高品質なスペシャルティコーヒーを扱う軽井沢発のコーヒー専門店・丸山珈琲(長野県軽井沢町)が今夏、戦略商品を相次いで投入する。ペットボトルアイスコーヒーや霧島酒造とコラボレーションした焼酎コーヒーゼリーなどで、販路も直営店やオンラインショップのほか、全国の一部スーパーに拡大。コロナ禍の外出自粛を受けてコーヒー需要が高まる中、こだわり派から一般層へと顧客の裾野を広げるのが狙いだ。

「丸山珈琲のブラックアイスコーヒー(無糖)」は税込み214円で、ペットボトル入りコーヒーとしてはやや高め。ばら売りに加え、同1734円の「6本入りギフト」、同5132円の24本入りケースでも販売する
「丸山珈琲のブラックアイスコーヒー(無糖)」は税込み214円で、ペットボトル入りコーヒーとしてはやや高め。ばら売りに加え、同1734円の「6本入りギフト」、同5132円の24本入りケースでも販売する

 2021年で創業30周年を迎えた丸山珈琲は、軽井沢からはじまり、今では渋谷や新宿、西麻布など、9店舗を構えるコーヒー専門店だ。栽培、収穫、生産、流通といった一連の工程が明確に管理され、生産地の風味特性を備えたスペシャルティコーヒーに早くから着目。丸山健太郎社長自らが生産地に赴いて、コーヒー豆を直接買い付けてくるという姿勢でも、コーヒー愛好家の高い支持を受ける。

東京・港区にある丸山珈琲西麻布ショールーム。長野県内を中心に、東京・渋谷や新宿、西麻布など現在は9店舗を構える
東京・港区にある丸山珈琲西麻布ショールーム。長野県内を中心に、東京・渋谷や新宿、西麻布など現在は9店舗を構える

 その丸山珈琲がペットボトル入りのRTD(レディ・トゥ・ドリンク)商品「丸山珈琲のブラックアイスコーヒー(無糖)」を開発、21年6月10日に発売した。直営店やオンラインストアのほか、全国の一部スーパーでも販売する。

 高品質なコーヒーにこだわってきた同社がペットボトル入りコーヒーを出すことについて、同社の丸山社長は「コロナ禍でコーヒーが生活におけるアクセント、癒やしになっていることに改めて気づいた」と話す。

 きっかけとなったのはコロナ禍における自身の経験だ。世間の動向と同じく丸山社長も家でコーヒーを飲む頻度が増えているが、「コーヒー屋でありながら自分で豆をひいていれるのが面倒に思うことがある」と明かす。頻度が増えているからこそ、手軽に飲めるようにしたい。例えば、オンラインミーティングの合間などにもデスクで飲めるようなものとして、このペットボトル入りコーヒーを開発したそうだ。

 昨今、飲料メーカー各社はコーヒー関連のRTD商品のリニューアルやラインアップ強化、新商品投入を積極的に進めているが、丸山社長は「今後、コーヒーのRTD商品はより細分化するのではないか」と見る。

ホンジュラス産の豆で醸すスペシャルティ“らしさ”

 ブラックアイスコーヒー(無糖)で注力したのは、「もちろん、おいしさ」(丸山社長)だ。丸山社長によれば、市場に出回る既存の商品は、飲みやすさ重視の薄いものか、インパクト重視の濃いものかのどちらかだという。

 それに対し、今回発売する商品ではコーヒー豆のバイヤーとしても知られる丸山氏が厳選したホンジュラス産のスペシャルティコーヒー豆を100%使用し、従来のペットボトル商品では実現の難しかった「味のきれいさ」や「雑味のないコーヒー本来の味」を目指した。

 風味の特徴は、ダークチョコレートやナッツのような香りと、「主張しすぎないほどよい酸味」「スペシャルティコーヒーならではのほのかな甘味を感じる後味」とのこと。サンプルを試飲してみたところ、一瞬、「薄い?」と感じるくらいの仕上がり。ただ、ペットボトル入りのRTDとして気軽に飲みやすく、それでいて風味はしっかりと立っていると感じられた。

 ブラックアイスコーヒー(無糖)で注目すべきはその販路だ。丸山珈琲は今までも紙パック入りのリキッドコーヒーなどを販売してきたが、販路はいずれも直営店やオンラインショップが中心。他店は、長野県の大手スーパーマーケットチェーン「ツルヤ」にとどまっており、地勢的に非常に限られていたと言わざるを得ない。

 一方、ブラックアイスコーヒー(無糖)は、各地のローカルなスーパーマーケットチェーンを中心に、全国に商圏を広げる予定だという。生産量は5000ケース、12万本と大手飲料メーカーの商品に比べるとかなり少ないが、今後を見据えて新規ルート、新規顧客層を開拓しようという動きが見て取れる。

