時代が求めているのは、地域が直面する課題を解決するためのデザインだ──。東京のど真ん中、丸の内で開催中の「山水郷のデザイン 自立共生のためのナラティブ」展が語りかけるもの、それはデザインの力であり、これからの時代の生き方でもある。同展覧会のディレクターで日本総合研究所 創発戦略センター シニアスペシャリストの井上岳一氏に、企画の意図を聞いた。

2021年4月19日~6月20日に開催されている「山水郷のデザイン 自立共生のためのナラティブ」展。「山水郷において新しいデザインに挑戦している人の人生の物語」と共に、そこで生み出されているプロダクトなどを紹介。地域ごとに7分ほどの映像も展示
2021年4月19日~6月20日に開催されている「山水郷のデザイン 自立共生のためのナラティブ」展。「山水郷において新しいデザインに挑戦している人の人生の物語」と共に、そこで生み出されているプロダクトなどを紹介。地域ごとに7分ほどの映像も展示

 東京・丸の内にあるデザイン拠点「GOOD DESIGN Marunouchi」では2021年4月19日~6月20日、「山水郷のデザイン 自立共生のためのナラティブ」展を開催している。「山水郷」とは、同展覧会の共同ディレクターである井上岳一氏が、著書『日本列島回復論』(新潮選書)の中で提唱した言葉で、「山水の恵み豊かで人の暮らしが長く続いてきた場所」を指す。「ナラティブ」は、直訳で「物語」を意味するが、誰かがつくったお仕着せの物語(ストーリー)ではなく、その人本人の語りの中から立ち上がってくる物語のことをいう。同展覧会では、「山水郷において新しいデザインに挑戦している人の人生の物語」と共に、そこで生み出されているプロダクトなどを紹介する。

 「山水郷には都市にはない豊かさがある一方、過疎や産業衰退などの課題も深刻だ。『山水郷のデザイン』は、地域が直面する課題を解決するためのデザインであり、そこには単に姿・形をデザインするだけではない、地域の未来を見据えたデザインの実践がある」(井上氏)

地域を興すデザイン、3つの事例を紹介

 同展覧会で紹介しているのは「山水郷」にちなんだ3地域だ。

「山」は、岡山県西粟倉村。西粟倉の「百年の森林構想」を紹介しながら、同構想の下で生まれたローカルベンチャーの事業やプロダクトを紹介
「山」は、岡山県西粟倉村。西粟倉の「百年の森林構想」を紹介しながら、同構想の下で生まれたローカルベンチャーの事業やプロダクトを紹介

 「山」は、森林資源活用のトップランナーである岡山県西粟倉村。始まりは08年に着想した「百年の森林構想(以下、百森構想)」だった。これまでは個人が分割所有していた森を、村の共有財産(コモン)として管理し直すことで、森林が生み出す価値の最大化を目指すという構想。「森を諦めない」という宣言でもあった。この構想の発表と同時に「共有の森ファンド」を立ち上げ、外部からの資金応援を募った。百森構想に共感し、村外からも多くの人が投資に参加したという。

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