フランスで緑茶の人気が高まっている。パリ中心街のお茶専門店では取扱量が2019年比約30%の伸び、コロナ禍でのロックダウン明けの21年5月には日本茶のコンクールも開催された。フランスで日本茶が注目されている理由を、現地在住のジャーナリストが探った。

「アルテファクト(Artéfact)」では、日本や中国の茶飲み茶碗のみならず、フランス在住の陶芸家のそれも多く扱う
「アルテファクト(Artéfact)」では、日本や中国の茶飲み茶碗のみならず、フランス在住の陶芸家のそれも多く扱う

 「お茶」といえば紅茶か就寝前のハーブティーが長い間主流だったフランス。しかし今、フランス人たちの生活に緑茶が入り込んでいる。

 緑茶が飲まれるようになる前にはフレーバーティーのブームがあった。紅茶ベースでイチゴやかんきつ、バニラやチョコなどのフレーバーが混ざり合った少しサプライズな味で、チューインガムやフルーツケーキを思わせるものもあった。 当時、この国のお茶メーカー、マリアージュフレールの「マルコポーロ」や「ノエル」をフランス土産に買い込んだ方も少なくないだろう。フランス人がお菓子的なこのフレーバーティーに飽き始め、お茶本来の味を再びシンプルに楽しむ人々が増えてきたのがここ10年くらい。そして18年頃からはそこに、紅茶だけではなく緑茶が加わった。

 フランス人が緑茶を飲むようになったきっかけに、日本食ブームがあることは否めない。正統派の高級和食店のみならず、アジア系料理人によるご飯が長方形にぎゅっと固まったおすしが食べられるレストランも、有名シェフがクリエイトする1貫に5種もの味が混ざり合った(果物やナッツが入っていたりもする)すしまであるスシレストランも、 すべてひっくるめてレストラン・ジャポネとして人気を得たが、それは緑茶を飲む機会にもなった。

 そしてレストラン・ジャポネがブームを超えて定着した今、緑茶はフランス人に親しみあるものとなった。お茶は嗜好品といわれる。嗜好品の定義は「健康のためというより感情を気持ちよくさせるもの、癖になり、無いと寂しく感じられるもの」。一度知った緑茶のうま味がまた欲しくなる嗜好品反応か、今や多くのフランス人たちが緑茶を購入して自宅でも飲むのだ。

 加えてここ数年の抹茶ブームが緑茶の普及に勢いをつけた。抹茶ブームと言ってもスターバックスなどで気軽に飲める「抹茶ラテ」的なものだ。フランスでは抹茶は「Matcha」だがグリーンティーである「the vert」(フランス語)と混同されることも少なくない。抹茶ラテをきっかけにして若者たちはグリーンティーにも耳慣れ、やがて舌も慣れ始めた。

 結果、それまで大人が好んでいた緑茶の消費年齢が下がり、年代を超えて緑茶が知られるようになった。しかし、若者には緑茶=日本茶であるとは限らない。緑茶=グリーンティーの中でも日本茶を好むのは、味にうるさい“大人たち”が多いからだ。

 「ミント入りグリーンティーを20年くらい前に飲んだのが初めての緑茶。その10年後くらいに友人宅で日本茶を初めて飲み、その丁寧な淹(い)れ方と植物に近い味が印象に残り、飲み始めました。今では我が家にもあって気分や時間によって紅茶と飲み分けしています。日本の緑茶かそれ以外の国の緑茶かもほぼ分かりますよ」(マリエル、50代前半/映画関連)

 「日本茶は10年くらい前に知ったでしょうか。おいしいだけでなく心身ともに清めてくれるような緑茶独特の感覚が好きです。現在は、パレデテ(palais des thes、フランスのお茶メーカー)の日本の煎茶を日常的に飲んでいます」(アンヌ、40代/小学校勤務)

 「20代のときに日本を旅して緑茶を初めて知りました。それ以来好きになって今日まで毎日、朝かランチの後に日本茶を飲んでいます。濃いめに淹れて苦さと甘さを味わっています。健康にも良いと感じていますよ」(エリック、40代/インターナショナルビジネス)

 「玄米茶が大好きです。他のお茶も飲みますが、現在は玄米茶を一番多く、毎日飲んでいます。オリジナルな味の日本茶を最初に飲んだのは5、6年前のアイスティーで、とてもおいしかったのを今でも覚えています」(ロラ、30代/ダンス教師)

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