スーパーチェーンのベイシア(前橋市)は2021年6月16日、関東圏を中心とする138店舗全店で「ブリヒラ」の販売を開始した。ブリヒラは近畿大学が開発したブリとヒラマサの交雑種で、ブリのうま味とヒラマサの歯応えを兼ね備える。全店分を賄える5万匹を確保できたという。

ブリヒラはブリのメスとヒラマサのオスの交配によって開発された。自然界にも存在するが、ごくまれだ
ブリヒラはブリのメスとヒラマサのオスの交配によって開発された。自然界にも存在するが、ごくまれだ

ブリとヒラマサのいいとこ取り

 ベイシアがブリヒラを販売するのは、夏場におけるブリの代替としてだ。冬に旬を迎えるブリの場合、夏場は血合い肉(切り身の赤黒い部分)が多くなり、味・品質が落ちる。従来は同じブリ類で夏が旬のヒラマサが夏場のブリの代替とされてきたが、ヒラマサはブリと比べて成長が遅く、成魚まで育てるのにコストがかかる。そのため、販売価格がブリより高額になるという難点があった。

 そこで開発されたのがブリとヒラマサ、両方の特徴を持つブリヒラだ。このハイブリッド魚の成長はブリより遅いものの、ヒラマサの約半分の期間(1~1.5年)で3キログラム程度になるという。実際に食べてみるとブリに近い脂、うま味成分を備えており、歯応えはブリよりしっかりしていてヒラマサより少し軟らかい。

 群馬県に本社を置くベイシアの橋本浩英社長は「群馬などの内陸県では海の魚の需要が高い。食べ方も含めてブリヒラを消費者に提案していきたい」と意気込む。

 まずは一般家庭に向けてサク(100グラム、税込み494円)、お造り(7切れ、同429円)、すし(5貫、同429円)を販売する。将来的には飲食店に向けても展開していく計画だ。ブリヒラを取り扱っているのは今のところベイシアのみで、同社では22年には7万匹以上、23年には10万匹以上の販売を予定している。

ブリヒラを手にしたベイシアの橋本浩英社長(左)と近畿大学の有路昌彦教授
ブリヒラを手にしたベイシアの橋本浩英社長(左)と近畿大学の有路昌彦教授

 実は、近畿大学がブリヒラを開発したのは1970年。そこから約半世紀をかけて産業化に成功したわけだ。ブリ類の交雑種で産業化を実現したのは世界でも初めての事例だという。

 ベイシアは近畿大学の関連会社である食縁(和歌山県新宮市)と2017年に協定を結んで以降、18年に1000匹、19年に1万5000匹、20年に2万匹と、段階的にブリヒラの販売量を増やしてきた。その狙いは持続可能な養殖業の確立にある。

 種苗(養殖のための稚魚)を成魚まで育てるのに数年かかる養殖業は、相場の影響を受けやすく、価格変動のリスクが大きい。近畿大学の有路昌彦教授は「そのリスク分は当然、魚の価格に上乗せされる。また価格変動リスクが大きいため、養殖業者は金融機関からの融資を受けにくい」と話す。

 一方ブリヒラの養殖では、種苗の段階からベイシアが買い取り価格と量を決めることで価格変動リスクをゼロにしている。価格変動リスクがなくなれば、金融機関からの融資も受けやすくなり、事業の拡大も可能になるわけだ。

 今回、ベイシアが販売するブリヒラを養殖しているのはクロシオ水産(高知県大月町)だが、安定した需要が見込めるようになれば、他にもブリヒラを養殖したいという業者は出てくるだろう。養殖業者が増えれば、ベイシア以外のスーパーがブリヒラを販売するようになる可能性もある。

左がブリ、中央がヒラマサ、右がブリヒラ
左がブリ、中央がヒラマサ、右がブリヒラ

(写真/ベイシア)