスはマーケティング戦略面

 一方、オイシックス・ラ・大地には、マーケティング戦略面での期待が強いと金田社長。「オイシックス・ラ・大地は有機野菜のマーケットからメガベンチャーに成長した企業であり、新しいプロダクトを世の中に広めていくにあたり、強力なパートナーとなる。その子会社であり新たに株主となったFFFは、国内外に(食に関する)大きなネットワークを持つ。資金面でのサポートだけでなく、成長を加速させるものになる」(金田社長)

 FFFの社長も務める、オイシックス・ラ・大地の松本浩平取締役・経営企画本部長によれば、新型コロナウイルス感染症の影響も受け、同社の21年3月期の売上高は前年比127%の約900億円だった。そんな中、26年3月末までにサプライチェーンにおけるカーボンニュートラル(温暖化ガスの排出と吸収を差し引きゼロにすること)の達成を目指すという。

 プラントベースに対する取り組みの強化は、カーボンニュートラル実現にも欠かせないものだと松本氏は語る。

 オイシックスのミールキット「Kit Oisix」は、必要な食材を必要な分だけ詰め、20分で主菜と副菜が作れる食材セットで、すでに人気商品になっている。さらに19年には米国のビーガンミールキット会社、Purple Carrotを子会社化し、同年から商品を販売。19年11月から21年3月末までに累計60万食を出荷し、「1週間で1万セット以上売れている状況だが、大きいのはビーガンだけが利用しているわけではないということ。健康的な食材を使いたいという人たちに支持されている」と松本氏。よって、より幅広い層に販売が可能だといい、このミールキットにグリーンカルチャーの植物肉をセットする計画だという。

オイシックス・ラ・大地の松本浩平取締役・経営企画本部長(写真提供/グリーンカルチャー)
オイシックス・ラ・大地の松本浩平取締役・経営企画本部長(写真提供/グリーンカルチャー)

代替食品ではなく植物肉として拡販

 金田社長は今後の課題として、知名度の向上を挙げる。「植物肉は食品業界では一定の認知を得ているが、一般層に向けての情報発信、メッセージが届いているとは言えず、植物肉そのものも認知されていない」(金田社長)。代替食品とネーミングされて販売されていることにも課題を感じており、「代替食品はつまり本物を代替するもの。偽物とまでは言わないが、本物が使えないから使うものと認知されてしまう可能性が高い。まずは代替と言わず、マーケティング戦略として植物肉として展開していく。それが売り上げにつながっていけばと考えている」と話す。

 また、同社製品はビーガンや食物アレルギー対応製品としての需要が高いが、「そうした方向けの製品であると“言わない”ことが重要だと認識している」(グリーンカルチャー広報担当者)と言う。「“ビーガン向け”アレルギー対応”と言わずとも原材料情報の開示を徹底することで、(該当する需要層に対し)安心感を与えられる」(同)。専用食と捉えられることで、市場規模を狭める可能性を回避する考えだ。

 市場規模は「植物肉単体では200億円を超えるか超えないかだと考えている」(金田社長)。従来ある豆腐ハンバーグなどを含めるかなど、算出方法には曖昧な部分もあるが、数年で1000億円を超える規模になる可能性は否定しなかった。

 また金田社長は「国内初の植物肉ベンチャーとして上場を目指している」と明言。「上場を通して植物肉をより広めていきたい。外食や一般家庭で楽しんでもらい、さらに国内にとどまらず海外にも展開していきたいと考えている」と意気込みを見せた。

発表会当日、Green Meetを使用したメニューの試食も行われた。植物肉かどうか、意識させない見た目だ。ハンバーグ(写真手前)の食感は少しソーセージに近く感じた
発表会当日、Green Meetを使用したメニューの試食も行われた。植物肉かどうか、意識させない見た目だ。ハンバーグ(写真手前)の食感は少しソーセージに近く感じた