サントリーホールディングスは、子供向けの環境教育プログラム「水育(みずいく)」をコロナ禍でオンライン化した。環境保全活動の一環として、同社が管理する水源地周辺の森、3カ所で2004年から実施してきた。オンライン化によって参加機会を全国に広げ、次世代のSDGsへの関心喚起につなげる。
国内外で24万500人が参加
オンライン化した水育に含まれるのは、自然体験プログラム「森と水の学校」と、小学校を対象とした「出張授業」の2つだ。
このうち、森と水の学校は、小学3~6年生の児童とその保護者を対象にしたプログラム。従来は「サントリー天然水の森」と呼ぶ、同社工場の水源周辺に設定した全21の森林整備エリアのうち、阿蘇(熊本県)、奥大山(鳥取県)、白州(山梨県)の3カ所で行ってきた。森を実際に探検して、生き物の生態や水を育む自然の大切さを体験するというもので、これまでの累計参加者数は2万6900人に上る。
出張授業は、小学4~5年生の学級が対象。同社が派遣する「水育講師」が関東・中部・近畿・中国・九州の13都府県の小学校に直接赴き、社会科などの単元として担任と連携して45分の授業を2回行う。これまでに合計16万3800人が参加。15年にはベトナムで、19年には、タイ、インドネシアでも実施し、こちらの参加者は20年までに約4万9800人に達した。
だが、いずれもコロナ禍で継続が難しくなった。その補完として、森と水の学校は20年10月から、出張授業は21年3月から本格的にオンラインを取り入れた。
森と水の学校では、サントリー天然水の森の現地にいる案内人と参加者をリモート会議システム「Zoom」でつなぎ、森の中を案内する。途中で参加者に問題やアンケートに回答してもらうといったインタラクティブ性も持たせた。
出張授業は、水育講師とZoomでつなぎ、実験映像を見せたり、カードなどを使って児童自身に考えを表現させたりする。授業後にWeb上でクイズやリサーチに挑戦し、理解を深める家庭学習プログラムも用意している。
オンライン化でエリアが拡大
コロナ禍で継続が難しくなったリアルな体験の補完として取り組んだオンライン化だが、参加対象者の裾野を広げる契機にもなった。森と水の学校は前述のように3つのエリア周辺からの参加者がほとんどだったが、オンラインならば自宅で気軽に参加できるということで参加者は全国に拡大。20年は、6回のテスト実施のみだったが、43都道府県から200人が参加している。21年度の募集枠は、19年のリアル実施と同じ約1800人に増やす。出張授業も従来の13都府県から26都道府県に実施地域が広がった。
コロナ禍がなかなか収束しない中、当面、リアルでの活動は制限される状況が続く。サントリーでは、サントリー天然水の森で実施する森と水の学校を、21年は中止すると発表した。だが、収束した暁には再開も検討するという。「アフターコロナの時代には、リアルとオンラインのハイブリッドで水育の活動を展開したい」考えだ。
(写真提供/サントリーホールディングス)