「黒霧島」とコラボした焼酎コーヒーゼリーも発表

 並行して、ギフト需要を見越した夏向け新商品も発売した。

 1つは、宮崎県の人気焼酎メーカー、霧島酒造とのコラボレーション商品「丸山珈琲×霧島酒造 焼酎コーヒーゼリー」。

 近年はスペシャルティコーヒーを用いたコーヒーカクテルが注目を浴び、人気も高まってきている。コーヒー焼酎といった楽しみ方もある。だが、霧島酒造の主力商品である本格芋焼酎「黒霧島」「白霧島」「赤霧島」を用い、3種のゼリーとして仕上げるのは新しい取り組みだ。

 丸山珈琲によると、コーヒー需要拡大のため、さまざまな食材と組み合わせた新たなコーヒーの楽しみ方を模索している同社と、コロナ禍で店舗での酒類需要が減る中、焼酎の魅力を知ってもらうための新規商品の開発に力を入れている霧島酒造の思惑が一致したとのこと。

 3種の焼酎には、それぞれに合うコーヒーを組み合わせた。黒霧島には丸山珈琲のオリジナルブレンド、白霧島にはコスタリカ産、赤霧島にはエチオピア産のコーヒーを選択。例えば、「エチオピア産×赤霧島」のゼリーでは、ベリーとキャラメルというエチオピアコーヒーの香りにサツマイモの風味が合わさり、若干の酸味を感じさせる華やかな味わいに仕上がっている。

霧島酒造とのコラボレーション商品「丸山珈琲×霧島酒造 焼酎コーヒーゼリー」。コーヒーと焼酎の組み合わせによって味わいが異なる。3個入り3240円、6個入り5400円(いずれも税込み)
霧島酒造とのコラボレーション商品「丸山珈琲×霧島酒造 焼酎コーヒーゼリー」。コーヒーと焼酎の組み合わせによって味わいが異なる。3個入り3240円、6個入り5400円(いずれも税込み)

1本4000円超のアイスコーヒーとは?

 もう1つは、最上級クラスのコーヒーをボトリングした「バイヤーズセレクション アイスコーヒー ブク・サイーサ 2020年エチオピアCOE入賞」。これは、前述のブラックアイスコーヒー(無糖)とはいうなれば対極にある商品だ。

 ブラックアイスコーヒー(無糖)の価格は500mlのペットボトル入りで214円なのに対し、まるでワインのようなボトルに入ったバイヤーズセレクション アイスコーヒーは720mlで4644円(いずれも税込み)と、価格にして実に20倍以上の開きがある。

「バイヤーズセレクション ブラックコーヒー」。720mlのボトル1本で4644円、2本入りで9936円(いずれも税込み)
「バイヤーズセレクション ブラックコーヒー」。720mlのボトル1本で4644円、2本入りで9936円(いずれも税込み)

 その理由は、豆の品質と製法にある。豆は、20年に開催されたスペシャルティコーヒーの国際品評会「エチオピア・カップ・オブ・エクセレンス(COE)」で14位に入賞した「ブク・サイーサ」をぜいたくに使用。エチオピアは高品質なコーヒーの生産国として世界屈指であり、その中でもトップクラスのコーヒーをボトル詰めのリキッドコーヒーとして商品化したのである。

 豆の品質とともにコーヒーの味を左右するのが焙煎(ばいせん)だ。本商品ではリキッドアイスコーヒーとしてのおいしさを追求した独自の焙煎方法を採用しているという。ホットコーヒーとして楽しむ通常のロットとは熱のかけ方を変え、中煎りよりも少しだけ深く焙煎。これによってアイスコーヒーにしたときでも華やかな香りを残しつつも、バランスの取れた味わいが実現できているとのこと。

 同社では、以前、三越伊勢丹の特選ギフト限定で高級アイスコーヒーを発売したことがある。「それがとても好評だったため、自社でも商品化に踏み切った。お酒を飲まない人、飲めない人もいる中、夏場はコーヒーギフトが人気。特別な贈り物として選ばれる商品になれれば」と期待する。

 手ごろな価格のペットボトル入りコーヒーと、プレミアムな焼酎コーヒーゼリーやバイヤーズセレクション アイスコーヒーは、想定している購買層が異なるが、いずれも商圏拡大、顧客層拡大を狙ったもの。これまでスペシャルティコーヒーの専門店として知る人ぞ知るブランドだった丸山珈琲が、そのブランド力を維持しつつ、どこまで認知を広げられるか。これら商品はその試金石となりそうだ。